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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試速報(1) 予想問題は的中したか

第911号 2024年11月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2025年度の私立小学校入試も大半が終わり、これからは国立附属小学校入試が始まります。今年どんな問題が出されたのか、また難易度はどうであったかを分析し、数回に渡りこのコラムで紹介していきたいと思います。今回はどんな領域の問題が出されたか、予想した問題がどれだけ出されたのかをお伝えしたいと思います。
だいぶ以前になりますが、入試でよく出される課題を領域ごとにまとめ、それを予想問題として掲げ、徹底して学習してくださいとこのコラムに書きました。その際提示した内容は以下の通りです。

未測量単位の考え方/シーソー/つりあい
位置表象左右の理解/四方からの観察/飛び石移動/地図上の移動
一場面を使った総合問題/数のやりとり/交換/暗算
図形図形構成―分割/対称図形/重ね図形/回転図形
言語一音一文字/しりとり/言葉つなぎ/言葉づくり/話の内容理解
生活 他常識/魔法の箱/回転推理/図形系列

さて今年度の試験ではどうであったのでしょうか。子どもたちからの聞き取り調査で今年出題された問題が少しずつ判明してきましたが、果たして上記の予想は当たったのでしょうか。すでに聞き取りを終えた女子校5校で出題された問題を学校ごとにまとめてみると次のようになります。

A校
  1. 話の内容理解
  2. 同頭音・同尾音
  3. 回転図形
  4. 長さくらべ(個別単位の考え方)
  5. 魔法の箱
  6. 水量の推理
  7. オセロ
  8. 条件迷路
  9. 理科的常識

B校
  1. 数の総合問題
  2. 線対称
  3. 方眼上の位置移動
  4. 一音一文字1・2
  5. 常識問題
  6. 話の内容理解1・2
  7. 記憶1・2
  8. 四方からの観察1・2
  9. 位置の対応、点図形

C校
  1. 話の内容理解
  2. 数のやりとり
  3. 図形構成
  4. 図形系列
  5. 常識問題(用途)
  6. 線対称

D校
  1. 話の内容理解
  2. 数の総合問題
  3. 位置の移動
  4. 同図形発見
  5. 図形構成
  6. 言葉づくり
  7. 一音一文字
  8. つみ木の構成
  9. 回転推理

E校
  1. 話の内容理解
  2. シーソー四者関係
  3. 同頭音・同尾音
  4. 動詞の理解
  5. 位置の記憶、位置の対応
  6. 一対多対応

以上5校の問題を紹介しましたが、どうでしょう。最初に予想した「入試でよく出される課題」にほとんど含まれています。20年以上の分析に基づいた予想問題ですから外れるはずはありません。しかしだからと言ってほかの課題は必要ないと言っているわけではありません。たくさんの基礎的な学習の積み上げがあってこそ、こうした入試問題が存在しているわけですから、ここに目標を置きながら、それらの基礎となる学習はしっかりやっておかなければなりません。それが「らせん型カリキュラム」に基づいた積み上げ式の学習です。また、コラム905号「がんばれ受験生(1)」では難しい課題のポイントを次のように書きました。

  1. 視点を変えて物事を考えることができるかどうか
    その典型は「逆思考」を求める問題として、さまざまな領域で問われている
  2. 回転の要素をどう盛り込むか
    位置関係をイメージする力がどこまで身についているか
  3. 法則性を導き出し、それを適用できるかどうか
    考える力の問題として、具体的には図形系列・観覧車・魔法の箱として出されている

この観点から見ても、各校とも1問は難しい問題が出題されています。 A校の「回転図形/魔法の箱/オセロ」、B校の「四方からの観察」、C校の「数のやりとり/図形系列」、D校の「回転推理」、E校の「シーソーの四者関係」などは難易度の高い問題で、その中で上記3点の思考法が求められています。ただ、コロナ禍以前によく出された難しい問題はほとんど出ていません。その分ペーパーテストは易しくなったといえます。
今年の問題を見たとき、例年どおり一音一文字に関する問題が各学校よく出されていることに気づきます。今回紹介した5校のうち4校で出されています(応用である同頭音・同尾音を含む)。この一音一文字は日本語の文字指導の基礎ですが、小学校入試で最初から出されていたわけではありません。そのことを今から13年前のコラム320号で次のように書いています。入試問題が将来の学習の基礎になる大事な考え方を求めていることがわかります。

「一音一文字」という考え方は、「日本語は一音が一文字を表し、それがいくつか合わさって一つの言葉を形成している」という考え方で、日本語の文字指導の基礎になる考え方です。こぐま会では創立時から、この「一音一文字」は幼児期の基礎教育として大事だと考え、最初からカリキュラムの中に入れてきましたが、その当時は入試には一切出ない課題でした。そのため、「入試に出ない課題だからやらなくて良いのでは・・・」というような意見も保護者からは聞こえてきましたが、私は「入試に出る - 出ないで判断してはまずい。文字指導の基本だから将来必ず出されるはずだ」という考え方を40年間貫いてきました。それが、ここ10年間の入試で「一音一文字」に関する課題が増えていることに驚いています。幼児期の基礎教育に必要な内容は、必ず小学校入試で出されるという予想が見事に当たり、今では言語領域における入試問題の中心にさえなっています。全体として「お話づくり」の課題が減った分、この「一音一文字」に関する入試問題は増えています。「同頭音」「同尾音」「しりとり」に関する問題も、「一音一文字」の応用として把握しておく必要があります。

教科書もない小学校の入試問題は何を根拠に作られているのでしょうか。私が現場に出た50年前は、知能テストが出題の根拠になっていました。その後受験者が増えていくにつれ、小学校低学年で学ぶ内容につなげる形で、幼児の生活や遊びに即して学校側が問題を工夫し、作成するようになりました。知能テストのように訓練でできてしまう問題ではなく、考える力を求める問題に変わっていきました。今回ある学校で「オセロ」の問題が出ましたが、このように子どもの生活や遊びにテーマを求めた問題が今後増えていくと思います。数における「一場面を使った総合問題」も、生活に結びつけた問題を出したいと考えている学校側の思惑が読み取れます。入試対策として過去問練習は意味があると思いますが、今後新しい問題が出されていくことを考えると、それだけでは不十分です。小学校の教科学習につながる内容をしっかり学習したうえで、受験対策を考えるべきだと思います。過去問を10回繰り返してやれば合格できるという時代は終わりました。


 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

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