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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

KUNOメソッドとシンガポール算数

第930号 2025年6月17日(火)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月にシンガポールを訪問した際、現地の方にシンガポールで使用している算数の教科書を見せていただきました。4年生の算数だったと思いますが、対称図形の導入部分で私たちが幼児向けに作った線対称と同じような問題が掲載されていました。「こぐま会の教室で取り組んでいる課題がなぜ?」と思い、その後いろいろ調べてみました。シンガポールの算数は今世界で注目されていますが、その成り立ちやカリキュラム作りの理念は何なのか・・・まだ勉強不足ですが、少しずつ分かってきたことがあります。そして、私が以前から批判してきた日本の計算主義の算数とは全く発想が違い、こぐま会が従来から実践してきた数の学習と同様、「生活」に密着した算数教育であることがわかってきました。文章題中心の算数教育は、私たちが唱えてきた数教育の基本です。日本の算数教育では、例えば四則演算を3年間かけて行っていますが、シンガポールでは小学校1年生でたし算・ひき算だけでなく、かけ算・わり算まで学習します。生活の中には、すべての四則計算に関する数体験があるのに、日本ではなぜ3年間もかけて計算練習をやるのでしょうか。それは、1年でたし算・ひき算を学び、2年でたし算の繰り返しとしてのかけ算、3年はかけ算の逆算としてのわり算というように、計算の指導法がその前提にあるからだと思います。シンガポール算数はKUNOメソッドと同じように、「生活の周りにはすべての四則演算が存在しているので、わり算を3年まで待つ必要はない」と考えているからだと思います。
 次の表を見てください。小学1年生の両国の算数教科書の目次です。

【シンガポールの算数教科書(Primary Mathematics Textbook 1A / 1B)】
※日本語に翻訳しています(原文は英語)
110までの数
2たし算
3ひき算
4図形
5順序数
620までの数
7たし算・ひき算
8絵グラフ
9100までの数
10100までのたし算・ひき算
11長さ
12かけ算
13わり算
14時間
15お金
【日本の算数教科書(学校図書株式会社 しょうがっこう さんすう 1ねん)】
110までのかず
2いくつといくつ
3なんばんめかな
4あわせていくつ ふえるといくつ
5のこりはいくつ ちがいはいくつ
6いくつあるかな
710よりおおきいかずをかぞえよう
8なんじ なんじはん
9かたちあそび
10たしたりひいたりしてみよう
11たしざん
12ひきざん
13くらべてみよう
14かたちをつくろう
15大きいかずをかぞえよう
16なんじなんぷん
17たすのかな ひくのかな ずにかいてかんがえよう
18かずしらべ
191年のまとめをしよう
この目次だけでは詳しくお伝えできませんが、日本の教科書は、たし算・ひき算をどう理解させるかが小1算数の中心になり、計算練習が終わったらそれを使って解く文章題がそのあとに用意されています。しかし、シンガポールの教科書では、計算が先にあるのではなく、数体験が基本となっていますので、1年の学習にかけ算・わり算も入っていますし、お金の交換や時間も入っています。たとえば日本の教科書は、「時計」であり、シンガポールは「時間」です。多くの単元で私たちの周りにある数字を問いかけ、生活と密着した数を常に意識させようとしています。その結果、シンガポールの算数は、ともかく文章題が多いことが特徴となっています。

私は以前、このコラムで、計算主義の日本の算数教育に対する疑問を投げかけています。コラム612号コラム848号をご参照ください。生活に即した数の学習、計算主義ではなく思考力を育てる算数教育につながる、幼児期の数教育を提案しています。その方法が間違いでなかったことを、今回のシンガポール訪問をきっかけに再確認できたことは大変大きな発見であったと思います。また、私がKUNOメソッドの理論的バックボーンに、ブルーナーのらせん型教育カリキュラムおよび発見学習の考え方を取り入れていますが、シンガポール算数もブルーナーの考え方がもとになっていることを知り、驚きました。KUNOメソッドは理論から始まった教育法ではありません。子どもたちのいる現場で試行錯誤して作り上げたプログラムです。そのプログラムが、理論的に組み立てられているシンガポールの算数の基礎と考え方においても、実践内容のおいても同じであることに、少し感動を覚えています。そうであるならば、このKUNOメソッドをシンガポールの幼稚園や保育園に無理なく導入していくことができるのではないかと思います。
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