週刊こぐま通信
「室長のコラム」ステップ2の学習に入りました
第746号 2020年11月20日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可
首都圏における私立小学校の入試や筑波大学附属小学校の入試も終わり、あとは東京学芸大学附属小学校およびお茶の水女子大学附属小学校の試験を残すだけとなりました。現在集まっている入試問題を分析し、入試結果報告会(会員限定で配信)や学校別入試分析セミナーで報告する予定ですが、コロナ禍での初めての入試はかなり基本問題に戻ったように思います。ただし「基本問題=易しい」のではなく、基本的な問題でありながら「聞く力」「考える力」がいろいろな角度から求められていたのは間違いありません。易しいようで、基本をしっかり理解していないとできないような問題が数多く含まれていました。来年秋に受験を迎える皆さまには、ぜひ基本をしっかり身につけるようにしていただきたいと思います。焦らず、着実に力をつけていくためには、1年間の学習計画が必要です。こぐま会では、セブンステップスカリキュラムをゆりクラス(年中児)の9月から開始し、らせん型カリキュラムに沿って事物教育・対話教育を実践しています。
ところで、10月末から新期がスタートしたばらクラスでは、11月最初の週の試験休みをはさんでステップ2の学習に入ってます。まだまだ基礎段階ですが、今年の入試問題を見てみるとこのステップ2の学習内容に関連する問題も数多く出されています。さて、ステップ1に続きステップ2ではどんな学習を行うのか、その内容を簡単にご紹介します。
【ステップ2の学習内容】
領域 | 単元 | 学習内容 | |
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step2-1 | 未測量 | 重さくらべ |
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step2-2 | 位置表象 | 左右関係 |
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step2-3 | 数 | 一対一対応 |
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step2-4 | 図形 | 立体構成 |
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step2-5 | 言語 | 短文づくり |
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step2-6 | 生活 他 | 理科的常識 1(常識) |
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未測量における「重さくらべ」では、紙袋や箱を持ってみんなで重さくらべをしたり、5個の重さの違うマッチ箱を重い順や軽い順に並べたりします。目に見えない重さを視覚化するために、はかりやシーソーやばねばかりがあるということを伝え、実際に載せて重さの違いを伝えます。最後に1人ずつシーソーを与え、2つの箱の重さくらべをした後、その経験を生かしてシーソーを使った三者関係の理解を学習します。このシーソーに関する問題は入試では四者関係が中心ですが、その基礎として三者関係の理解をしっかり学びます。
位置表象の学習は「左右関係の理解」です。生活していく上で必要な前後関係・上下関係の理解はステップ1で学習しましたが、今回はもう一つ大事な「左右関係の理解」です。自分の右手・左手の理解から始め、向かい合った友だちの右手・左手、絵に描かれた人物の右左が判別できるかどうかを学びます。そのうえで、一つの交差点の曲がり方を練習し、それを「地図上の移動」の基礎練習とします。交差点の入り方は4つありますが、それぞれについて、右や左に曲がる練習をします。床に描いた交差点を実際に曲がり、そのあとミニカーを使って紙に描かれた交差点を曲がる練習をし、最後にペーパーを使ってまとめをします。自分の体を使い、ミニカーを使い、ペーパーを使って地図上の移動の基本を学びます。
数の領域は「一対一対応」の学習です。数を比較し、どちらがいくつ多いか、少ないか、違いはいくつか、同じにするにはどうするかといった課題で、将来のひき算の基礎につながる学習です。1と1を対応させる課題で、例えばペットボトルと蓋のように対応することに必然性のあるものから始めて、それから赤い球と白い球のように、対応することに必然性はないけれども、数を比較する場合に一つずつくっつけてみるといった「対応づけ」の作業へと進んでいきます。その後、「どちらがいくつ多いか」「どちらがいくつ少ないか」「違いはいくつか」といった問いに正確に答える練習をします。小学校入試では、生活の一場面を使って数を比較させ「違いはいくつですか」と聞かれる場面がよくみられます。ペーパーにおいては、線結びの方法や消去する方法が有効だということを伝え練習します。その上である数を基準にした「~より~個多い(少ない)」数を暗算で答える練習をします。
図形領域の課題では「立体構成」を学びます。私が開発した「秘密袋」を使い、袋の中に入っている6つの形のうち、触索で教師が取り出したつみ木と同じ形のつみ木を取り出す学習です。視覚情報を遮断し、手探り(触索)だけで形の特徴をつかむ練習です。
次に、基本立体の特徴をつかむために、2つの立体の似ている点と違う点を説明させた後、円柱や円錐を粘土で作ってもらいます。特に円錐の場合は、円錐をどのように観察したかが作り方に反映するはずですから、どのような作り方をするか興味ある課題です。
言語領域の課題は「短文づくり」と題し、動詞の理解を学習します。ステップ1で学習した一音一文字、同頭音・同尾音、しりとりは、主に名詞に関する学習ですが、表現力を高めるためには、どうしても動きを表す言葉や様子を表す言葉をたくさん身につけることが大事です。そのためには、言葉(動詞)だけを取り出して学ぶというよりも、お話をつくることを通して動詞の理解を深めます。教師の動きを見て適切に文章をつくったり、一場面の人々の動きを表現したり、与えられた動詞を使って文章をつくったり・・・いろいろな方法で学びます。そして仕上げは、4枚の絵カードを時系列に並べ、それを使ってお話をつくります。小学校受験でよく出されるお話づくりでは、多くの場合このように絵カードを並べます。苦手意識が出る課題ですから、早いうちから自信をつけさせることが大事です。
生活他の領域では、今回は「理科的常識」の典型として、切断面、生活の中の音、鏡映像、花の名前と季節について学習します。身近な課題でありながら意外と理解できていない場合が多いものです。入試においてもよく出されるものが、切断面と鏡映像の課題です。実物に触れ経験を積み重ねることを通して理解していく必要があります。図鑑等を見て知識として覚えこんでも忘れてしまう場合が少なくありません。できる限り、実体験を通して理解を深めていくようにしてください。音に関する理解は、当然のことながら自然界の音が区別できません。普段から聞いている音ならともかく、都会では聞く機会がない音もあります。自然の中で、耳を澄まして音を聞く経験をたくさん積んでください。音と絵の対応、音を聞いてその音に合う絵を描くなど入試でも時々出される内容です。
以上、簡単にステップ2の6領域の課題を紹介しました。「ひとりでとっくん365日」を使って家庭学習を進めている皆さまは「ひとりでとっくん365日 03 基礎2-A」と「ひとりでとっくん365日 04 基礎2-B」が対応していますので、事物経験を前提に学習してください。
ステップ1からステップ2に進むと、各領域の内容は次のように発展していきます。
未測量 | 大きさ多さくらべ → 重さくらべ |
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位置表象 | 上下・前後関係 → 左右関係 |
数 | 正しく数える → 一対一対応 |
図形 | 平面図形 → 立体 |
言語 | 一音一文字、しりとり → 短文づくり(動詞の理解) |
生活 他 | 分類 → 理科的常識 |
前の学習が次の学習の土台になっていくような、らせん型カリキュラムによる指導を心がけています。幼児期の学習は順序性が大事です。入試対策も全く同じで、系統性を大切にしたカリキュラムが必要です。何の脈絡もない手当たり次第の過去問トレーニングでは応用できる力は身につきません。
ステップ2の学習から、入試によく出される内容の中で理解度に差が出る問題は以下の6つですので、覚えておいてください。
- シーソーによる四者関係
- 他人の右手―左手の理解
- 交差点の曲がり方
- 数の多少(違いはいくつ?)
- つみ木による立体構成
- 鏡への映り方