週刊こぐま通信
「室長のコラム」国公立附属小学校を目指す皆さまへ
第841号 2023年1月13日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

お茶の水 20名 / 筑波 8名 / 学芸大(大泉・小金井・世田谷・竹早) 38名 / 立川国際 11名 合格
こぐま会は、私立小学校を目指す子どもたちを対象に、合格のための訓練ではなくしっかりとした教育理念を掲げ、幼児期の基礎教育プログラムである「KUNOメソッド」による受験指導を続けてきました。今年4月で創立40周年を迎えます。40年の間に、教室での指導はもちろんのこと、家庭学習用の教材制作販売、入試情報の提供などに取り組み、受験生の皆さまを応援してきました。学校選択が多様化する中で、最近「私立は受験しないけれど、国立だけは受験したい」という相談を受けることが多くなり、私立小学校向けの受験指導のシステムとは違った国立附属小学校向けの「こぐま なでしこ教室」 の受験指導を強化してきました。ご存知のように、国立の受験には「抽選」が絡み、準備してもそもそも最初の抽選に受からなければ受験できないという事情があるため、私立ほど時間とお金をかけて準備することができません。しかし、ある程度の準備をしなければ合格につながらないという背景があるため、どんな仕組みづくりをすればいいのかを検討してきました。その結果、以下のような考え方で「こぐま なでしこ教室」の指導を強化し、合格に向けた指導を続けてきました。
- 幼児期の基礎教育を徹底すれば、国立の受験には対応できる。仮に抽選で受験ができなくなっても、それまでの基礎教育は次の中学校受験のためにも意味がある
- 出題される問題の難易度を調べると多くの場合、こぐま会のセブンステップスカリキュラムの基礎段階のステップ1~4までを徹底すれば十分対応できるので、時間的に少しゆとりをもって準備ができる
- 金銭的な負担をできるだけ軽減するために、私立向けに行っている学校別の受験対策講座の形にし、年間を通して通塾する縛りをかけないで、お子さまの様子、ご家庭の考え方に沿って準備ができるようなシステムにする
- 逆に抽選に通り、受験が可能になった時には、集中して準備ができるような体制がとれるようにしておく
2023年度入試の合格実績を見ると指導方針に間違いはなく、やってきた意味があったと感じています。今回の合格者数は2023年1月13日現在、以下のようになっています。(※学校名は50音順)
学校名 | 人数 |
---|---|
お茶の水女子大学附属小学校 | 20 |
筑波大学附属小学校 | 8 |
東京学芸大学附属大泉小学校 | 9 |
東京学芸大学附属小金井小学校 | 14 |
東京学芸大学附属世田谷小学校 | 11 |
東京学芸大学附属竹早小学校 | 4 |
東京都立立川国際中等教育学校附属小学校 | 11 |
昨年開校した東京都立立川国際中等教育学校附属小学校も含め、予想以上の成果を見て、このシステムで十分国立向けの対策ができることを確信しました。特に今回はお茶の水女子大学附属小学校に、最終抽選を経て20名が合格したことは初めての快挙であり、立川国際も2年目で11名の合格者を出したことは、我々の指導体制で十分対応できることを証明できたと思います。
今回行われた2023年度の都内7校(国立6校・都立1校)の試験概要を、以下のようにまとめました。国立受験を目指す方々に私立と違う試験の方法をまずは知っていただきたいと思います。
抽選 | ペーパー | 行動観察 | 面接 | 願書以外の記入書類 |
■ お茶の水女子大学附属小学校 | ||||
---|---|---|---|---|
試験前後 2回抽選 |
なし(個別テスト有り)
|
|
個別テスト中に行う | 第2次検定手続き時に保護者アンケート有り |
■ 筑波大学附属小学校 | ||||
試験前後 2回抽選 |
|
|
複数での口頭試問 | 当日保護者アンケート有り |
■ 東京学芸大学附属大泉小学校 | ||||
抽選の後 試験 |
|
|
2人ずつ呼ばれ行う | なし |
■ 東京学芸大学附属小金井小学校 | ||||
試験の後 抽選 |
|
カード取りゲーム | 1人ずつ行う | なし |
■ 東京学芸大学附属世田谷小学校 | ||||
試験の後 抽選 |
|
|
行動観察中に1人ずつ行う | 当日保護者アンケート有り |
■ 東京学芸大学附属竹早小学校 | ||||
試験前後 2回抽選 |
なし(個別テストと親子課題あり)
| |||
■ 東京都立立川国際中等教育学校附属小学校 | ||||
試験前後 2回抽選 |
|
なし | 1人ずつ行う | なし |
この中でまず押さえておいていただきたいのは
- 選考方式が学校によって違うこと
抽選 - 試験 - 抽選 お茶の水女子大学附属小学校
筑波大学附属小学校
東京学芸大学附属竹早小学校
東京都立立川国際中等教育学校附属小学校試験 - 抽選 東京学芸大学附属小金井小学校
東京学芸大学附属世田谷小学校抽選 - 試験 東京学芸大学附属大泉小学校 - 学力試験においてペーパーテストがない学校もあるが、お茶の水は個別テスト、竹早は個別テスト+親子課題がある
- 行動観察はほとんどの学校であるが、立川国際にはない
- 面接に関しては、子どもはすべての学校があるが、保護者はお茶の水と竹早で行われる
- 願書は私立小学校と違って簡素であり、氏名・住所・生年月日・家族構成など基本情報を記入するところが多く、筑波は出願時に志望理由を記入する欄がある。ただし、試験当日や2次出願時に保護者アンケートを提出する学校がある(お茶の水・筑波・世田谷・竹早)
- ペーパー試験のある学校の出題内容は基本的な問題が多いが、話の内容理解は必ず出されているところは私立小学校と同じである
- 行動観察はコロナ禍ということもあって、ゲームや運動課題が多いが、制作物を使った活動も見られる
以上簡単にまとめましたが、詳細な学校別の分析に関しては今後私立小学校同様、セミナー等に力を入れて受験生の皆さまに正確な情報をお伝えしたいと思います。また、国立向けの家庭用教材も充実していくつもりですのでご期待ください。
昨年3回実施した「全国幼児発達診断テスト」 には、延べ1万人近い年中・年長の皆さまに参加していただきましたが、その後のアンケートなどを通じて、全国72校あるといわれる国立附属小学校を受験される皆さまも大勢参加されたことが判明しました。試験の内容は都内6校と類似した面もありますが、難易度に関しては、都内6校の方が少し難しい感じがします。2015年4月より広島市の「大木スクール」 にこぐま会のメソッドを導入し、広島大学附属小学校合格に向けた準備教育を行ってきましたが、毎年合格実績を伸ばし続け、今や50名を超す合格者を送り出しています。広島で初めて事物教育・対話教育を実践し、ペーパーを使った教え込みの指導を排除した結果です。ここでの実績を見ても、KUNOメソッドによる事物教育が、国立の入試にとっても有効であるということが証明できています。この実績をもって、全国の国立附属小学校目指す受験生の皆さまにKUNOメソッドを提供できればと考えています。昨年3回実施した「全国幼児発達診断テスト」に参加された皆さまから寄せていただいたご意見を拝見し、地方では客観的に学力をチェックする機会が少ないという現実を知りましたので、そうした皆さまの要求に応えられるようなサービスを検討しています。
事物教育は、子どもたちの学習意欲を育てる教育でもあります。主体性を育てる幼児教育はペーパーだけの指導では実現できません。物事に取り組む姿勢や集団でのかかわりを見る入試では、行動観察が重視されています。そこで求められている「非認知能力」は、学力育成のための指導においても大切にされなければなりません。厳しい環境の中で行われる権威主義の指導では、そうした「子どの主体的な判断力」を育てることはできません。合格さえすれば良いという考えで、子どもの伸びゆく芽を摘み取ってしまってはいけません。
- 重版決定!! こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)
読み・書き・計算はまだ早い!
家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。- 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
- 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
- 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
- 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ