週刊こぐま通信
「代表のコラム」入試速報(2)
数に関する問題が易しくなっている
第912号 2024年11月15日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

2025年度入試において出題された問題を、これから数回にわたり領域ごとに分析していきます。 今回は、入試の中心となる「数」の問題です。いま手元にある女子校10校の問題の中から数に関する問題を単元ごとにピックアップすると、以下のようになります。
- 場面を使った数の総合問題 4校
- 数のやりとり 2校
- かけ算の基礎となる「一対多対応」 1校
- たし算につながる「数の合成」 1校
- 正しく数を数える「分類計数」 1校
- 集合数の基礎としての「仲間あつめ・仲間はずれ」 2校
- 1. 数の総合問題
-
- カブトムシは何匹いますか。その数だけカブトムシのお部屋に〇をかいてください。
- 左側の木のセミが全部右の木に移り、真ん中の木のセミが2匹は左の木に、1匹は右の木に移りました。1番右の木には何匹のセミがいますか。その数だけセミのお部屋に〇をかいてください。
- ここにいる鳥のうち、3羽の鳥が帰っていきましたが、しばらくしてまた2羽やってきました。今鳥は何羽いますか。その数だけ鳥のお部屋に〇をかいてください。
- ここにいるアゲハ蝶が1匹ずつ木にとまると、何匹がとまれませんか。その数だけチョウのお部屋に〇をかいてください。

-
- サルの店員さんは何人いますか。その数だけ、バナナのお部屋に〇をかいてください。
- 黒いお皿にはお寿司が2つ、白いお皿にはお寿司が1つのっています。クマの親子は、お寿司をいくつ食べましたか。その数だけ、ブドウのお部屋に〇をかいてください。
- 座っているブタさんから順番に、流れてくるお寿司を○がついたお皿から2枚ずつ食べていきます。ウサギさんが食べるお寿司はどれですか。そのお皿に〇をつけてください。
- 今度は、ブタさんから順番に1枚ずつお皿をとったとき、玉子のお寿司を食べるのは誰ですか。その動物に〇をつけてください。

最近の入試の一つの特徴は、ここに掲げたように、生活の一場面を使って数に関するいろいろな質問をする形式の問題が増えていることです。その中身は、将来学習する四則演算につながっていく内容ですが、これまでは一枚一枚別々な問題として出されていたものが1枚のペーパーで済んでしまうため、当然ペーパーの枚数は減ります。子どもにとって難しいのは、質問に答えるために一場面に書かれたどの数に注目したらよいかを子ども自身が考えなくてはならない点です。生活に密着した数の問題という点を考えると、今後この形式の問題が増えていくと思います。
- 2. 数のやりとり
- ※設問の細部につきまして、現在精査中です

「じゃんけんをして、勝った人は負けた人からアメを1個もらえる」 このルールを踏まえて何回かじゃんけんをした後、それぞれが何個になったか、あるいは違いはいくつかといった質問に答えていく問題です。基本は、同じ数を持っていてじゃんけんをして1個あげたら、違いは2個になるという理解ができるかどうかです。生活や遊びにテーマを求める問題が最近増えていますので、この「数のやりとり」も数の変化を考えさせる問題として、今後もたくさん出されていくと思います。
もう少し基礎的なものとして、こんな問題も出されています。
- 花子さんと太郎君が5個ずつおはじきを持っています。
ジャンケンをして、グーで勝ったら3個、チョキで勝ったら2個、パーで勝ったら1個、負けた相手からもらえます。
- それぞれジャンケンをしたあと、花子さんのおはじきはいくつになりますか。その数だけ右のマスに〇をかいてください。

じゃんけんした後の数を比べる前に、当事者である花子さんのおはじきの数だけを問いかける問題です。勝った時にもらうだけではなく、負けたときには相手に渡さなければなりませんので、そこのやりとりができるかどうかが問題です。じゃんけんですごろくのように移動する問題であれば、勝った時だけ動けばいいのですが、このじゃんけんの場合は、負けた場合は相手にあげなくてはなりませんので、関係がやや複雑になります。
- 3. 一対多対応 包含除
- イチゴは丸いお皿に3個、四角いお皿に2個のります。
- 上の問題です。ここにあるイチゴを左のお約束のように、いくつかの丸いお皿にのせたとき、イチゴはいくつあまりますか。その数だけ右のお部屋に〇をかいてください。
- 真ん中の問題です。ここにあるイチゴを左のお約束のように、いくつかの四角いお皿にのせたとき、イチゴはいくつあまりますか。その数だけ右のお部屋に〇をかいてください。
- 下の問題です。ここにあるイチゴを左のお約束のように、丸いお皿と四角いお皿の両方を使ってのせます。お皿は何枚いりますか。その数だけ、それぞれ右のお部屋に〇をかいてください。

「一対多対応」と呼んでいる問題は、将来のかけ算の考え方につながっていく内容で、最近増えている数の総合問題の中にもこの種の問いかけはたくさん見られます。 ここに掲げた問題は、イチゴをお皿に載せるという問題で、3個ずつ載せるといくつ余るか、2個ずつ載せるといくつ余るかと聞いています。ですからこの問題は、わり算の包含除の問題ですが、かけ算とわり算は表裏の関係ですので「一対多対応」のくくりでとらえています。最後は組み合わせの問題で、やや応用的な問題となります。 今回ご紹介した問題の他にも「数の合成」「分類計数」がありますが、これは以前からあるもので特筆する問題ではありません。また、数の操作ではありませんが、集合数の基礎として分類の課題もこの数の領域に入れています。
以上見てきたように、今年女子校の入試で出題された数の問題は基本的なものが多くありますし、従来から数の問題に相当力を入れて出していた学校が、数の問題を全く出さなくなりました。やはり入試問題の中心であった「数」の問題が少なくなっている象徴的な出来事です。数の操作をさせることより、その前提となる考える力を他の領域の問題でチェックしようとしている表れであるかもしれません。
前号で紹介したように、入試における数の問題は、次の項目が中心になって出題されています。
- 一場面を使った数の総合問題
- 数のやりとり
- 交換
- 暗算
「交換」は数における難しい問題の一つですが、女子校でよく出されていたこの交換の問題が今年は見当たりません。この事実をもって見ても、数の問題が全体的にやさしくなっていることがわかります。 今後の学習のポイントは、一場面を使った数の総合問題に慣れ親しんでおくことです。その中で、生活に即して、たし算・ひき算の基礎、かけ算・わり算の基礎が問われます。ということは、ペーパー化された数の問題に取り組む前に、生活や遊びの中で数体験をたくさん持つことが大事です。小学校から大学に至るまで、生活に密着した数の問題が増えていくことを思うと、小学校入試の問題もそうした大きな流れの中で工夫されていくことは間違いありません。
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