週刊こぐま通信
「室長のコラム」まもなく基礎段階の学習が終わります
第805号 2022年3月11日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

昨年、ゆりクラス(年中)の9月から始まった「セブンステップスカリキュラム」による学習は、11月からはばらクラス(年長)につながり、3月19日までにステップ4を終了する予定です。ステップ1から4まで、ステップごとに6つの領域「未測量・位置表象・数・図形・言語・生活他」の学習を行ってきました。ここまでの24の単元は、今後の入試対策を行う上で極めて大事な内容であり、4月から始まる応用学習の基礎となります。どんな内容であったか振り返ってみましょう。
step1 | step2 | step3 | step4 | |
---|---|---|---|---|
未測量 | 大きさ・多さくらべ | 重さくらべ | 長さくらべ | シーソー |
位置表象 | 前後・上下関係 | 左右関係 | 方眼上の位置と移動 | 四方からの観察(1) |
数 | 計数、同数発見、5の構成 | 一対一対応 | 等分 | 一対多対応 |
図形 | 基本図形とその構成 | 立体構成 | 同図形発見、点図形 | 図形分割 |
言語 | 同頭音・同尾音、しりとり | 短文づくり | 話の内容理解、お話づくり | 話の内容理解、昔話 |
生活 他 | 分類(1) | 理科的常識(1)(常識) | 分類(2) | 法則性の理解(1)(推理) |
一つのテーマを1時間半の授業で行い、6領域の課題が終われば発達診断テストで理解度を確認し、次のステップに進む構成になっています。また、それぞれの領域は次のステップで学ぶ内容の基礎になるという、いわゆる「らせん型カリキュラム」の構造で、子どもにとって理解しやすく、学習の順序性を重視しています。例えば、空間認識を育てる「位置表象」領域では、
step1:前後・上下関係
step2:左右関係
step3:方眼上の位置と移動
step4:四方からの観察(1)
と進んできており、ここまでの基礎を踏まえてこれからは、
step5:四方からの観察(2)
step6:地図上の移動、飛び石移動
step7:空間認識総まとめ
の学習に進みます。位置表象の理解のポイントは、ステップ2で行う「左右関係」です。この理解の上に「方眼上の移動」「四方からの観察」「地図上の移動」の学習が準備されています。自分の右手 - 左手の理解から始まり、他者の右手 - 左手、観点を変えた左右関係の理解をしっかり身につけた後、応用段階の学習に進みます。ここでの学習はすべて左右関係の理解が絡んでいますので、ステップ2の左右関係をしっかり理解する必要があります。逆に言えば、ある課題が理解できなかった場合は、前の課題に戻って学習しなおすことが大事です。このように基礎段階の学習は、入試で出された問題を横一列にならべ、手当たり次第に解いていくという「過去問トレーニング」とは全く違います。自分の力で問題を解いていくためには、こうした徹底した基礎学習が必要で、そのうえで過去問に取り組めば良いのです。教科書のない入試ですから、どうしても「入試対策 = 過去問トレーニング」になりがちですが、そんな学習では将来の教科学習の基礎は身につきません。それどころか最近の思考力を重視した入試問題には対応できません。基礎から応用へ、具体から抽象へという学びの順序は、幼児教育だからこそ大切にしなくてはならないのです。
さてステップ4までの学習のうち、特に入試でよく出される課題ははっきりしています。ステップ1から4までの学習のチェックポイントを掲げると以下のようになります。その中で、入試でよく出さされる課題を太字で示しましたので家庭学習の参考にしてください。
【家庭で行う 領域別基礎学力点検項目(ステップ1~4)】
- 未測量
- 「~番目に長い」棒は、同時に「~番目に短い」棒と言える。
- 「~より長く、~より短い」棒が、どれかわかる。
- シーソーの四者関係において「3番目に重い」ものがわかる。
- 個別単位の考え方ができる。(正方形の数で広さ、マッチ棒の数で長さを判断)
- 量の多いものから順に対応づける「順対応」の作業ができる。
- お話を聞いて、三者~四者の関係を推理できる。
- 位置表象
- 3×3方眼上の位置を記憶できる。(4~5つのもの)
- 自分以外の右手・左手がわかる。
- 1つの交差点での曲がり方を理解できる。
- 生活空間における位置関係を言葉で表現できる。
- 方眼上にある1つの場所を言語化できる。
- 1つのものの見え方をその場に行かないで推理できる。
- 数
- 5~10までの数の構成(いくつといくつ)を暗算できる。
- 具体物を使って、観点を変えた分類ができる。
- 仲間はずれの理由をしっかり説明できる。
- 2つの数を比較し「どちらがいくつ多い(少ない)」か言える。
- 「違いはいくつ?」の問いに対し、正しく答えることができる。
- 量の3等分がわかる。
- あまりのある数の等分がわかる。
- 一対多対応で、答えを導く手続きがわかる。(お客さん・タイヤの問題など)
- ある数の中に、指示された数のまとまりがいくつあるかがわかる。(包含除の理解)
- 図形
- ひし形が正しくかける。
- 立方体が正しく模写できる。
- 基本図形を何片かに分割した図形構成ができる。
- 触るだけで形を判別したり、描き表すことができる。(平面・立体)
- 何個のつみ木を動かせば指示された形ができるかがわかる。
- 点図形が正しく描ける。(特に、斜めの線の多い見本)
- 同図形発見がすばやくできる。
- 折り紙を指示された形に分割できる。
- 三角パズルが短時間でできる。
- ある形を指定された数の三角に分割できる。
- 言語
- 言葉の音の数と、最初の音・最後の音がわかる。
- 前に戻るしりとり(あたまとり)ができる。
- 動きを表す言葉(動詞)を適切に使うことができる。
- 絵カードを時間的経過に沿って並べることができる。
- 4場面の絵カードを使って、まとまった話ができる。
- 長い話を聞き、登場人物とその行為を結びつけることができる。
- 昔話に関して、あらすじや登場人物について理解している。
- その他
- 鏡に関する基本問題が理解できる。
- 花の名称と季節を正しく答えることができる。
- 巧緻性の課題に自信をもって取り組むことができる。(箸・ひも結び・はさみなど)
- 立方体を何回か回転させたときの向きをイメージできる。
- 並び方の法則性を説明できる。
基礎段階の学習内容に関する入試問題を分析したうえで、上記太字の項目を最重要課題としました。特にステップ3と4の学習内容が入試問題に絡むケースが多いので、ぜひしっかり点検してください。4月に入るとステップ5の学習が始まりますし、入試レベルの課題がこれからたくさん出てきます。そうした問題に自信を持って取り組むためにも、基礎段階の学習内容をしっかり身につけてください。
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読み・書き・計算はまだ早い!
家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。- 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
- 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
- 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
- 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ