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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

オンライン講演会を終えて

第767号 2021年5月14日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 5月8日(土)の10時から「幼児期に大切な10の思考法」と題したオンライン講演会を実施しました。コロナ禍で強化されたこのセミナー方式は、コロナ収束後もきっと根付いていくでしょう。私もこの1年間、新たに中国で出版したこぐまオリジナル教材紹介のための中国向けオンラインセミナーや、シンガポールの提携教室と共同で、シンガポール在住の日本人に向けた、幼児教育の在り方に関するオンラインセミナーを行いましたが、一般の皆さまを対象として行った国内のオンライン講演会は今回が初めての経験でした。広島県広島市や千葉県流山市の提携教室に通われている皆さまや、サピックスキッズに通われている皆さま、また全国で「こぐまオリジナル教材」を使って学習されている皆さまなど、約650名の参加申し込みをいただきました。今回は、幼児期の基礎教育の在り方をこぐま会の実践等を踏まえてお伝えしました。話の内容は次の3つの柱です。
  1. なぜ今幼児教育に関心が集まるのか
  2. こぐま会の3つの教育理念について
  3. 幼児期に大切な10の思考法とは
幼児教育に関心が集まる大きな理由として、私は次の2点をあげました。
  1. ジェームズ・ヘックマン氏の著書『幼児教育の経済学』で述べられた、5歳までの教育が人間の一生を左右するかもしれないという主張を、多くの国民が真剣に受け止めた
  2. 大学入試改革にみられるように、これからの教育の在り方についてさまざまな議論が行われている。AI社会で活躍できる人材をどう育てるか。これまでのように知識偏重の教育ではいけない。アクティブ・ラーニングに象徴される主体的な学びを、就学前の子どもたちの教育をどのように実施すべきかを考えなくてはならない
そうした状況の中で、こぐま会が行ってきた実践を、3つの教育理念に沿ってお伝えしました。
  1. 教科前基礎教育とは何か
  2. 事物教育はなぜ必要か
  3. 対話教育の重要性
そして、本講演会の本題である「幼児期に大切な10の思考法」の前に、特に力を入れて説明したのは、KUNOメソッドの特徴である3段階学習法です。「何を学ぶか」と同時に「どう学ぶか」を明確にしなければならず、この3段階学習こそが幼児期の子どもたちに最もふさわしい方法だと確信しています。
  1. 体を使った集団活動(ゲーム・ごっこ遊びなど)
  2. 手を使い、事物に働きかけ、試行錯誤する時間を大切にする個別学習
  3. 頭を使ったペーパーワーク
最後に、幼児期の基礎教育は、まず生活や遊びを通して行うべきだという考え方に基づき、生活や遊びの中における学びのチャンスを生かすためにも大切な10の思考法について解説しました。領域学習を通して身につけるべき大事な観点は、実は生活や遊びの中にたくさんあるということを知っていただきたく、可能な限り教室での授業内容と関連付けながらお伝えしました。その10の思考法とは以下の通りです。
  1. ものごとの特徴をつかむ
  2. いくつかのものごとを比較する
  3. ある観点に沿って物事を順序づける
  4. 全体と部分の関係を把握する
  5. 観点を変えてものごとを捉える
  6. ものごとを相対化して捉える
  7. 逆に考える
  8. あるものごとをひとまとまりとして捉える
  9. ものごとの法則性を発見する
  10. AとB、BとCの関係からAとCの関係を推理する 

45分ほどお話しさせていただいた後、質疑応答の時間をとりました。今回はライブ配信でしたのでチャット機能を使ってご質問を受け、可能な限りお答えしました。

回答させていただいたご質問
  • 幼児期にはいろいろな遊びを経験させるのがよいと思っていましたが、そんなに早くから勉強させる必要があるのでしょうか。
  • 毎晩絵本の読み聞かせをしておりますが何歳ごろまで続けたほうがよいのでしょうか。早く自分で本が読めるようにさせたほうがよいのでしょうか。
  • 本日の講演会の中でありました「10の思考法」の中で視点・観点を変えて物事を捉えるということがとても重要とのお話でしたが、もう少し分かりやすく説明していただけないでしょうか。
  • 回答ややり方を教えようとすると嫌がる場合はどうしたらよいでしょうか。
  • 先生や第三者の存在なく親と子どもだけでもこのような学びは成立させられますか。
  • こぐま会では子どもが理解したとどのように判断しているのでしょうか。回答できれば理解したと判断しているのでしょうか。
  • 小学校受験を検討しておりますが、周りではペーパー学習をたくさんやらせています。ペーパーを多くこなし早く本番に慣れさせたほうがよういのでしょうか。
  • 間違えたら失敗したと言ってやめてしまいます。どう声かけしたらよいでしょうか。
  • 本日の講演の中で、日常生活や遊びを学びに変えるチャンスがあるとのお話がありましたが、具体的にはどのようにしたらよいでしょうか。アドバイスをお願いいたします。
  • 考えていることの言語化、対話教育の大切さを実感しました。私自身話すことや言語化することが苦手なのですが、何かアドバイスをお願いいたします。
  • どうしてそう思ったの?と尋ねても「何となく」「わからない」という答えしか返ってこないため、本人の中で言語化ができていないと感じています。どのような働きかけをすれば言語化が進むのでしょうか。
  • 語彙が増えていないのかお話づくりが苦手です。絵本の読み聞かせやお話の記憶は毎日やっています。本人も大好きなのですが、なかなか成果が出ません。有効な取り組みはありますでしょうか?

セミナー終了後にいただいたアンケートも読ませていただきましたが、多くの皆さまが小学校受験の有無に関係なく、我が子の教育に真剣に向き合い、情報が多いばかりに何を信じていいのか迷われて心配されている様子がわかりました。英語教育に関する考え方や、私が見てきたアジア諸国の幼児教育に対する熱心さに比べ、日本の幼児教育は遅れているのではないかという私の発言に多くの皆さまが関心を持たれたようでした。
一般の方を対象とした初めてのオンライン講演会でしたが、大勢の皆さまから大変貴重なご意見をいただき、また、これからもセミナーの開催を望む声も多くいただきましたので本講演会を総括したうえで、これからもこうしたセミナーを企画していこうと思います。

頂戴したご感想・ご意見 ※一部をご紹介させていただきます
  • 今まで、いろいろな情報があり過ぎて、何から手をつけたら良いのか分かりませんでした。しかし、今回の公演を通し、日常生活の中で学べる材料はたくさんあるということが分かり、机の上での学習だけではなく、経験を通して多くのことを学ばせて、自分で考える力も少しずつつけていけたら良いなと感じました。
    ただ賢い子に育てば良いという考えではなく、子どものことをよく考えた教育方法だと感じましたし、子どもとの関わり方や声掛けなども大変参考になりました。
  • 事物教育を通して物事を考え、考えたプロセスや答えを子ども自身に説明させることによってより理解を深め、思考力を伸ばしていける事が素晴らしいと思いました。生活や遊びの中にたくさんの学ぶ機会があることに気づき、実践していきたいです。
  • 私は1歳児の親であり、医療系大学で教員をしております。本日は、幼児期に大切な関わり方について非常に勉強になりました。
    いち大学教員としての感想は、幼児期にこれらの能力を獲得することができれば、より質の高い高等教育を実施できると思います。所属大学でも、自ら学ぶ力、思考力、忍耐力等に課題のある学生が散見され、今からどう伸ばすことができるか、義務教育の間に何とか身につけられなかったのか、と悩ましく思うことが多々あります。
    本日のお話をもとに、我が子との関わり方も考えながら、親としても試行錯誤しつつ楽しく育児をしていこうと思います。
  • いつから始めたらよいかが問題ではなく、子どもが理解できているか、定着しているかを親がサポートしていくことが大切と学びました。
    先生のお話を実際にお聞きしたのは初めてでしたが、優しい語りかけの中に私たち親へのメッセージがたくさん感じられとても勉強になりました。
  • ペーパーをたくさんやってどんどん先取りするのが正義という教育論に少し疑問を持っていたので、内容がストンと落ちました。
    さらに最後に代表がおっしゃっていた英語教育はインプットだけしていてもアウトプットする場がないと意味がないという発言はとても興味深く、すべてに通じるなと思いました。
  • とても有益なお話をありがとうございました。特に早期の英語教育は使う場面があることが必須であるとのお話や、欧米の読み聞かせについてはとても興味深く、世界に視野を広げ、これからの子供の成長、可能性を広げるお話は今後もぜひお聞かせいただきたいと思います。
  • ペーパーに取り組む前段階に、日々の生活のなかでの実体験が大切なんだなと感じました。
  • ペーパーを使った勉強をすると親のほうがやらせなきゃ!と焦ってしまい、あまりいい効果が得られませんでした。先生の本を読んで日常生活のなかに勉強を取り入れてみようと思います。
  • 海外の幼児教育と日本の状況を伺い、教育が国の発展に影響する急務なことだど大人が理解していることがわかり、日本の場合はたしかにのんびりしているということも感じます。
    早くから知識を詰め込むのでなく、自ら思考する力を育むこと、この視点に大変共感しています。生活の中の学びのチャンスにアンテナをはり、生かしていくことを意識して生活したいと思います。
  • 講演を聞いて、もう一度立ち止まって幼児期の教育について考えるとてもいい機会になりました。
  • 子どもたちの将来のために何が大切か、生きていく力とは、とあらためて原点にかえった気持ちです。と同時に子どもにかかわる中で大事にしたいものは間違いないと先生に後押しされたたようで爽快です。貴重なお話をたくさん盛り込んでいただき有難うございました。
  • 就学前の幼児教育が、小学校での「国語・算数」の教科学習につながる非常に重要な位置付けにあることが深く理解できました。
    私たちは当初、受験のために幼児教育があるという考えでしたが、受験の有無に関わらず、生活から得られる知識や経験遊びや具体物を使った物事の理解が子どもの考える力を大きく伸ばし、これからのAI社会を生き抜いていくために将来とても重要なのだという事を再認識いたしました。
  • 言語化することに苦手意識を持っている子どもに対してどうしてあげたら良いか模索していたところでしたので、とても参考になりました。
  • 幼児期が大切ということをよく聞くので、何をしてあげればいいのか分からず今まできましたが、生活の中での声かけ、子どもの話を聞くという基本的なことのようで、なかなかできていないと感じました。今日から実践したいと思います。
  • まだ娘は0歳ですが、今後どのように幼児教育に取り組んでいけばいいか知ることができ良かったです。


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