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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

子どもはどこで壁にぶつかるか

第936号 2025年9月26日(金)
こぐま会代表  久野 泰可
 9月に入り、入試直前対策として領域ごとに点検を兼ねた最後のまとめの授業が始まっています。未測量・位置表象・数・図形・言語・生活他の6領域のうち、入試でよく出されるのは、数・図形・言語の3領域ですが、他の領域からも難しい課題が出されていますので、その対策も大事です(コラム932号の表「入試でよく問われる27単元」参照)。最近の入試問題は「考える力」を求める問題が多く、一見易しく見える問題も、子どもたちにとっては問題の聞き取りも含め難しい問題に変わってしまいます。領域でいえば、最近は図形領域の問題が難しくなり、また思考の方法でいえば、(1)逆思考 (2)法則性の理解 (3)回転推理 この3つがさまざまな領域で求められています。特に目立って多いのが逆思考です。一番わかりやすい例が「逆しりとり」です。しりとりを最後から前に戻って考える問題です。
逆しりとり
左上のお部屋を見てください。ブタ→タヌキ→キツネと、しりとりでつながりますね。では逆さしりとりで「キツネ」から考えます。「キツネ」の「き」が「タヌキ」の「き」とつながって「タヌキ」の「た」が「ブタ」の「た」とつながります。
  • 逆さしりとりで青い★のお部屋の「ラッパ」が最後になるように、青でつないでください。ラッパを入れて3つの絵がつながります。
  • 逆さしりとりで赤い★のお部屋の「かさ」が最後になるように、赤でつないでください。かさを入れて3つの絵がつながります。
そのほかに「魔法の箱」は出てくる数を考える問題ですが、それを逆に考えて、入れた数を考える問題も出始めています。
魔法の箱
上のお部屋を見てください。箱を通ると数や色や形が変わって出てきます。
○を通ると数が2増えます。△を通ると数が1減ります。×を通ると数が2減ります。カエルを通ると色が黒なら白に、白なら黒に変わります。チョウチョを通ると○は△に、△は○に変わります。
  • 下のように箱を通るとき、空いている「?」のお部屋にはどんな数や色や形が入りますか。鉛筆でかいてください。まず上の段と真ん中の段をやってください。1番下の問題はまだやらなくていいです。
  • 1番下の段の問題を見てください。今度は、どんな形の箱を通るか考えて、○か△か×をかいてください。
思考をもとに戻して考えるということは、ピアジェの思考実験である「量の保存」の 問題でも問われています。思考のレベルで元に戻すというのは、幼児期の子どもたちにとっては難しいものですが、それが最近の入試問題の中で問われています。 また、回転推理に関しては「観覧車」が一般的ですが、「回転テーブル」も類似問題としてよく出されます。
回転推理
星のお部屋を見てください。果物と動物がかかれた丸いお部屋があります。 果物の丸いお部屋は白い矢印のほうに動きます。動物の丸いお部屋は黒い矢印のほうに動きます。
  • クマが2個動くとブタの前には何がきますか。右のお部屋のその果物に○をつけてください。
  • ウサギが3個動くとメロンの前には誰がきますか。右のお部屋のその動物に△をつけてください。
花のお部屋を見てください。さっきとお約束は同じですが、今度は外も中も回ります。
  • 動物が2つ、果物が1つ動きます。ウサギの前には何がきますか。右のお部屋のその果物に○をつけてください。
  • 動物が1つ、果物が2つ動きます。メロンの前には誰がきますか。右のお部屋のその動物に△をつけてください。
また、最近は「回転位置移動」や「回転図形」のように、他の領域で回転の要素を取り入れた問題が多く出されています。
回転位置移動
  • 左の形を右や左に矢印の方に回転させると中の形はどうなりますか。上の2つの問題は右から選んで○をつけてください。下の問題は右のマスの中に鉛筆で形をかいてください。
回転図形
  • それぞれのお部屋の左の形を右のように回したとき、中にある線はどうなりますか。右の形の中に足りない線をかき足してください。
逆思考や回転の要素は、特定の領域で求められているわけではありません。特に逆思考の発想は、すべての領域で問題作成が可能です。ですから、家庭学習で問題に取り組む際、「この問題を逆から問われるとどんな問題になるか」を考えて質問をつくり、学習すると良い経験になるはずです。
ところで、最近実施した「夏の総点検」のテストで見られた子どもの取り組みの中で、この時期になってもまだ得点できない問題がどんなものであったかをお伝えしましょう。直前対策に生かしてください。10問ほど行ったテストの中で間違いが多くみられた問題は次の通りです。
  1. つりあい
    置き換えを伴うつりあい
  2. 四方からの観察
    真上から見たつみ木の見え方
  3. 飛び石移動
    行って戻ってくるものと、向かっているものがどこで出会うか
  4. 交換 2個と4個が交換できる条件から、1個と2個が交換できるという約束を理解できるかどうか。また、置き換えを伴う交換が難しい
  5. 数の増減と一対多対応の複合問題
    例えば次の問題のように、一度答えを出した後、それを使ってもう一つの数の操作をしなければならないような問題で間違いが目立つ
    「鉛筆が8本ありました。今日お母さんが買ってきてくれた鉛筆も足して、3本ずつ袋に入れてプレゼントの袋を作ると4つできました。お母さんが買ってきた鉛筆は何本ですか」
  6. 折り紙を使った線対称
    三角に四つ折りしてから切ってできる形を探す問題に間違いが多い
  7. 重ね図形
    半分に折って重ねた場合の形を自分で描く課題に間違いが多い
  8. 言葉つなぎ
    真ん中の音でつないでいく課題に間違いが多い
  9. 回転推理
    中も外が反対に回る回転テーブルの問題に間違いが多くみられた。
    たとえば「動物が1つ、果物が2つ動きます。メロンの前には誰が来ますか」といった質問
  10. 魔法の箱
    出てきた数を見て入れた数を考える、「魔法の箱」による逆思考の問題に間違いが多くみられた
入試まであと1カ月半。短いようですが、最後のまとめは十分できます。以前ご紹介した「過去問精選 重要27単元総点検」が9月30日に刊行されます。すべて入試問題で構成しましたので、最後のまとめとして活用してください。
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