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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第3回 全国幼児発達診断テストが無事終了しました

第833号 2022年10月21日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 10月5日~10日までオンラインで行われた「第3回 全国幼児発達診断テスト」 の結果がまとまりましたのでご報告いたします。参加された皆さまご自身の成績や分析に関しては、マイページにてご確認ください。ここではそれをご覧いただくための参考として、全体の様子をお伝えします。今回は3,928名のお申し込みをいただき、2,996名の子どもたちがテストに参加しました。回答入力までしていただいたのは2,557名です。内訳は、年長児1,615名、年中児942名です。今回の平均点は全体で54点(年長60点/年中45点)で、第1回目の67点、第2回目の62点と比べるとかなり下がりました。領域別にみると、言語と図形の平均点は前回と同じでしたが、未測量・位置表象・生活 他は前回よりかなり難しく、数の問題も前回よりやや難しい内容でした。年長児の学習進度に合わせて問題を作ってありますし、今回は3回目ということで応用課題が多く出されています。その結果、年長児でも平均点が60点という難易度でした。小学校入試を目指す子どもたちにとっては、少し易しかった面もありますが、通塾していない子どもたちの平均点が通塾する子どもたちと比べても -7%前後であることを見ると、意図的な学習をしなくても、生活や遊びの中で培ったものの見方が反映されて、ある程度の問題が解けることも判明しました。そのことが教科学習の前提になっているわけですが、見方を変えれば「教科学習」につなげる学力の橋渡しに関しては、やはり意図的で目標を持った学習が必要なこともわかります。遊びの中に学習のチャンスがあることを認識しつつ、やはり遊びだけでは十分な橋渡しができないということが判明したということで、今回のテストは意味があったと思います。

さて、今回は以前のコラムでも事前にお知らせしたように、次の20問で行いました。それぞれの問題の正解率を表の右側に表示していますので参考にしてください。

テスト内容正解率
年中年長
1. 逆対応残っているジュースの量を見て、飲んだジュースの量を系列化する38%48%
2. 移し替えどの入れ物からどのコップにジュースを移したのかを考える37%47%
3. 四方からの観察3つのものの見え方をその場に行かないで判断する58%81%
4. 10の構成10をテーマとした数の増減70%86%
5. 方眼を使った数の構成縦横に並んだ3つのマスの中の数を合わせて10にするために空欄を埋める48%60%
6. 展開図組み立てるとどのつみ木になるかを判断する64%79%
7. 対称図形4つ折りの折り紙を切って開くと、どんな形ができているかを判断する93%98%
8. 図形系列並び方の法則性を踏まえて空欄を埋める25%36%
9. 回転推理観覧車の動きを予測する29%46%
10. 魔法の箱数の変化の法則性を読み取り、いくつになって出てくるかを考える36%55%
11. つりあい(1)つり合うためには、反対側にいくつ載せればよいかを考える25%41%
12. つりあい(2)A・B・Cの関係を理解し、正しくつり合うものを探す24%41%
13. 飛び石移動移動の約束を理解し、どこで出会うかを考える28%38%
14. 地図上の移動お話を聞いて、指示どおりに地図上を動く39%48%
15. 社会的常識標識の意味を考える67%83%
16. 数の変化約束を理解し、3つの箱を通ったら最後はいくつになるかを考える50%73%
17. 数の増減話を聞いて、数の変化を暗算する25%44%
18. 重ね図形(1)上下に重ねたときどんな形ができるかを考え、実際に描いて表す62%80%
19. 重ね図形(2)半分に折って重ねたとき、どんな形ができるか考える36%54%
20. 話の内容理解お話を聞いて、話に合う絵を探す64%78%

年長児で平均点が50%に届かなかったものは以下の6つです。(  )内は年中児

 年長(年中)
1. 逆対応・移し替え47%(37%)
2. つりあい41%(24%)
3. 飛び石移動 38%(28%)
4. 数の増減44%(25%)
5. 図形系列36%(25%)
6. 回転推理46%(29%)

また、年中児で平均点が50%を超えたものは以下の通りです。(  )内は年長児

 年中(年長)
1. 四方からの観察58%(81%)
2. 10の構成70%(86%)
3. 魔法の箱50%(73%)
4. 展開図64%(79%)
5. 対称図形93%(98%)
6. 重ね図形(1)62%(80%)
※半分折は36%(54%)
7. 社会的常識67%(83%)
8. 話の内容理解64%(78%)

こうした結果を踏まえ、今回のテストを総括してみました。
  1. 年長児にとって難しかった問題の多くは、論理性が求められる課題。これが小学校入試でもよく問われ、難問になりやすい
  2. 図形系列以外は、生活や遊びの場で経験することを題材にした問題である。こうした生活課題の取り組みが、今後学習素材としては大事になる
  3. 未測量領域の逆対応やつりあいの問題は考える力が求められ、飛び石の問題は作業能力が求められる
  4. 観覧車の問題は、予想どおり回転方向とは逆に戻って考える問題ができなかった
  5. 年中児がよくできた問題は、図形関連が多い。日常的に遊びとして行われていることが理解する前提として大事であることがわかる
  6. 年長児にとっても難しい「四方からの観察」や「魔法の箱」は、年中児でも予想以上によくできていた

年長児にとっても難しい問題が多い応用段階の学習課題(「ひとりでとっくん365日」9~12号)が出された今回のテストは、年中児の皆さまにとっては予想した通り難しかったと思います。しかし、この出来なかった課題こそが今後の学習課題になるわけです。今後1年間の学び方を間違えないで一つ一つ学習を積み上げれば、必ず理解できるようになります。解き方を教え込むようなことは決してしないでください。

もうすぐ都内の入試も始まります。私立・国立小を受験される皆さまは、もう一度平均点が50%に届かなかった問題を復習してください。難問といわれる問題は、そこから関連問題として出題されるはずです。


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