人生最初の学習で、自信を失わせたり、
学ぶことが苦痛であると感じさせるような指導は絶対にあってはなりません。
Q.1:
事物を使った学習は簡単すぎる。なぜ、必要なのですか?
A.1:
実は、
「事物を使った学習 = 基本中の基本(易しすぎる学習)」
だから、必ずしも事物を使った学習は必要ではない、と判断される方は多くいらっしゃいます。それよりも早くペーパーを・・・とお考えになるのもよくわかります。しかし、それでもこぐま会が事物学習を重視するのには、2つの大きな理由があります。
1つ目は、
「楽しく集中して取り組むことができる」ということです。
「生活単元学習」という言葉があります。子どもたちの日常にテーマを求め、その中での活動を通してさまざまな学習課題に取り組ませようとする考え方です。幼児が興味・関心を持って関わることができる、という素晴らしさがあります。
私たちの教室でも、生活や遊びの中から意図的に抽出した、知的好奇心を刺激するような場面を、その日の授業テーマに合わせて教室内に再現します。それは子どもにとって日常の延長であり、ごっこ遊びそのものであり・・・その中で子ども同士が意見を言い合い、試行錯誤し、自分の力で答えに到達する、という幼児にとって自然なかたちの学習がそこにあります。
2つ目は、
「認識能力を高め、考える力を育てることができる」ということです。
私たち大人にとって、中学・高校・大学の受験勉強はもちろん、小学校で受けた授業を振り返ってみても、学習といえば教科書やノートを広げ、鉛筆を走らせていたことが思い出されるはずです。そのため、ドリルやプリントなどの教材には馴染みがあっても、事物を使った学習の必要性をご理解いただくのは、なかなか難しいことかもしれません。
しかし、実体験がまだ充分ではない年齢の子どもに、はじめから紙面に描かれた絵や図を見て考えさせるのは少し無理があります。幼児の認識能力は、事物への働きかけを通して、物と物、自分と物との関係性を学ぶという段階を経て高まっていくからです。そして同時に考える力も、身体や手を使って事物を自在に動かしながら試行錯誤する中で育っていきます。
どうか、事物学習を「簡単 - 難しい」という概念で捉えるのではなく、「物の本質や関係性を学ぶ場」であるとお考えいただきたいと思います。「具体(事物)から抽象(ペーパー)へ」の橋渡しを、幼児にはぜひ経験させてあげてください。
Q.2:
ペーパー中心の学習で合格できるならそれでよいし、早道では?
A.2:
ほとんどの学校の学力考査は、ペーパーのみで行われます。個別テストを採用する一部の学校を志望しない限り、事物を使った学習は回りくどいと感じられてしまうかもしれません。
ペーパー中心の学習でも、合格という目標一点に限っていえば、ゴールにたどり着くことは可能です。もしかすると、これから受験準備を始めようとするご家庭にとっては、手っ取り早い道すじに思えるかもしれません。
さて、こうした学習法で受験準備をスタートさせると、日々の学習成果が確認しやすいことが、まず感じられると思います。筆記問題の特徴として、ひとつひとつ課題の出来不出来が×ではっきり表されるためです。また、ペーパー特有のテクニックを教え込んだり、同じ種類の問題を繰り返し解かせてパターンを記憶させることもできます。結果、一定レベルの問題には対処できるようになります。しかしそれは、あくまでペーパーテストで点を稼ぐための勉強法であり、本当に理解し、身に付く力にはなり得ません。また、毎日理由も分からず椅子に座らされ、大量のペーパーを積まれて厳しい指導を受けることで、やがて勉強に疲れ、嫌いになってしまうことも少なくありません。過去問や難問に一生懸命取り組み、たとえ運良く志望校に合格できたとしても、「もう勉強はしたくない」ということになってしまうのです。
受験を考える以上、ペーパー学習が大切であることに間違いはありません。集中的に取り組まなければならない時期もあります。しかし子どもたちの将来を考えたとき、私たちは、このような学習法に「NO」と言わざるを得ないのです。
Q.3:
入試対策において、事物を使った学習は、ペーパー中心の学習にくらべてどんな優位性があるのですか?
A.3:
こぐま会の模擬テストなどで、ある時期までは、ペーパー問題を数多くこなしてきた子どもの方が良い点を取るということがよくあります。事物を使った学習を重点的に行ってきた子どもとは対照的に、さまざまな問題のパターンを記憶し、また解き方のテクニックも身につけているからです。
しかし、こぐま会ばらクラスの授業が応用段階に入る年長の5月頃から、事物を使った学習の効果が徐々に現れはじめます。身体や手をつかって試行錯誤してきた経験が、論理的に考える力を高めていくための土台となるからです。そのため、複雑な思考を求める課題にも柔軟に対応していくことができるようになります。
そして受験直前の夏季講習会で、何千枚ものペーパー学習の繰り返しでは対応できない難問に取り組むようになったとき、また、変化の著しい最近の入試で驚かされる新出問題に本番で対峙したとき、その時こそ間違いなく、事物を使った学習の本当の力が発揮されるのです。