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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

子どもの意欲を引きだし、学ぶ姿勢を育てる受験対策を

第889号 2024年3月22日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 来年秋に受験をされる新年中児の保護者の皆さまを対象に、「年中4月からの受験対策」と題したセミナーを3月20日に行いました。そこでお話しした内容は以下のとおりです。

  1. 2024年度入試の特徴
  2. 受験ではどんな能力が求められているか。ある小学校の2024年度入試より
  3. より重要性を増した「行動観察」
  4. 正しい学びの進め方
  5. 家庭学習の課題と方法

1では、昨秋の入試を以下のように総括し、具体的にお伝えしました。

a. 一部の学校を除き、志願者が減少。新しい方針を打ち出した学校に対する期待は大きい。
ex)サレジアン国際学園目黒星美小学校
昭和女子大学附属昭和小学校「国際コース」「探求コース」
b. 入試問題はコロナ禍と比べると難問化したが、以前の難易度にはまだ戻っていない。
<今年よく出された課題>
  • 図形構成―図形分割
  • 一場面を使った数の総合問題
  • 四方からの観察
  • 交換
  • 回転図形
  • 魔法の箱
  • しりとり
  • 指示の聞き取り
  • 記憶
c. 行動観察はコロナ禍以前のように相談させる課題が増えたが、まだ指示行動が多い。

2では、ある小学校の入試問題をすべて提示し、学校側が何を求めているか、そしてその内容が将来の教科学習にどうつながっていくのかを分析しました。これまで私は学力試験を総括するとき、難しい問題や思考力が必要な問題をピックアップして分析してきましたが、同じ学校で出されるすべての問題を俯瞰して、「難易度はどうか」「難しい問題と易しい問題の出題バランスがどうなっているのか」を分析する必要があると考え、そのうえで小学校入試は決して難しい問題だけを出すのではなく、基本的な問題が7~8割あることを知っていただき、難しい問題だけを入試対策のための学習対象にするのではなく、基本をしっかり身につけ、自分の力で解いていく学習をしなければならないことをお伝えしました。そのために配布した資料は、コラム 883号884号の内容をまとめた冊子です。

3では、昨秋の入試で出題されたいくつかの問題を紹介し、行動観察で問われていることを次の5つにまとめ、その内容と重視される理由をお伝えしました。
  1. 集団の中でのヒトやモノへのかかわり方
  2. 集団の中での協力関係をどう築けるか
  3. 人の話を聞く態度がしっかり身についているか
  4. 自らの考え、意見をしっかり言えるか
  5. 最後まで頑張りぬく力があるか

4では、これから来年秋の受験に向けて、どんな考え方で学習を進めたらよいのかを「正しい学び」の進め方としてお話ししました。こぐま会で実践しているKUNOメソッドの指導法を説明し、年中7月から始まる「セブンステップスカリキュラム」の内容と授業の進め方を具体的にお伝えしました。基礎から応用、具体から抽象へと学力を高めていくらせん型カリキュラムの学習内容をご理解いただけたと思います。
幼児期の基礎教育だけでなく、受験対策のための学びにおいて、ペーパーを先行させた指導がなぜ誤りなのか、その理由を説明しました。子どもたちの「考える力」を育てるためには、みずから物事に働きかけ、試行錯誤しながら解答を導き出すプロセスが大事です。私たちはそれを「3段階学習法」として確立し、実践しています。
「体を使い」「手を使い」「頭を使って」物事の理解を深めていく3段階学習法の流れを、「重さくらべ」の授業を例に紹介しました。

その方法を実践していただくことを前提に、家庭学習の進め方について大事な点を3つほど掲げてお伝えしました。

  1. ペーパー学習の前に、事物を使った学習を徹底すること
     具体物に働きかけ、手を使って操作する経験が大切
  2. 自分で試行錯誤して解答にたどりつく経験を徹底する
     自ら考えた思考のプロセスを言語化させる
  3. 受験準備の教育にタイパはなじまない
     じっくり時間をかけ基礎をしっかり築いてこそ、学力が定着する

いま小学校受験は大きな曲がり角に来ています。子どもたちを迎える学校側も、将来の学びにとって何が大事かを考え、それをどのような入試問題として出題したらよいかを模索しています。また、保護者の皆さまも「なぜ受験するのか」を深く考え、志望校選択の仕方が昔とは変わってきています。そして、教科書のない入試を指導する受験塾も乱立し、小学校受験がビジネスの対象になり、教育の原理原則とは程遠い指導がまかり通り、「合格させるためには何でもあり」の深刻な状況になってきています。早いうちから勝ち組となるよう徹底した教え込みの指導を受け、学ぶ楽しさや学ぶ姿勢が身につかないまま、小学校に入学していく子どもたちが大量に生まれています。
初めて受ける教育がゆがんだ教え込みのペーパー指導で、周りの友だちと常に競いあう環境で育った子どもたちが、入学後にどんな学校生活を送るのか・・・受験対策の指導が、幼児教育をゆがめてしまい、深刻な問題が小学校で起きてくるのではないかと懸念しているのは、私だけでしょうか。


読み・書き・計算はまだ早い!

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

 KUNOメソッド こどもがかしこくなる絵カード(幻冬舎)

幼児の日常生活の中にある学びをカード化!
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