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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

対面授業とWebレッスンでより深い理解を

第760号 2021年3月12日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 幼児期の教育は繰り返しのトレーニングで理解を深めることが必要です。週1、2回の通塾だけで「考える力」を定着させるには限界があります。そこで私たちは、家庭学習を日常授業と連動して行っていただくために「家庭用学習教材」の開発に力を入れてきました。しかし、家庭での学習はどうしてもワークブックが中心にならざるを得ず、家庭でも「事物教育」「対話教育」をどのように実践していくかが長年の課題でした。コロナ禍で始めた昨年のオンライン授業の経験を生かし、昨年9月から配信を開始した「こぐま会Webレッスン」もすでにステップ4の学習に入り、96本の配信予定映像のうち約60本をすでにご家庭にお送りしています。編集作業があるために、撮影は2カ月ほど前倒しで行わなければならず、その撮影も5月末に終了するように当初の計画通りに進んできています。家庭学習の効果を最大限にするために、教室授業の「現場感覚」をどのように制作に生かすかに苦心しながら、毎回の撮影に臨んできました。

ばらクラス(年長児)の授業は、セブンステップスカリキュラムに則って年間学習予定が組まれています。Webレッスンはそれに沿った内容ですので、96本の学習テーマはすでに決まっています。1つの単元について2つ、もしくは3つのテーマがあり、1つのテーマを30分程度で学習できるように編集しています。事前にカリキュラムを検討し、それに沿ってどんな教材をご家庭に提供するかについて打ち合わせをします。編集に時間がかかるため、毎週2回の撮影を行っています。社内の特設スタジオでの撮影は1回につき2時間半ほどかかります。そこで撮った映像にさらにテロップや音楽を加えて編集し、最終調整をしてから動画配信を行っています。

ご家庭で使用する教材はオリジナルなものを準備し、それを日常授業の際に手渡ししています。こうした制作スケジュールで行っていますが、一番苦労しているのは、その場に子どもがいない状況で子どもに語り掛けるように撮影しなくてはいけない点です。教室での子どもの様子を思い浮かべながら発問し続けるために、実践経験はとても役に立ちます。今回の制作スタッフは、全員が教室での指導に立ち会っている職員ですので、撮影過程でおかしな点があれば、すぐにストップがかかり撮り直します。2つのカメラで撮影していますが、子ども目線で考えて、どのカメラでどの方向から撮るのが一番子どもにとってわかりやすくなるかなどを話し合いながら行うため、試行錯誤の連続です。その上で、実際に使ってみて子どもの反応がどうであったか、これまで家庭学習を主導してきた保護者の立場から何か不足する点がないかどうか・・・使用される皆さまのご意見を最大限取り入れたWebレッスンにしなければと考え、定期的にアンケート調査を行って、その結果を大事にしながら次回の撮影の参考にしています。

アンケートを分析すると、Webレッスンにうまく取り組めない子どもたちの理由として挙げられているのは次の点です。

  • 1つの単元の学習時間が長すぎる
  • 再生する機材が十分揃わない
  • 具体物学習はいいが、ペーパー学習になると途端に集中力が持続しなくなる
  • 両親共働きのために、そもそも学習する時間が取れない

一方で、上手に活用されている皆さまからは次のような意見が寄せられています。

  • 夫と子どもの二人で取り組んでもらう際に、夫にとっても、今の理解度や授業内容を把握できると好評です。
  • 4歳の子どもが動画配信で授業に集中できるだろうか心配でしたが、画面に集中し、毎回喜んで取り組んでいます。
  • 飲み込みがややゆっくりで器用なタイプではない娘にとっては、すでになくてはならない復習教材。
  • 何度も繰り返すことで理解するタイプなので、授業内容とリンクした復習教材に取り組むことで、その単元の理解が深まっている事を実感。
  • 1コマあたりの長さがちょうど良く、親がどうやって子どもに対して説明した方がいいのかのヒントやポイントがわかりやすく、助かっている。
  • こぐま会の授業の特徴である具体物授業を自宅で再度復習することができ、とても効果的。
  • 先生の問いかけに声を出して答えたり、返事をしたりと対面しているかのように楽しく取り組んでいる。
  • 具体物を使って家庭で学習することで、子どもがわからないのはどこなのか、確認する事ができた。
  • 具体物を使った復習のやり方に悩んでいたが、動画教材により娘は取り組みやすく定着につながっている。親の教え方も学ばせてもらっている。
  • 家庭学習用のペーパーでつまづいた時も、Webレッスンに戻って具体物を使いながら、再確認する事ができた。
  • 家庭用復習プリントでは少し難しいこともあるが、Webレッスンで具体物を使いながらの復習をしておくと、ペーパーも無理なくできるようになった。
  • 具体物を使って家庭で学習することで、子どもがわからないのはどこなのか、確認する事ができた。
  • 曜日を決めて観ているので、クラスのない日にも学習する習慣がついた。親としては久野先生の声掛けや教え方がとても参考になっている。
  • 今後、学校別や難易度の少し高いWebレッスンが別で開講されると良い。
  • Webレッスンが始まる音楽が好きでおどりながら観ている。明るい気持ちで取り組めてありがたい。
  • 教室でやりとりをしているような雰囲気を家でも体感できてとても良い。
  • 働く母として、具体物教材が完成された状態(組み立ててある、色が塗ってある)だと助かる。
  • 苦手分野を母親がやると逃げてしまい、自分も辛かったが、Webレッスンを何回も視聴させているうちに「わかった!」と嬉しそうに言ってくれて、親の私が嬉しくなった。

オンライン学習は、コロナが収束した後もひとつの有効な学習方法として根付いていくはずですが、オンライン学習だけでは考える力は定着しないと考えています。しかし、事物に対する働きかけの経験や試行錯誤を前提としたオンライン学習であれば、考える力を育てる学習法として意味があると考え、「対面授業」と「Webレッスン」をセットにして、教室と家庭が同じ考え方で連携していくのが好ましいと思っています。その意味で、コロナ禍の経験が新しい学習システムを生み出したといえます。この方法で、家庭学習の組織化ができれば、教室に通う回数が少なくても対面授業の効果を最大限にすることができるのではないかと期待しています。

今年は初めての試みとしてばらクラス生の皆さまに無償で提供し、実際に使っていただいています。そこでの成果を持ち寄って、さらに良い「Webレッスン」に仕上げていくつもりです。


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