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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

遊びの中で学ぶ(1) すみれクラスに参加して

第887号 2024年3月1日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月から年少になる2~3歳の子どもたちが、遊びを通してどんな学びをしていくのかを具体的に明らかにするために、私はいま「すみれクラス(年少児)」の集団活動に参加しています。子どもたちが物事にどう立ち向かい、他者とどう関わり、問題をどう解決していくのか。そしてそこでの経験や学びが、幼児期の基礎教育、ひいては小学校入試の準備教育とどのように関わっていくのかを明らかにし、今はやりの、3歳ごろからペーパーを使って過去問に取り組ませる方法では、本当の学力は身につかないということを明らかにしていきたいと思います。それだけではありません。学ぶ意欲をどう育てるかも大事な観点です。なぜなら、試験を終えた子どもたちを見ていると、物事に対する意欲が以前と比べて減退しているように思うからです。コロナの影響もあるのかもしれませんが、幼児教育の大事な視点の一つは、意欲をどう育てるかにあります。受け身の学びではなく、みずから学ぼうとする姿勢を、2~3歳頃から遊びを通してしっかり育てなくてはいけません。
2月18日(日)に実施した授業は「生活の中の常識」がテーマでした。カリキュラムは以下のとおりです。

集団活動
  1. 買い物ごっこに使う品物の名称を確認する
  2. お店屋さんの準備をしよう(分類)
  3. 買い物ごっこ 言葉のやりとり
     個買ってきてください(数の指示活動)
個別活動
  1. 学習ボードを使って、お店で売っているものを見て何屋さんか答える
  2. いくつかの品物カードを見て、品物が売られているお店まで道をたどる
  3. 品物カードを選び、どこで買えるものか答える

毎回、授業の最初の15分間は自由遊びの時間です。この日は「大工さん遊び」でした。木製のねじを使って、穴の開いたつみ木をつないでいく楽しい遊びですが、この年齢の遊びはひとり遊びや並行遊びが多く、他者と関わって遊ぶということはまだあまり見られません。しかし、先生が中に入って繋ぎをすると、子ども同士の会話が始まることがあります。ひとりで遊ぶよりお友だちと遊んだほうが楽しいとわかる時期が必ず来るはずです。
集団で学ぶことの大切さを感じるのは、お片づけの時です。使った用具を箱に入れてみんなで所定の場所に運んだり、使ったじゅうたんをみんなで片づける様子を見ていると、こんな当たり前の経験の中で、子どもたちは多くの学びをしていることに気づきます。みんなで力を合わせれば、重いものでも運べるという経験、幅の広いじゅうたんを丸めるためにどうしたらよいか、丸めたものがうまくいかなかったとき、もう一度丸めたものを元に戻して広げ、もう一度チャレンジしてみるといった経験は、集団活動であってこそ成り立つものです。声を掛け合って「どうしよう」と相談する様子はまだ見られませんが、無言のうちにどうしたらよいのかを分かりあっていく「伝えあい」は、他者の気持ちを理解していく最初の一歩だと思います。きっと年中や年長であれば、「こうしよう」「ああしよう」と意見交換が始まるはずです。しかし、言葉こそ発しなくても、何をどうしたらよいのかはわかっています。言葉の発達は、こんな経験に裏付けられて身についていくものだと思います。

今回の集団活動は「買い物ごっこ」でした。買い物ごっこを通して
  1. 買い物ごっこで使う、品物の名称がわかるかどうか
  2. お店屋さんを準備するために、お店屋さんごとに品物を分類する
  3. 準備ができたらごっこ遊びをする
この分類のテーマは、ばらクラス(年長児)でも行っていることですが、この年齢になると単純に同じものを集めるだけでなく、「同一性」の理解に基づき、何らかの共通点があるものを同じ仲間として分類する作業があります。なお、ゆりクラス(年中児)の8月には次のような学習を用意しています。

集団活動
「~の仲間あつまれ」
個別活動
  1. 生活用品の名称・用途、二者の似ているところ、違うところ
  2. 私は誰でしょう
  3. カードを使った仲間あつめ(分類)

こうした学習の基礎が、今回のすみれクラスで行った「買い物ごっこ」です。こうした自由な遊びの中で、子どもたちは先生の声掛けに応えながら多くの学びをしています。これはペーパー学習では得られないことです。こうした事物教育の意義を大切にしてほしいと思います。
6名が参加した買い物ごっこの様子を見てわかったことがあります。
  1. 物の名前は大体わかる
  2. お店の名前(何屋さんで売っているものか)はまだ出てこない子が多い
  3. お店屋さんごっこで品物を分類することは楽しくできたが、迷ったものもあった。ショートケーキを、上に載ったイチゴを見て果物屋さんのカゴに入れてしまったり、逆にイチゴを、ショートケーキの上にあるイチゴと同じものだからとケーキ屋さんのカゴに入れてしまったり・・・と、「果物としてのイチゴ」「イチゴの載ったケーキ」という判断ではなく、イチゴそのものに注目が行ってしまったようです。大きな視点でのケーキ屋さん・果物屋さんが理解できなかったのでしょう

これが2~3歳児の現状で、これをどう上位概念の理解につなげていくか、まだまだ経験が必要になってくるはずです。
お店屋さんとお客さんに分かれて行う「買い物ごっこ」という場面設定で「言葉のやりとり」を期待したのですが、子どもたちのほとんどがお客さんになりたくて(当然ですね)、お店屋さんは私も含めて3人の先生が担うはめになりました。その際にも、「ケーキを2つください」と言える子と、無言でかごからケーキを2つ取って、お金の代わりにおはじきを2枚差し出す子もいます。言葉は交わさなくても状況を理解し、行動で解決する子の方が多いようですが、しかし、ちゃんと他者と関わっていることがわかります。言葉にならない「ボディランゲージ(body language)」は、言葉の発達の初期にはとても意味のある身体言語だと思います。体を通して言葉を紡ぎだす・・・この経験がとても大事だと思います。

<指導した教師:齋藤佐知子より>
 昨今、生活の中で人との言葉のやり取りが大変少なくなっており、教室ではできる限りの自発語を促すようにしています。子どもたちはごっこ遊びが大好きで、「コーヒーが飲みたいです」と私が言うと「イチゴケーキもどうぞ」。そのやり取りを見ていた他のお子さまから「ニンジンスープ、飲んで」とニンジン入りのコーヒーカップを目の前に差し出されます。子どもの「“まねぶ” 力」は、少ない人数の中で丁寧に「まねっこから、学びへ」とつながっていきます。具体物を通して、お子さまは手を使って自分の思考を総動員させて課題と向き合います。その思考はその瞬間から自分のものになっているのだと私たちには映ります。

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ワークショップ「こぐま はるまつり」を開催します!

【日程】3月3日(日) 10:00~15:00
【会場】未来屋書店 碑文谷
【対象】2歳~5歳のお子さまと保護者さま


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遊びを通して「考える力」を育てるこぐま会の学びを、この機会にぜひご体験ください!
※時間内自由参加です(所要時間:約20分/予約不要)

読み・書き・計算はまだ早い!

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家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

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