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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

就学準備クラスが始まります

第747号 2020年11月27日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 首都圏の私立小学校の入試も、残すところ慶應義塾横浜初等部の発表を待つばかりとなりました。例年、私立小学校の入試が終わった段階で国立附属小学校の入試が始まりますが、今年はすでに筑波大学附属小学校の入試も終わり、あとは東京学芸大学附属小学校とお茶の水女子大学附属小学校の入試を待つばかりとなりました。

コロナ禍での初めての入試は、日程等に大きな変化はありませんでしたが、面接や行動観察の細かい点で変更がありました。今年の入試の総括は改めて報告させていただきます。

さて、受験が終わった子どもたちが小学校へ入学するにあたり、こぐま会では毎年1月から「就学準備クラス」を開講しています。その指導内容についてお伝えするオンラインセミナーの収録を先週終え、26日から元ばらクラス会員の皆さまに配信を始めました。就学準備クラスを開講する目的は、誰よりも早く読み・書き・計算を中心とした先取り教育をしようというものではなく、以下の3つの大きな目的を持っています。
  1. これまで受験向けに行ってきた家庭学習の習慣を継続する
  2. これまで「教科前基礎教育」として行ってきたKUNOメソッドの内容を、教科学習につなげていくための「橋渡し」の指導をしっかり行う
  3. これまで「読み・書き・計算」の前にやるべきことがたくさんあると主張してきた我々の「読み・書き・計算」への導入を、具体的な授業を通して明らかにする

小学校では新しい学習指導要領の本格的運用が今年の4月から始まる予定でしたが、コロナの影響で4月・5月は休校になり2カ月遅れてのスタートになりました。その後も分散登校を行い、密をつくらない状況での学校運営でしたから、どの学校も新しい授業への取り組みに相当苦労されているのではないかと思います。

2020年度から子どもたちが学ぶ新学習指導要領は「知識及び技能(A学力)」「思考力・判断力、表現力など(B学力)」「学びに向かう力、人間性など(C学力)」を育むことを目指しています。この中でもこれからの教育で重視している点は、「学びに向かう力、人間性」としてくくられるC学力です。樹に例えれば根っこに当たる部分で、最近よく言われる「非認知能力」といわれているものです。学んだことを人生や社会に生かそうとする原動力になるもので、新しい社会においてそれぞれの個人が社会貢献するために欠かせない能力です。受け身でできた従来の「知識及び技能」の学びをいかに主体的な学びに転換していくか、これまでの学校教育のイメージを大転換する新しい学習指導要領です。この3つの学力がばらばらに並列するのではなく、それぞれが重なり合って実現するものです。

しかし構想は立派であっても、それが教育現場で実現できなければ意味がありません。多くの場合、文部科学省の出す方針はとても立派なものであっても、それを実現する現場がついていっていないということが繰り返されてきました。現場の取り組みを見ていると、いろいろな不安や疑問が湧いてきます。
  1. グローバル化の一環として行う英語教育は、教えられる教師が確保できているのでしょうか
  2. AI教育の一環として考えられている「プログラミング教育」は、カリキュラムやそれを指導する人材が確保できているのでしょうか
  3. アクティブ・ラーニングといって花火を打ち上げましたが、「主体的な学び」の具体的な実践が積み重なっているのでしょうか
  4. 新しい学習指導要領で目指す教育を実現できる環境が整っているのでしょうか
  5. オンライン教育が実現できる機器の整備や、それを推し進める人材の確保ができているのでしょうか

これからの時代の人材育成のために大変納得のいく方針が出されても、それを実践する現場が追いついていないのが偽りのない現状だと思います。だからこそ「何を学ぶのか」「どう学ぶのか」の実践を積み重ねていく必要があります。その時にまず問題になるのが、幼児から小学生へつなぐ「幼小一貫教育」の実践です。各自治体で試みている小学校へのつなぎとしての「スタートカリキュラム」は、なぜか従来の理科・社会につながる生活科の内容が多いようですが、それだけでなく「算数」「国語」につながる内容もしっかり確立させておかなければなりません。1人の子どもの成長において、「学び」は小学校1年生、6歳の4月から始まるわけではありません。生まれた瞬間から「学び」は始まっているのです。遊びを通して学んできたことをいかにして教科学習につなげていけるか・・・これこそ私たちが実践してきた事物教育対話教育です。知識の習得に終わらず、思考力・判断力を高めるためにどうするか、そして、集団の中における表現力をどう身につけるか・・・これは、これからの学校教育でも大変重要な観点です。

新しい学習指導要領で育む資質・能力とは何かをしっかり受け止めて、いろいろな試行錯誤が必要であるし、成功例を多くの人々が共有していかなければなりません。私たちは、幼児期の子どもたちを2~3年にわたり目標を掲げて指導してきました。その目的は「考える力」の育成です。決して受験のためのノウハウを教えることではありません。幼児期の基礎教育は、受験の有無に関係なく同じ内容で、同じ方法で身につけなければなりません。その中身はセブンステップスカリキュラムです。幼児期の学習内容を、ここまで明確に打ち出しているところはどこにも見当たりません。幼児期の教育が大事だということが広く認識されれば、多くの企業がこの業界に参入してくるはずです。しかし、カリキュラムや方法論、もっと言えば教育理念を持たない集団が参入してくると、教え込みの教育、型を身につける教育に流れ、最後は受験を正面にうたった指導がはびこることになります。こうした構図だけは絶対に阻止しなくてはなりません。民間の教育団体が長い時間をかけて蓄積してきた素晴らしい実践を守っていかなければなりません。

本来ならば小学校教育を担う現場の先生方が、幼児教育の現状を知るために一定期間、幼児教育の現場で一実践者として子どもたちに関わる必要があります。また、幼児教育の現場にいる者も小学校教育の実践内容を自ら指導する体験を持つ必要があります。その意味でイギリスで行われているように、学校内に「小学0年生」として幼児の通う現場を持っているということは素晴らしいことだと思います。私たちが受験も含め1年間取り組んできたKUNOメソッドは、「小学0年生」に相当するものだと思っています。これをどのように広めていくか・・・今いくつかの幼稚園でアフタースクールや正課として取り組む試みを開始しています。幼児が通う教育機関が、将来の「学び」の基礎としてこのメソッドを正課で活用してくれたら・・・と願っています。

1月から開始する就学準備クラスの目標は以下の通りです。
  1. 算数は、計算さえできればよいという考え方に陥らないように、文章題における立式が自らの力でできるようにする。
  2. セブンステップスカリキュラムで学んだ「一対多対応」「等分・包含除」の考え方をベースに、入学前までにかけ算・わり算を含めた四則演算の考え方をしっかり身につける
  3. 国語の基礎づくりにとって今大事なことは、読解力と日本語の理解の基礎づくりです。そのために、これまで行ってきた「話の内容理解」「お話づくり」を発展させ、音読に力を入れた授業を行う

こうした考え方に立ち、1月から3月までの就学準備クラスの学習内容をお伝えします。

「就学準備クラス」全10回の内容

【算数】
第1回:たし算・ひき算って何?
第2回:たし算・ひき算の計算法
第3回:隠れた数を探せ(魔法の箱を数式で)
第4回:かけ算って何?
第5回:わり算って何?
第6回:かけ算の答えはどう出すの?
第7回:文章題に強くなる(1)  立式練習
第8回:図形課題(三角形の分割・線対称・展開図)・時計
第9回:文章題に強くなる(2) 数式を見てお話をつくる
第10回:総まとめ
【国語】
第1回:音読 詩の暗唱 文字練習「ひらがな」
第2回:読解(1) 同頭音・清音・濁音・半濁音
第3回:読解(2) 促音・拗音
第4回:読解(3) かなづかい「じ」と「ぢ」・「ず」と「づ」
第5回:言葉の学習 長音表記
第6回:読解(4) 時を表すことば・様子を表すことば
第7回:読解(5) あいさつのことば・反対のことば
第8回:読解(6) 句点・読点・「 」(かぎかっこ)
第9回:読解(7) くっつきの ことば「は」「を」「へ」
第10回:言葉の学習 文を書く(「誰・何どうする」「誰・何がなんだ」)
 就学準備クラスのご案内


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