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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第2回 全国幼児発達診断テストの実施に向けて

第815号 2022年6月3日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 5月15日に実施された「第1回 全国幼児発達診断テスト」の結果分析は、参加された皆さまのもとに届きましたでしょうか。全体総括は前回のコラムで書かせていただきましたが、個人の得点と分析に関しては、登録していただいた「マイページ」にてお知らせしています。結果分析を踏まえ、日々の活動や学習に役立ててください。私たちもこの貴重なデータをカリキュラムや教材づくりに生かしていこうと思います。今回のテストでは、特別な訓練やペーパーワークをやっていたかどうかで大きな差が生じないように、問題選択には相当気を使いました。年長児の平均点が7割前後になるような難易度にするにはどうしたらよいか。新年度が始まったばかりの5月という時期の子どもたちの発達度をどう判断するか。年長児の学習進度に合わせて作ったテスト内容を、年中児がどこまで理解できるか。その結果には、幼児の指導に当たる私たち教師にとっても多くの学びがありました。その中で特にお伝えしたいのは次の点です。

  1. 幼児教室に通って特別な学習をしていない子どもたちでも十分対応できたこと
  2. 難しすぎるのではないかと心配していた年中児にとっても、意味のあるテストであったこと
  3. 年長児と年中児の理解度の差によって、年中から年長にかけての1年間に意図的に行うべき教育課題が明らかになったこと

こうした分析をもとに、第2回目のテストを準備しています。第1回のテスト実施時に、当日のご都合でご参加いただけなかった方も多くいらっしゃったようですので、次回はできる限り大勢の皆さまにご参加いただけるよう、受験期間を7月14日(木)・15日(金)・16日(土)の3日間に伸ばしました。テスト内容に関しては、KUNOメソッド「セブンステップスカリキュラム」のステップ3~4の内容に関する課題を用意します。ご家庭で「ひとりでとっくん365日」を使って学習されている皆さまは、05~08までの内容を見てください。難易度はA~Cまでの3段階を設けていますが、ステップ学習で進んできている内容ですので、1回目より難易度は上がるはずです。設問の意図が十分理解できれば特別な学習を必要とせず、普段の遊びや生活の中で培っている「考える力」によって十分対応できる問題ですので、ぜひ挑戦してみてください。第1回のご案内の際にもお伝えしましたが、このテストは小学校受験のための模擬テストではありません。受験に関係なく、小学校から始まる教科学習の基礎がどう身についているかを診断するもので、このテストを通して、どんな学びをすれば小学校の教科につながっていくかを参加者の保護者の皆さまに見ていただきたいという想いを強く持っています。今、幼児期と小学校をどうつなぐかの議論が、文部科学省の「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」 で続いていますが、理念を並べただけの抽象的な議論ではなく、こうした具体的な学習課題を示さなければ、子どもに接する現場の教師が何を目標に教育活動をすればよいのかがつかめません。こうした診断テストで明らかになった子どもの「考える力」の現状をしっかり把握して、その解決のために日々の教育活動をどうするかを考えるべきです。遠山啓氏が主張した「原教科」の考え方と内容をしっかり踏まえて、幼児期の教育課題を探すべきです。非認知能力にかかわる項目だけでなく、認知能力に関しても、幼小をつなぐしっかりとした内容を考えないと世界の動きについていけません。「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」のような抽象的な議論では、何の解決にもなりません。スタートカリキュラムがなぜ生活科の内容なのかは、子どもたちの発達の現状を見ればよく理解できますが、国語や算数につながっていく基礎を避けては通れません。数字に興味を持つだけで数概念が身につくはずはないのです。文科省が触れようとしない「幼児期の子どもたちの学力」の実態を明らかにしないで、教育課題が見つかるはずもありません。私たちは、誰もが避けて通ってきた幼児期の子どもたちの考える力を具体的に明確にし、教科学習を支える土台がしっかりできているかを明らかにするために、今回のテストを実施しているのです。幼稚園や保育園で行わないのならば、最後は家庭の責任で取り組まなければ、だれも子どもたちの学力に責任を持ってくれません。架け橋委員会の議論を見ていると、そんな想いを強く持たざるを得ないのです。

さて、第2回目で行うテストの内容を簡単に紹介いたします。

学習領域内容
 1. 未測量量の対応づけ順対応
 2. 未測量広さくらべ個別単位の考えかた
 3. 位置表象上下 - 左右関係方眼上の位置
 4. 数等分量の三等分
 5. 数包含除わり算の考え方
 6. 図形同図形発見同じ絵を探す
 7. 図形模写点図形
 8. 言語話の内容理解差異発見
 9. 生活 他分類二重分類
10. 生活 他分類仲間あつめ
11. 未測量関係推理話による三者関係の理解
12. 未測量重さくらべシーソーの四者関係
13. 位置表象四方からの観察視点を変えてものを見る
14. 位置表象四方からの観察つみ木を使った課題
15. 数一対多対応かけ算の基礎
16. 数包含除わり算の基礎・まとまりを作る
17. 図形図形構成必要でないものを探す
18. 生活 他法則性の理解同じ並び方を探す
19. 生活 他法則性の理解空欄を埋める
20. 生活 他法則性の理解回転推理

小学校に入ってから始まる教科学習の基礎がどれだけ身についているかを問いかけています。こうした一つ一つの課題を通してみていただくと、その学びの基礎は子どもたちの遊びや生活の中にあるということと、普段どんな点に気をつけて子育てをしていけばよいのかということがわかるはずです。遊びや生活場面でどんな経験をさせ、どんな声掛けをすればよいのかをご理解いただけるはずです。思考力がどこまで身についているかを判断できる大事な機会ですので、ぜひご参加ください。

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