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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第3回 全国幼児発達診断テスト 問題別出題意図の解説

第834号 2022年10月28日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 10月5日~10日までオンラインで行われた「第3回 全国幼児発達診断テスト」の結果については前回のコラムで報告しましたが、今回は参加された皆さまの今後の学習の参考にしていただくために、出題意図について問題ごとに簡単な解説をいたします。特に年中児の皆さまが、これから小学校入学までの1年間をかけて身につけるべき内容について知っていただくことは、大変重要なことだと思います。ペーパー学習だけでなく、生活や遊びの中にある基礎体験をたくさん積んで、小学校で学ぶ教科学習の土台をしっかり身につけてください。

1. 残った量から飲んだ量を推理する(逆対応)
【正解率】年長児48%:/年中児:38%
極めて生活的なテーマですが、いざ聞かれるとなると難しい問題です。たくさん飲めば飲むほど残りは少ないという関係性の中で、残った量を見て飲んだ量を系列化する問題です。たくさん飲めば残りは少ないし、少ししか飲まなければ残りは多いという関係ですから、一番たくさん飲んだもの、一番少なく飲んだものは生活感覚でわかります。しかし、「~番目にたくさん飲んだもの」「~番目に少なく飲んだもの」を探すことはかなり難しい問題です。実際の場面を経験させながら、逆対応の考え方を身につけてください。

2. 量の移し替え(逆対応)
【正解率】年長児:47%/年中児:37%
1.と考え方は同じで「逆対応」の問題です。たくさん移せば移すほど残りは少ないという関係です。一番たくさん移したものや一番少なく移したものを探すのはわかりやすいのですが、3番目・4番目になるとかなり難しくなり、関係性を捉える思考力が必要となります。ここでも生活感覚で解ける問題と、論理で解かなければならない問題とに分かれます。

3. 四方からの観察
【正解率】年長児:81%/年中児:58%
机の上に置かれた3つのものを、違う場所から見たらどう見えるかを考える問題です。自分からの見え方だけでなく、違う視点でものを見ることができるかが問われます。この「視点を変えてものを見る」ということが、論理を育てるためには欠かせない重要なポイントです。

4. 数 10の構成
【正解率】年長児:86%/年中児:70%
生活場面のお話を聞いて、10の構成に関する問題を解く課題です。お話を聞いて数の変化を捉えられるかどうか・・・暗算能力が求められます。将来のひき算につながる問題ですが、最後は「逆思考」を求められ、やや難しくなります。

5. 方眼を使った数の構成
【正解率】年長児:60%/年中児:48%
方眼の性質を使い、縦の3つを合わせても横の3つを合わせても、どこも10になるように空欄を埋める問題です。2つ続けて空欄になっている場合は見方を変えないといけませんので、そこができるかどうかがポイントです。

6. 展開図
【正解率】年長児:79%/年中児:64%
出来上がった立体と組み立てる前の展開図を結びつける課題です。円柱や円錐・三角錐などの展開図は難しい面もありますが、それぞれの立体が持っている面の特徴に気づけば、それほど難しい課題ではありません。ご家庭で不要になった箱などを広げて、どんな形になるのかを見せてあげてください。今回の問題は全体としてよく理解できていました。

7. 折り紙を使った線対称
【正解率】年長児:98%/年中児:93%
4つ折りの折り紙を切って開いたときどんな形ができるかどうかを考える問題です。子どもたちも折り紙を使った遊びとして実際に経験したこともあるはずで、その経験が生きているように思います。今回のテストで年中・年長とも一番よくできた課題です。

8. 図形系列
【正解率】年長児:36%/年中児:25%
並び方の法則性を発見し、空欄を埋める問題です。言語化できるものは口ずさむとできますし、それができない場合には指送りで探す方法がありますが、今回は最初の部分で消えてしまっているところがあるため、口ずさむこともできず、問題としてはかなり難易度が高くなっています。

9. 観覧車
【正解率】年長児:46%/年中児:29%
観覧車には2つの典型的な質問があります。例えば今回の場面では、「ウサギがキツネのところに行くと、キツネはどこに行きますか」という基本問題と、「ウサギがキツネのところに来ると、ウサギのところには誰がやってきますか」という応用問題です。後者の問題を解くためには、回転方向と逆回りに考えなくてはなりませんが、どうして逆回りに探すのか、その意味をしっかり理解する必要があります。

10. 魔法の箱
【正解率】年長児:55%/年中児:36%
数の変化の法則性を発見して、それを最後に入れた数に当てはめる問題です。左の問題は「倍になる」と読み取れるかどうか、右の問題は「半分になる」と読み取れるかどうかが問われます。最初の例示で変化の法則性を決めつけてしまわないで、2番目に入れたものの変化もよく見ることが大事です。

11. つりあい
【正解率】年長児:41%/年中児:25%
リンゴ2個とミカン3個がつりあうという関係を捉え、リンゴからミカンの数を聞く問題と、ミカンからリンゴの数を聞く問題の両方をしっかりやってください。リンゴからミカンはかけ算の考え方、ミカンからリンゴはわり算の包含除の考え方で、小学校2~3年の課題につながります。

12. 置き換えを伴うつりあい
【正解率】年長児:41%/年中児:24%
つりあいの問題という意味では11.と同じですが、違うところは、リンゴとミカン、ミカンとイチゴの関係を踏まえ、リンゴとイチゴの関係をミカンを仲立ちとして考える点です。置き換えの発想ができるかどうか、そこがポイントです。また、リンゴからイチゴを聞く問題よりも、イチゴからリンゴを聞く問題のほうが難しいと思います。

13. 飛び石移動
【正解率】年長児:38%/年中児:28%
将来の「旅人算」につながる内容ですが、一方で作業能力が問われる問題です。追いついたり出会ったりする場所を探すために、コマを動かして考えなくてはなりませんが、間違いのほとんどがそのコマの動かし方が正確にできないところに起因しています。その意味で、約束通りにコマを動かす作業能力が問われる問題です。

14. 地図上の移動
【正解率】年長児:48%/年中児:39%
「地図上の移動」の難しさは2つあります。一つはどちらから交差点に入ってくるかという点です。自分と右・左が反対になる場合がありますので、そこができるかどうかがポイントです。もう一つは、移動の際にお話を最後まで聞いて動く場合と、お話を聞きながら動く場合とがありますが、「聞きながら動く」場合のほうが間違いが多くみられるということです。記憶する要素はないのですが、話を聞きながら交差点での曲がり方を即座に判断しなければならないため、向こう側から交差点に入ってくる場合の右・左の判断が即座にできないと話についていけなくなり、間違いやすいのです。

15. 標識
【正解率】年長児:83%/年中児:67%
社会的常識の問題として、今回は標識やマークの意味を問いかけています。普段の生活の中でも、見かけた時にはそれぞれが何を表しているのかをしっかり伝えてあげるようにしてください。

16. 数の変化
【正解率】年長児:73%/年中児:50%
魔法の箱は変化の法則性を自分で発見しなければなりませんが、今回の問題はすでに変化の法則性は決められていて、それに当てはめて数がどう変化するかが問われています。たし算・ひき算の基礎になる問題です。増えたり減ったりする数の変化を暗算でできるようになるとよいでしょう。

17. 数の増減
【正解率】年長児:44%/年中児:25%
たし算・ひき算につながる「数の増減」の問題です。お話を聞いて場面をイメージし、答えられるかどうかです。今回は、それに一対多対応のかけ算の考え方が絡めてありますので、より複雑です。数の増減の部分は暗算で、一対多対応の部分は書きながら考える(例えば鳥の場合は、1羽分・・・2、2羽分・・・2・・・を繰り返す)という方法で解決できればよいと思います。

18. 重ね図形
【正解率】年長児:80%/年中児:62%
2つの形を重ねて新しい形を作る問題です。そのまま上に重ねますので、それぞれの線がどのように表れるかをしっかり捉えられればできるはずです。2本が重なって1本になる場合もありますが、今回の問題ではそれはありませんので、やさしかったと思います。

19. 重ね図形(半分折)
【正解率】年長児:54%/年中児:36%
重ね図形のもう一つは、半分折で重ねるパターンです。この場合は、位置や方向が変わりますので、そこが捉えられるかどうかがポイントです。どちらからどちらに重ねるか、動かない面はどちらなのかをしっかり把握しないといけません。選択肢から選ぶ場合は、消去法で答えを見つけ出すことも可能です。また図形であれば、動かない面に動いてくる面の形を描き込む方法も身につけてください。

20. 話の内容理解
【正解率】年長児:78%/年中児:64%
お話を聞いて、その場面に合う絵を4枚の絵の中から選ぶ問題で、難易度としてはあまり高くありません。今回の問題で言えば、「白い屋根」「大きな木」「隣の八百屋さん」が判断基準になると思いますが、19.と同様に消去法で考えるやり方も身につけてください。話の内容理解は、基本的には次の4点が聞かれることが多いようです。
(1)登場人物 (2)順序  (3)数  (4)登場人物と物との関係づけ
ただし、話の内容理解を記憶の問題としてしまわないで、「内容を理解する」ということを基本に学習してください。

以上、20問の出題意図や難易度、学習方法について簡単に解説しました。これからの家庭学習にぜひお役立てください。


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