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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

4年ぶりにシンガポールでセミナーを行ってきました

第868号 2023年9月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会では、KUNOメソッドを使った教室事業をシンガポールで展開しています。現地人向けの「Kuno Method Singapore」と、日本人向けの「KOMABAキッズ」 の2つの教室です。この数年間、コロナ禍の影響でシンガポールでも教室を稼働できず、かなり苦戦を強いられたようですが、いまは生徒も戻り始め、どちらも活気が戻ってきました。今回は8月31日に日本を発ちましたが、コロナ禍前の2019年にも8月末から数日間、シンガポールにおいて受験をお考えの方を対象に3日間の講習会を行いました。それ以来4年ぶりの訪問になります。この間に入国システムが変更になっており、到着階の様子もかなり変化していました。宿泊先の近くにあったショッピングモールの飲食店も大幅に入れ替わっていて、多くの事業が痛手を被ったことがはっきりとわかります。

現地ではコロナ禍でロックダウンがあり、授業ができなかった時期が2教室ともにありました。オンラインで教育を止めない努力をしてきたようですが、生徒は減り、3年ほどは経営的にも大変だったようです。今年からすべての規制が解禁になり、子どもたちの元気な声が教室に戻ってきています。

今回は、9月1日に学習塾KOMABAにおいて、保護者対象の教育講演会を開きました、教室に入りきれないほど大勢の保護者の皆さまにお集まりいただき、第1部は「幼児期の基礎教育はどうあるべきか」、第2部は「小学校受験の現状と対策」というテーマでお話ししました。シンガポールには、小学校から中学校に上がる際に人生を左右するといってもいいテストがあります。その成績如何で将来のコースが決められるという特殊な教育環境があり、そのために、生まれた瞬間からそのテストに向けた教育が始まります。ですから1歳からの教育は当たり前で、幼児教育に対する関心が強いのですが、日本の受験教育と同様に教え込みの教育がはびこり、さまざまな矛盾が露呈しています。難しいことを早くからやるのがいいことだという雰囲気の中で、こぐま会の「事物教育」 「対話教育」がどこまで支持されていくかが今後の課題です。駐在している日本人は、現地のローカル校、インターナショナル校、日本人学校のいずれかを選択をしなければなりませんが、インターに通わせるご家庭が多いと聞きます。その際問題になるのは、日本語の獲得の問題です。講演会終了後の保護者の皆さまとの懇談会でも「言語」の問題に関する質問が多くあり、子どもの現状を踏まえて議論しました。せっかくシンガポールに来ているのだから英語を学ばせたいけれど、日本語がしっかり身についていないと帰国時の入学に支障をきたすのではと心配されるご家庭が多く、この点をどう考えるか、それぞれのご家庭の実践をお話ししていただき、議論しました。日本人が日本において英語を学ぶ際に懸念されることと共通な面がありますが、何のために英語を学び、英語を通して何を実現するのかといった視点での検討が必要ですし、身につけるためにはその言語を使う場をどう確保するかが最大の課題のように思います。

後半の受験に関するセミナーでは、日本の小学校の入試の現状をお話ししました。そして、ペーパー主義の教え込みの教育にならないよう、どんな考え方で準備をすればよいかをお伝えしましたが、限られた情報の中で何をどうしたらよいのかがわからず、ペーパートレーニングさえすればよいのではという間違った考えを持っているご家庭があまりにも多いことに驚きました。

こぐま会では、長い間帰国子女の小学校受験をサポートしてきましたが、最近は海外赴任に帯同されるご家庭のお子さまも低年齢化しており、帰国して受験する方が増えている現状を踏まえて、その受け皿として「エデュプレイ・インターナショナル」(※)を創設し、3年ほど前から本格的に活動しています。特にコロナ禍明けの最近は、帰国子女の小学校受験を希望する方が増えているように思います。

(※) 海外在住の方のための小学校受験サポート「エデュプレイ・インターナショナル」
現在海外に赴任なさっている方で、小学校受験をお考えの方は多くいらっしゃることと思います。
特に皆さまがお困りになるのは、
(1)受験情報が得られない (2)家庭学習の教材の入手が困難である (3)家庭学習の進め方がわからない (4)願書・面接対策
といった点のようです。また、いざ日本に帰国して教室に通い始めても、日本語による指示の内容や言葉の意味が理解できない、自分の気持ちや考えを日本語で表現できないというお子さまも少なからずいらっしゃいます。

こぐま会では、こういった皆さまからのご相談やご要望にお応えするためのサービスを提供しております。海外からでも、当サポートサービスに則って正しく準備していただければ、たとえ海外からでも合格は十分可能です。直前の帰国でもできる限りのサポ-トをさせていただきます。


2日目は、発達診断テストと模擬授業を行いました。KOMABAキッズの新年少~新年長の在籍生を対象に、恵比寿本校で行っている発達診断テストの基礎部分をまとめて、カードやペーパーを使ったチェックテストを行いました。日本語の理解が十分ではないお子さまも参加されているため、設問は丁寧に行いました。最後の答え合わせの際には保護者の皆さまにも教室にお入りいただき、どのような学びをするのが大事かを実際に見ていただきました。教え込みではなく、実際に子どもの考える力を育てるために何が大事かを感じていただけたと思います。その後、今度は新年中・新年長の一般生を対象に恵比寿本校のゆりクラス・ばらクラスの内容でモデル授業を行いました。事物を使った指導に多くの皆さまが関心を寄せ、ペーパーだけの学習ではだめだということが伝わったのではないかと思います。

3日目は、シンガポール人を対象とした「Kuno Method Singapore」の教室を見学しました。多くの教育機関が集まるビルの一角に構えた教室に、子どもたちが元気に通ってきていました。現地の特殊な教育事情があるため、保護者の教育要求に応えながら、KUNOメソッドに取り組む子どもたちを見ていると、言葉の壁を越えて、幼児の考える力はしっかりと育てることができるという確信を持ちました。楽しみながら学ぶ子どもたちを見ていると、「事物教育」の意味をいまさらながら確認できました。

シンガポールの教育は、初等学校卒業試験の結果で進学・就職の進路まで決まる制度「ストリーミング制」が有名です。その結果、シンガポールは国際的な学力調査である「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」や「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」等で高い順位を記録してきました。
中等学校は、初等学校卒業時の試験の成績によって次のような3つのコースに振り分けられてきました。
  • Express
  • Normal(Academic)
  • Normal(Technical)
こうした能力別クラスの徹底によって、QSアジア大学ランキングにおいて2019年から2022年までの4年間、シンガポール国立大学が第1位を獲得してきましたが、シンガポール教育省は、2024年から段階的にストリーミング制を廃止し、長所を伸ばし誰もがあきらめずに学べる新制度を導入するようです。

日本とは異なるこうしたシンガポールの教育事情の中で、KUNOメソッドがどれだけ力を発揮できるか、現地の教師の方々に頑張っていただかないとなりませんが、必ず結果を出せると確信しています。

※次回の更新は9月22日です
 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

読み・書き・計算はまだ早い!

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
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