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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

遊びの中で学ぶ(3) 図形のセンスを身につける

第890号 2024年4月5日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 すみれクラス(年少児) 第16週は、立体構成をテーマに、つみ木遊びを集団活動と個別活動で行いました。

すみれクラス 第16週:図形「立体構成」

集団活動
大きなつみ木を使って
  1. 絵本の読み聞かせ
  2. 大きなつみ木でお城をつくろう
  3. かたづけ
個別活動
小さなつみ木を使って
  1. いろんな形に積んでみよう
  2. 同じ形をつくろう
  3. 覚えられるかな?

幼児期の子どもたちの周りには、図形感覚を育てる素材や遊具がたくさんあります。折り紙、粘土、つみ木、パズル、LEGO®やパターンブロック®など楽しいものがたくさんあります。こうした素材や玩具を使った遊びを通して図形感覚が磨かれていくはずですから、図形の知識を教え込む前に十分遊ばせることが大事です。最近の小学校入試でも図形の出題は増えていますが、知識を教え込んで解けるわけではありません。図形的なセンスがどれだけあるかが問われています。また学校側も、子どもたちが遊びの中で経験していることを前提に問題を作成しています。特に、折り紙やつみ木を使ったものが数多く出題されています。

今回はつみ木を使った「立体構成」を行いました。まず、子どもたちの背丈を超える高さにまで積み上げられる大きくて柔らかいつみ木を使って、絵本で見たお城をイメージしながらお城を作ります。その際、個別ではなくみんなで一緒に作ることをめざしますが、「一緒に作ろう」と子どもが声掛けをすることはほとんどありません。しかし、例えばAちゃんが作ったお城が高くなりすぎてくずれてしまった時、無言のうちにみんなが集まり、それを直し始めるというような場面で無意識の共同性が生まれます。「みんな仲良く作りましょう」といわなくても自然にそのような状況になる、この経験が何物にも代えがたく大事なことなのです。自分の背よりも高いお城を作って、そこに入ろうとしたり、自分の背の高さを基準に「高い―低い」を表現したり・・・空間認識の始まりとして貴重な体験でした。

個別活動では卓上つみ木を使って見本と同じ形を作ったり、見本を記憶して同じように並べたりする活動を行いました。
大きなつみ木の時も小さなつみ木の時も、最初は自由に作らせることが大事です。その経験を踏まえて、お手本と同じ形を作ったり記憶して作ったりするいわゆる「つみ木学習」が始まります。この意図的な学習の前に、十分な時間を取って、子ども自身が手を動かしつみ木に働きかけることがどうしても必要です。この経験が希薄な子は、自分で問題を解決することができません。ペーパー学習のみの短時間で済ませようとしても、入試で求められる図形のセンスは身につかないのです。年齢が低いほど、こうした図形遊びの経験が大事です。

今回のつみ木遊びとは異なりますが、3週間ほど前の授業で紙コップを使った自由遊びを行いました。その日に初めて参加する子が多かったため、どんな遊びができるかと、「高く積んでみましょう」と教師が声掛けすると、みんな自分が持っている紙コップを重ね合わせ、高さを競いました。ほとんどの子が紙コップを重ね合わせ、それを床に立てるように置いて、自分のものが一番高いと主張します。もっとほかの作り方はないかなと声掛けしても、みんな重ね合わせるだけでほかの方法は気づきません。そのうち教師が2つのコップの間に1つを置く方法で積み始めると、みんなそれをまねて同じように積み始めます。教えるというよりまねして作るという感じです。教師がこうしなさいと言ったわけではありませんが、教師のやり方をまねしてより高く積むことを学習したのでしょう。次の週、同じ紙コップ遊びをした時に、この前やった方法がどこまで身についているのか興味深く眺めていましたが、全員がただコップを重ねるのではなく、2つ置いてその間に一つ置いていく方法を当たり前のように作業していました。前に経験した積み方が、子どもの内にしっかりと理解し定着できたのだと思います。3歳前後の学びは、このようにまねたり模倣したりするところから始まります。こうした経験を省略して、言葉で教え込む今はやりのペーパーを使ったタイパ教育は、子どもの成長にとって何の意味も持たないものだと思います。

※次号は4月19日に掲載を予定しております

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