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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

行動観察の内容はどう変化したか

第745号 2020年11月13日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の私立小学校の入試はほとんど終了し、これから国立附属小学校の入試が始まります。今年は、筑波大学附属小学校の入試が約1カ月前倒しになった関係で、子どもたちは息つく暇もなく、私立が終わってすぐに国立に臨みます。寒さが増していくと同時にコロナ感染が拡大しているという今の状況を予測し、前倒しにしたのでしょう。他の国立付属小学校の入試日程は、昨年と比べほとんど変わりはありませんが、筑波が前倒しになった影響はかなりあるはずです。来年以降どうなるかわかりませんが、今年の日程が前提になることは間違いありません。私立小学校のコロナ対策もかなりきめ細かに行われており、現段階で以下のようなことがわかっています。

  1. 入試説明会はWeb配信のみの学校が多かった
  2. 願書提出においてもWeb出願を行うところもあった
  3. 面接においては、アクリル板を設置しマスクをして行ったところが多かったが、中にはフェイスシールドを使用しマスクを外して行ったところもある。オンラインで面接を行ったところもある。また、三者面接を親子2名にしたり両親のみにしたりして、密をつくらない工夫をしたところもある
  4. 筆記用具の使用に関しては、クーピーペンを持参させたり、使ったクーピーを持ち帰らせた学校もあり、筆記用具の共用を避けたようだ

こうした中で行われた行動観察では密を作らない工夫がされましたが、昨年と比較し、どのように変わったのか・・・12月12日より配信を予定している私立小学校 入試結果報告会(こぐま会会員限定オンラインセミナー)に向けて調査中です。子どもたちからの聞き取り調査を終えた段階で、それぞれの学校担当者から変化の様子を一言でまとめてもらいました。現在25校ほどの情報が集まっていますが、その中から主な学校の様子をお伝えします。詳しい内容分析を踏まえて正確な情報としてまとめ上げていくつもりですが、どう変化したかの様子だけを今回はお伝えします。全体の内容分析が終わっていないために、今回は学校名を伏せてお伝えします。これだけ見ても学校側の工夫が随所で見られ、来年以降の対策の参考になります。

行動観察の内容変化
女子校A校ソーシャルディスタンスを保って実施。使用するペンを袋に入れてあるものの交換は許容。若干相談を少なくして製作
B校グループ活動はなし。簡潔な課題を行ったが、説明と進行はモニターからの指示。先生も含めて現場では声を出さない状況だった。
C校ソーシャルディスタンスを保って実施。相談はあったが距離を保ち接触をさせないよう指示があった。自由遊びはなし。
D校運動などの集団活動は行われたが、自由遊びなどのグループ活動はなし。お弁当もなし。
E校集団制作などのグループ活動がなくなったが、制作課題はあった。
F校グループ活動は事前面接時に行われた。個別テストを待つ間の自由遊びはなし。
G校運動・手先の巧緻性課題で、子ども同士で使いまわす道具はなくなった。内容に大きな変化はなし。
H校例年、大勢の子どもが交わるダイナミックな活動が行われるが、今年は個人の指示作業・指示行動が中心だった。自由遊びもなし。
I校面接時間が増えた。待機時間に行動観察(少数)があった。チーム対抗のタッチは無し。その他の内容に変化はなし。はさみ・クーピー12色持参。
J校少人数での箸つまみ実施。子ども同士の動きを制限した中での活動が多くなるものの、例年どおりの協力活動はあった。
共学校K校過去にもたびたび行われている典型的な課題のひとつ、お手玉投げを行った
L校変化なし。運動の際にマスクを外した。
M校時間を短縮して実施した。運動、子どものみのグループ活動、集団制作、リレーなどは行わなかった。
N校ゲーム・自由遊びなどのグループ活動がなかった。相談をして動物模倣をしたグループがあった。
O校例年の行動観察(集団活動やリレー競争)はなし、その分、陣形になって行う運動課題の際に、ジャンケンゲームや音の数と形の指示を伴う活動が追加された。指示行動では、ボール・縄跳び・器械など道具を使うものはなし
男子校P校相談・友だちとの関わりはなし。筆記用具持参。
Q校変化なし。踊り(歌なし)のみ。

やはり予想通り相談を伴う集団活動がなくなり、運動課題や個人中心の制作課題が増えました。一つ一つの内容を分析し来年に備えなければなりませんが、少なくとも型を教え込むような対策を学校側が望んでいないことは明確です。意欲をもって主体的にかかわる気持ちをどう育てるか・・・それは毎日の生活の中でこそ実践できるものです。あらためて「小学校入試は、子育ての総決算です」と述べていたある学校側からのメッセージを思い出しました。

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