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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎段階の学習を終えた子どもたちの学力の現状 (1)

第806号 2022年3月18日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 前号で「セブンステップスカリキュラム」ステップ1~4の基礎段階の学習内容についてお伝えしましたが、子どもたちはいったいどこで壁を感じているか、理解度の違いはどこで生じるのかを、2回に分けて領域別にお伝えします。ぜひ家庭学習の参考にしてください。

ステップ1~4の「未測量」領域の中で理解度に差が出るのは、「シーソーの三者関係」「個別単位の考え方」「話を聞いて三者・四者関係を考える」の3つです。シーソーは三者関係が基本ですが、実際の入試ではほとんどが四者関係の推理になります。また、質問内容も「一番重い・一番軽い」のようにわかりやすいものだけではなく、「3番目に重いもの」を最初から探させる問題もあります。同じ場面でも質問の仕方によって難易度が異なりますので、どんな角度からの質問にも答えられるようにしてください。

2つ目の「個別単位の考え方」は、次のような問題です。

単位の考え方
  • 左のマスの黒いところと同じ広さのものを右から探して、青いをつけてください。


単位の学習は小学校2年生で行います。リットル・デシリットル・メートル・センチメートル・グラム・キログラムといった「普遍単位」の考え方につなげるために、「直接比較」「間接比較」「個別単位」と学び、最後が「普遍単位」の考え方につながります。普遍単位の前に個別単位の考え方をしっかり身につけなければなりません。例えば「広さくらべ」であれば、あるものを1単位としたとき、いくつ分の広さなのかを考える問題です。上の問題の場合、真四角を1単位としても、三角を1単位としてもいいわけですが、ともかく何かを1単位として広さを比べるものです。真四角を1単位とした場合、三角2つで真四角1つ分であるという図形的な判断が必要になります。入試では、主に広さと長さがテーマになりますが、何を一単位とするかを考えると、広さくらべのほうが難しいかもしれません。

3つ目は、「話を聞いて三者・四者関係を考える」問題です。シーソーも関係推理の一つですが、シーソーの場面を見て考えることができます。話による関係推理は、場面が見られない分だけ聞き取りの要素が強くなります。例えば次のような問題です。

言葉による三者関係
太郎君、花子さん、メガネをかけた次郎君が背くらべをしました。
太郎君は「僕は花子さんより背が高いよ」と言いました。
花子さんは「私は次郎君より背が低いわ」と言いました。
メガネをかけた次郎君は「僕は太郎君より背が高いよ」と言いました。
  • 背が高い順に指をさしてください。


話の中身はいろいろあります。比較できるものや勝敗の決まるものは何でもテーマになり、シーソーに代表される「重さくらべ」もその一つです。私たちの経験では、道のりの比較が子どもたちにとって一番苦手のようです。話を1回聞いただけで関係を考えるわけですから、「聞く力」と「論理性」が求められています。未測量においては、以上3つの課題(シーソー、個別単位、言葉による関係推理)をしっかり復習してください。

次に「位置表象」の課題です。空間認識を育てる位置表象の領域は、生活していく上で必要な前後・上下・左右の3つの位置関係が学習の柱になりますが、特に左右関係の理解が大事です。自分の右手―左手の理解から始まり、他者の右手-左手の理解に進んだ後、左右関係の絡むいろいろな課題に向かいます。「交差点の曲がり方」「方眼上の位置」「四方からの観察」がその典型です。特にステップ4で学習した「四方からの観察」は、入試でよく出されるだけでなく、空間認識を問う大事な課題です。他者の立場に立てるかどうか・・・ここがポイントです。次のような複合問題が入試で出されています。

四方からの観察を含んだつみ木の数当て
上の絵を見てください。テーブルの上のつみ木をまわりから動物が見ています。前から見ているウサギはつみ木の黄色いところ、右から見ているクマからはつみ木の青いところが見えます。木の上から見ているサルからはつみ木の赤いところが見えています。
  • 下の絵を見てください。下の机の上のつみ木をまわりから動物たちが見ると、それぞれ右のように見えました。机の上の形はいくつのつみ木でできていますか。その数だけ下のお部屋に青いをかいてください。


この問題に取り組む前に、具体物を使った四方からの観察、つみ木を使った四方からの観察をしっかり復習し、そのうえでこうした問題に挑戦してください。空間認識において、現在理解度に差が出ている課題を掲げると次の3つになります。
  1. 相手の右・左がわかるかどうか
  2. 交差点を指示通りに曲がることができるかどうか
  3. あるものを自分以外の立場から見たときの見え方を正確に理解できるかどうか
この点をもう一度チェックし、しっかり理解できるよう復習してください。

次に「数」の領域です。数は、将来の四則演算の理解につながる「数の操作」と集合の考え方を身につける「分類」の課題によって年間の授業が組まれています。基礎段階の学習内容で、テストなどで得点差が出ている課題は次の3つです。
  1. 観点を変えた分類ができるか
  2. 量の3等分が理解できるか
  3. 一対多対応(かけ算)の考え方が理解でき、全体の数がわかるかどうか
まず最初の「観点を変えた分類」は、具体物を使う場合もあれば、トランプカードのようなやや抽象的なものを使う場合もあります。集めたものを何度も分類分けしていろいろな種類の仲間あつめができるかどうかということです。例えばトランプカードの場合、「色」で分けることもできますが、「形」や「数」などの観点でも分けられます。一度つくった観点を壊して、また別の観点に立って共通性を発見できるかどうか・・・ここがポイントです。

観点を変えた仲間あつめ
  • ここにあるカードを仲間で分けると、どんな仲間で分けられますか。お話ししてください。できたら、他の方法での分け方も考えてください。


次の、わり算の考え方につながる「等分」ですが、授業では「数の等分」の前に「量の等分」を行いました。量の等分は、2等分・4等分のほかに3等分がわかるかどうかが問われます。授業では、ホットケーキを使って3等分する方法をみんなで考え、実際に切ってもらいました。数の等分についてはおはじきを使って行いました。2等分から4等分まで行いましたが、難易度を決める要素は、あまりが出てしまう場合の処理をどうするかということです。

数の等分
  • ここにあるミカンを4人で仲良く分けると、1人いくつもらえますか。その数だけ下の子どものお部屋に青いをかいてください。
  • 4人で仲良く分けると、ミカンがいくつか余りましたね。あといくつミカンを持ってくれば仲良く分けられますか。その数だけミカンのお部屋に青いをかいてください。


あまりの出る問題を間違いなくやるためには、まず1個ずつ配るという作業方法をしっかり身につけることです。残っている数と配る人数との兼ね合いを考えて作業することが大事です。

最後にもう一つ得点差が出る課題は、「一対多対応」の考え方を必要とする問題です。一対多対応は「お客さんごっこ」や「タイヤの問題」で考え方の基本を学びますが、ペーパー問題などではいろいろな形でその考え方が求められています。次のような課題がその一つです。

一対多対応
  • お客さんが4人来ました。お客さんに1人2個ずつイチゴを配るには、イチゴはいくついりますか。その数だけイチゴのお部屋に青いをかいてください。
  • 5人のお友だちにアメを3個ずつ配りました。アメは全部でいくつありましたか。その数だけアメのお部屋に青いをかいてください。
  • 4台のタクシーに、お客さんが4人ずつ乗っています。タクシーに乗っている人は全部で何人ですか。その数だけタクシーのお部屋に青いをかいてください。


この一対多対応の考え方は、応用段階の学習では「交換」の問題に発展し、次のような問題となって出題されています。

交換
上のお部屋を見てください。メロンパン1個は、ドーナツ2個と換えてもらえます。食パン1斤は、メロンパン2個と換えてもらえます。ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と換えてもらえます。
  • メロンパン4個は、食パンいくつと換えてもらえますか。その数だけリンゴのお部屋にをかいてください。
  • 食パン2斤は、ドーナツいくつと換えてもらえますか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。
  • ハンバーガー4個は、食パンいくつと換えてもらえますか。その数だけバナナのお部屋にをかいてください。


最近多くみられる数の総合問題は、一場面でいろいろな数の操作が求められています。そうした問題の基礎を、今のうちにしっかり身につけておくようにしてください。

数の総合問題
上のお部屋の絵をよく見てください。
  • ここにいるウサギの耳の数はいくつですか。その数だけウサギのお部屋にをかいてください。
  • ここにいるサルに、木になっているリンゴを2つずつあげると、リンゴはいくつあまりますか。その数だけサルのお部屋にをかいてください。
  • ワニが池の中に2匹います。池の外にいるワニと合わせると全部で何匹いますか。その数だけワニのお部屋にをかいてください。
  • ここにいる鳥が4羽飛んで行ってしまいましたが、そのあと2羽帰って来ました。全部で何羽になりましたか。その数だけ鳥のお部屋にをかいてください。
  • 今リスが3匹います。1匹のリスがいなくなりましたが、あとから3匹やって来ました。全部で何匹になりましたか。その数だけリスのお部屋にをかいてください。
  • ここにいるチョウを2匹ずつ虫かごに入れるには、虫かごは全部でいくつ必要ですか。その数だけチョウのお部屋にをかいてください。



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