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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

がんばれ受験生 (2)
選択肢から選ぶだけの学習では本物の学力は身につかない

第906号 2024年9月20日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 最近私が行っている代表特別講座で「入試直前総まとめチェック」を行いました。入試直前1カ月の学力を点検し、最後の学習課題を見つけるためのテストです。この時期受験生の多くは過去問に挑戦し、問題のパターンには慣れているはずです。しかし、ペーパーでをもらったからといって本当に理解しているわけではありません。繰り返しのトレーニングでその問題ができるようになっても、同じ趣旨の問題で違った問われ方をしたとき解けない子が大勢いることが分かっています。つまり、本当に理解はしていなくてもペーパーだとできてしまうという現象です。「過去問を10回やれば合格できますよ」というパターン学習では、違った視点から問われる新出の問題はできません。本当に理解していないからです。そこを埋めるために、私たちがお勧めしているのは「答えの根拠を言語化させてください」ということです。考えのプロセスを説明するのは、5~6歳児の子どもにとっては確かに難しいものですが、決してできないわけではありません。ですから保護者の皆さまには、がもらえたからと言って安心しないで、どう考えたかを説明させてくださいとお願いし、1枚のペーパーを大切に深い学びをしてくださいと常々言わせていただいています。ペーパーをたくさんこなすのではなく、1枚のペーパーをいろいろな使い方をして大事にしてくださいと伝えています。

例えば、どんな問題だったのか質問の意図を説明させたり、どう考えたのかを言語化させたり、「お母さんがやってみるから問題を出してみて。」と先生役をやってもらったり、そうしたさまざまなやり方で1枚のペーパーを深い学びに繋げたら、1日に何十枚というペーパーはできないはずです。がついたらはいその次・・・といった学習では本物の力はつきません。最近の入試問題を見ると本当に考える力が身についているかをチェックするために、今まで出したことのない新しい問題を出そうといろいろ工夫しています。

本物の力がついているかどうかを見極めるために、どんな学習をしたらよいか。先ほど述べた言語化だけでなく、もう一つ大事なやり方があります。それを一口で言い表すと「選択肢から選ぶ学習だけでは本当に分かったことにならない」ということです。なぜなら、選択肢から選ぶ問題は消去法でできてしまうからです。そうしたやり方で問題を解く子が最近多くみられるからです。断っておきますがそのやり方がいけないということではありません。本当に理解してできているのかどうか一度疑ってみてください。そうならないためにやるべきことは、自分で書き表したり、表現させたりすることです。過去問トレーニングだけではなく、そうした考え方で総まとめチェックをしてみると、予想通りその問題ができないのです。以前のコラムでも、自分で実際に切れなくても、折り紙を使った線対称の問題ができてしまう事実を伝えましたが、今回の総まとめチェックテストの中にも、自分で表現する(書き表す)問題をいくつか用意しやってみましたが、予想通りの正解率です。どんな問題を作って出したのか、何問か紹介しましょう。

1. 個別単位(広さくらべ・長さくらべ)
  • 星のお部屋を見てください。上の見本の形と同じ広さのものを下から探してをつけてください。
  • 月のお部屋を見てください。上の見本の形と、同じ長さの線を下の点を使ってかいてください。形は変えてかいてください。1つかけたら、もう1つかいてください。

この問題は、小学2年生で学ぶ単位の考え方につながる個別単位の問題です。左の「広さくらべ」は同じ広さを選択肢から選ぶ問題、右の「長さくらべ」は、同じ長さの線を自分で描き表す問題です。左ができて右ができない子が多くみられました。

2. 四方からの観察
机の上のつみ木をまわりから動物たちが見ています。
  • 星のお部屋を見てください。キツネから見える見え方にを、クマから見える見え方にを、星のお部屋につけてください。
  • 上から見ている小鳥からはどのように見えるでしょうか。月のお部屋の黒いは、小鳥から見える黒いつみ木です。これを使って点をつないで、小鳥からの見え方をかいてください。

最近よく出る「つみ木を使った四方からの観察」です。左は選択肢から選ぶ問題、右は自分で描き表す問題で、これも前の問題と同じように、左はできても右はできないケースが多くみられました。

3. 言葉づくり
  • 星の問題を見てください。上のお部屋にあるものの、名前の最初の音を使って作れる言葉を下から探して線結びしてください。
  • 月の問題を見てください。上の形は名前の音を表しています。「かさ」の「か」は、「さ」は、「リンゴ」の「り」は◎です。
    例えば、下の(れい)のように、黒い◆とと黒いで「ミカン」という言葉が作れます。
    このように名前の音を使って、他の言葉を作ってください。下の空いているお部屋に新しい言葉の音の形をかいてください。1つできたら横にもう1つかいてください。

左の星の問題は選択肢から選ぶ問題、右の月の問題は自分で新しい言葉をつくる問題です。星の問題はできても月の問題になるとできない子が多いです。
3つの例を紹介しましたが、私たちが作る問題はどこかの学校で出された過去問ではなく、子どもの考える力を見るオリジナルな問題です。自分で考え自分で表現(描き表す)する、こうした問題をやることによって、本当の理解につながり、応用力が身につくと思います。ペーパー学習にもやり方があるということを念頭に、1枚のペーパーを大事に深い学びをしてください。

今年行われた小学6年生の学力テストの評価について、以前のコラムで次のように書きました。

新聞各紙ではいろいろな分析が見られますが、総じて「目的や話題に沿った内容を記述したり、データをもとに考えたことをまとめる力に課題が見られた」(日経新聞)という評価のようです。要するに、思考力や表現力に課題があると総括されています。 私も小学校の算数問題を実際にやってみましたが、感想は
  1. 問題の中味はそれほど難しくない。実際に小6の子どもたちを教えた経験から、なぜこのレベルの問題で平均点が63点なのか理解できない
  2. ただ答えが出せればいいというのではなく、なぜそう考えたのか、なぜそうした式になるのかを、説明させる問題が数問あり、考えのプロセスを問う問題が子どもにとっては難しかったと思われる
  3. 複数のデータを読み、分析する力が問われた問題が難しかったようだ。しかし、こうした能力を育てる授業が学校で実際に行われているのかどうか大変疑問である

こうした分析は学校の先生方もお持ちのはずです。これからの小学校入試も、選択制より記述式の問題が増えていくはずです。とすれば、先ほど紹介したような、自分で書き表す問題の練習が必要です。ぜひ、こうした動きにあった学習を最後のまとめとして行ってください。過去問トレーニングだけの学習では限界があります。本当に分かっているかを、いろいろ工夫して問いかけてみてください。

読み・書き・計算はまだ早い!

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