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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

遊びの中で学ぶ(2) 数体験の大切さ

第888号 2024年3月15日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 すみれクラス(新年少児) 第15週の授業は「数をかぞえる」というテーマの活動です。集団活動では、同じ数のボールを探すゲーム(同数発見)や、指示された数のキャンディーを袋詰めにする作業(指示の聞き取り)を行いました。幼児期の数の学習で大切なことは、たし算やひき算などの計算でなく、生活や遊びの中で物事に働きかける「数体験」をし、数の感覚を身につけることです。数の概念である集合数・順序数の考え方は教え込まれて身につくものではなく、物と物との関係性の中で身についていくからです。比べてみたり、取り去ったり、一緒にしたり・・・・そうした作業の中で数の経験を積んでいくわけですから、それをいかに豊富に持たせるかが課題です。

すみれクラス 第15週:数「数をかぞえる」

集団活動
  1. 同じ数はどれかな?(同数発見)
  2. お約束の通りに袋詰めしてみよう(指示の聞き取り)
  3. 順番を考えて色つみ木を入れてみよう(指示の聞き取り)
個別活動
学習ボードを使って、計数や数の構成を学習する。
  1. いくつですか(金魚と同じ数のおはじきを置く)
  2. いくつですか(赤いスーパーボールがいくつあるか、その数だけおはじきを置く)
  3. あといくつで3かな(あといくつで3になるかを考えて、その数だけおはじきを置く)

2~3歳児の活動を数的側面でとらえてみると、新しい発見がたくさんあり、4~5歳になって「なぜ数の理解に差が出てくるのか」、「なぜ数が苦手になるのか」も分かるような気がします。
今回の活動では、指示を理解し、約束どおりにキャンディを袋詰めにする作業は楽しくできました。
「赤いシールが貼ってある袋にはキャンディーを2個入れてください」「あといくつあれば4個になりますか」という課題はほとんどの子ができていました。しかし次に、学習ボードに描かれた唐揚げを見て「あといくつで4個になるかおはじきを置いてください」という質問をした時には、できた子とできなかった子とがあまりにもはっきりと分かれたのです。それはなぜなのか、担当教師と話し合いました。

本物のキャンディーではできたのに、絵に描いてある唐揚げではできない子が目立ったのは、与えられたおはじきをボードに描かれた唐揚げに見立てることができなかったからです。そのため、あといくつで4個になるかを考えるのが難しかったと思われます。2~3歳の子どもたちには「唐揚げの絵とおはじきを合わせて4個」という見方、つまり数を抽象化するということができなかったのです。「合わせて4個にしてください」と言っても、おはじきを4個出す子が多かったということからも、それがわかります。
ものから「数」という側面だけを取り出し、それを合成することは、まだこの年齢の子どもたちには難しい作業なのです。「なぜできなかったのか」を分析すると、子どもたちがどう考えたのかがよくわかり、幼児期の教育で何を大事にしなければならないかがはっきりします。
この時期の数の学習に具体物を使うことの大事さをあらためて認識しました。半具体物であるおはじきと、絵として描かれたものを合成することがまだ難しい子もいるからです。そこを乗り越えるために、キャンディの袋詰めのように同じものを合わせて「いくつ」にするということを繰り返し行うことが必要です。

「唐揚げが4個」となるには、2は1を含み、3は1と2を含み、4は1と2と3を含むという関係性を自らの内に作って初めて成立します。私たちが当たり前のように扱っている「数」ですが、幼児期の子どもたちが数を理解していくプロセスはとても複雑で、幼児期の教育方法を考えていくうえでとても参考になります。こうした数体験を踏まえたうえで、年中児になると次のような学習に発展していきます。これがまさしく私たちが大事にしている「らせん型カリキュラム」です。

ゆりクラス セブンステップスカリキュラム
Step1-3:数「計数、同数発見、5の構成」

1. お買い物ごっこ(命令行動)
指示されたもの(2~3種類)を指示された数だけ買って、買い物カゴに入れる。
2.「5」の構成
  1. 先生が5個のミカンを並べ、子どもが目隠ししている間にいくつかのミカンを隠す。そのあと隠された数がいくつかを考えて、発表する。
  2. 先生が言った数を聞いて、あといくつで5になるか、すばやく答える。
    「3!」→「2」、「4!」→「1」
3. 正しく数えましょう
  1. 3色のおはじきを色別に分けて、それぞれいくつずつあるか調べる。(13、15、18)
  2. 30個のおはじきの中から、指示された数だけ正確にお皿に取る。(13、19、23)
  3. 先生が叩いたカスタネットの音の数だけ、お皿の中におはじきを取る。(7、9、12)
4. 同数発見
  1. 見本に示された具体物の数と同じ数の絵カードを探す。
  2. 絵カードを使って、同じ数のものどうしを重ね合わせる。

ペーパー学習まで発展していく「数」の教育の基礎づくりが、すみれクラスの活動の中にたくさんあります。子どもたちの取り組みの様子を見ていて、あらためて「事物教育」のすばらしさを実感しています。

<指導した教師:齋藤佐知子より>
 発達の観点から見ると、お子さまにとっては年齢プラス1までが身近な数となります。実際のキャンディーを使って4まで数える、4を取り出すことができる子どもたちも、絵に描かれた唐揚げとおはじきの操作に変化するだけで難しい様子でした。来週はおままごと遊びで、ピザやケーキ、イチゴを用意して数操作をイメージできるように用意してみようと思います。芽吹の季節、これまで内にインプットされてきたことが表に現れるようになって、子どもたちの大きな成長に出会えるのを楽しみにしています。

読み・書き・計算はまだ早い!

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  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
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