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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

幼児期の言語習得について

第901号 2024年7月19日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年も、8月末から9月にかけてシンガポールで親子を対象としたサマースクールを開催いたします。子ども向けには体験授業・こぐまなつまつり、保護者向けには幼児期の基礎教育のあり方についての講演会を予定しています。シンガポールの学習塾KOMABA  にKUNOメソッドを導入してから今年で9年目になりますが、いつも講演会の後で「シンガポールに住んでいてインターナショナルスクール(または現地校)に通っていますが、日本語の習得に不安があります。どうしたらよいですか」という内容のご相談を多くいただきます。家では日本語を話していても、外では英語での学習・生活なので、日本語の獲得を十分にできないのではないかと心配されてのことだと思います。実際シンガポールに赴任していて、日本の私立小学校の受験を希望し、夏季講習会などに参加されるご家庭も毎年ありますが、確かに言語の理解が不十分な子が見受けられます。そのことが、思考力の育成にマイナスに働いていることを実感することもあります。しかし、だからといってそのまま小学生になってからも重大な問題として抱え込むことはないように思います。日常会話のレベルと概念を形成する言語とは違いますし、年齢が低ければ低いほどその差の大きさを実感するということはありますが、それが一生付きまとうものではないように思います。ただし、実体験を伴わない音としてのみの言語習得は、大きな問題を抱え込むことになるかもしれません。こうした海外在住の日本人の言語習得の問題は、逆に日本に住む子どもたちの外国語習得の考え方について示唆を与えてくれます。母語である日本語の基礎が不十分な状況で他言語を習得することのデメリットはよく考えておく必要があると思います。英語の習得が当たり前のような状況になっている現在、一度立ち止まって考えてみる必要はありそうです。私自身も専門家ではありませんので、どう考えたらよいか答えを持っているわけではありませんが、本当に幼いうちから習わないと身につかないのかどうか、「臨界期」というような専門用語を営業トークに使って保護者を煽るようなことがないようにしなければなりません。
  1. 幼児期から英語を習得することがなぜ必要か
  2. 必要だと思った時から学び始めたのでは遅いのか
  3. 幼児期からの英語教育の中味が確立しているのか
  4. 指導する先生が本当に専門家なのか
  5. ローカルがあってこそのグローバルなのに、逆転してはいないか
疑問に思うことはたくさんありますが、これから日本の英語教育がどうなっていくのかを注意深く見守っていくしかありません。以前、英語が専門の大学教授が「学習内容が確立したKUNOメソッドを英語で行うのが一番良い」とお話しされていたことがありました。つまり幼児期の英語教育は、ただ英語のシャワーを浴びせればよいという考え方ではなく、その中身が大事だということです。
さて一方で、「日本語教育」ひいては「国語教育」のあり方を今こそしっかり議論しておかなければなりません。
読み・書き・計算に象徴されるように、言語領域では、4技能のうち習得の結果が分かりやすい「読む」「書く」が注目されやすいのですが、それはたいへん大きな問題を含んでいます。
幼児の言語能力の発達は、「どれだけ読めたか」「どれだけ書けたか」に関心が集まりやすいのですが、幼児期の言語教育の課題はまず「聞く力」「話す力」です。これをどれだけ身につけられるかを重視したプログラムが必要です。母国語である日本語は、自然に身につくと感じられることが多いようですが、実は次のような大事なポイントがいくつかあることを知っていただき、それを実際の生活や遊びの中でぜひ実行してみてください。

  1. 聞く力・話す力をまずしっかり身につける。そのためには、毎日経験したことを聞いてあげることが大事。また、絵本の読み聞かせ、絵カードを使ったお話づくりは有効。
  2. 経験を土台にして言語を習得する。言葉は体を通して紡ぎだすことが大事。例えば、海での体験がないまま「うみ」に関する詩を読んであげても行間は理解できないし、川に入ったことがない子に「かわ」に対する想いは広がっていかない。
  3. 日本語力と国語力はイコールではないが、母語こそ国語力の土台。また、生活語と概念語の違いを明確に意識して、言葉で論理を育てる基礎をしっかり身につける。
  4. 声が小さい子に対しては、みんなの前で話す成功体験を持たせることが大事。例えば子ども向けの詩を家で覚えてもらい、それをみんなの前で発表してもらう(実際に、そこでの成功体験が自己肯定感につながり、声の大きさも改善されたケースを多くみてきました。)

※次号は8月2日掲載(予定)です。

読み・書き・計算はまだ早い!

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

 KUNOメソッド こどもがかしこくなる絵カード(幻冬舎)

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