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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試速報(6) 図形問題に変化あり

第795号 2021年12月17日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校入試の問題は、昔から数・図形・言語領域が大半を占めていました。その中で最近は、前回のコラムでも書いたように数の問題が総合問題として出されることが多く、一場面の絵を見ていろいろな質問に答える形式になっているため、問題数は変わらないままペーパーの枚数が減りました。反面、言語領域の課題は話の内容理解だけでなく、言葉の理解に関する問題が増え、結果として言語の問題数は増えました。コロナ禍以前の数年間は図形問題が増える傾向にありましたが、今年の女子校の入試を見る限り出題数は減っています。女子校10校のうち、図形問題を出さなかった学校が4校もあり、これは特筆すべきことです。出題された学校においても、従来から多く出されていた「図形構成」「図形分割」の課題が減り、ここ数年の傾向である「対称図形」「重ね図形」「回転図形」といった、難問の部類に入る課題が多く出されるようになりました。「出題数は減ったものの、図形課題の中では難しい課題が出された」傾向だったように思います。ではどんな問題が出されたか。実際の問題を見てみましょう。

2022年度入試 「折り紙の線対称(E校)」
  • 左のお部屋のように折り紙を折って、白い部分をハサミで切りました。折り紙を開くとどのようになりますか。右のお部屋から選んでをつけてください。

折り紙を使った問題としては、よく出されているものです。4つ折りの真四角と三角からある部分を切り、それを開くとどんな形に切れているかを問う問題です。真四角はよく練習していますので簡単にできると思いますが、4つ折りの三角を切るとなると結構難しくなります。解き方としては、右のお部屋の開いた折り紙に対角線を入れ、その一つが見本の切り方になっているかどうかで探すのがいいと思います。

次に重ね図形の問題を見てみましょう。

2022年度入試 「重ね図形(A校)」
イチゴのお部屋で練習してみましょう。ここにある形を右から順に下になるように重ねていくと、どうなりますか。をつけてください。そうですね、三角が下になるので、右のお部屋の左の形にがつきます。
  • 同じように、左のお部屋の形を重ねるとどうなりますか。それぞれ右から選んでをつけてください。

重ね図形としては特異な問題だと思いますが、知能テスト的な重ね図形の問題です。お手本で示されたように、右の図形が左の図形の下に入り込むという意味が分かれば問題ありません。

2022年度入試 「重ね図形(F校)」
  • 左のお部屋の2つの形は透明な紙にかかれていると考えてください。この2つの形をそのまま重ねると、どんな模様ができますか。右のお部屋の中から選んでをつけてください。

この問題も、重ね図形としては基本問題です。前者と違い、周りの枠の大きさが同じでそれが重なるということですから、イメージしやすい問題です。重ね図形には、そのまま上下に重ねる場合と半分に折って重ねる場合と2つの重ね方があります。今回はより簡単な上下に重ねる問題ですから、みなさんできたと思います。

次に回転図形を見てみましょう。

2022年度入試 「回転図形(B校)」
  • 左のお部屋の絵が、矢印のほうにその数だけ転がると、どのようになりますか。右から選んでをつけてください。

この問題は回転図形の基本です。矢印の数だけ右に回すと絵がどんな向きになるかを判断する問題です。回る数が多くなれば難しくなりますが、この問題では2回までですし選択肢がありますから、1回ずつ送って考えればまず問題なくできるはずです。

もう一つ類似した問題が他校で出されています。こちらのほうが、回転する数が多かったり右左両方に回転するため、やや難しくなります。

2022年度入試 「回転図形(A校)」
1番上のお部屋で練習してみましょう。左の形が矢印のほうにその数だけ回るとどうなりますか。そうですね、右に2回まわるので右の形にがつきます。
  • 同じように、左のお部屋の形が矢印のほうにその数だけ回るとどうなりますか。それぞれ右から選んでをつけてください。

指示された図形が右に2回もしくは3回回るとどのようになるかを選ぶ問題です。この問題も、回転図形の中では基本となります。回転する回数が多ければ多いほど難しくなりますが、「右に3回は左に1回と同じ」と置き換えができれば簡単になります。選択肢から選ぶ場合は、右に1回、右に2回・・・と回して選ぶものがありますから、1回ずつ送っていけば右に3回もすぐに探せるはずです。ただ問題によっては描かせるものもありますので、「右に3回=左に1回」「左に3回=右に1回」ということがわかれば簡単に正解できるはずです。最後の問題は、右に2回回し、引き続き左に1回回す問題ですが、これはやや難しい問題です。ただこの場合も、右に1回回したことと同じだという置き換えができれば、答えはすぐ出るはずです。女子校以外でも、今年は回転図形の問題が出題されています。

2022年度入試 「回転図形(共学A校)」
  • 左のお部屋のが右のところに来たとき、中の形はどうなりますか。右のお部屋から選んでえんぴつでをつけてください。

また、今年初めて試験を行った東京都立立川国際中等教育学校附属小学校の入試でも、同図形発見の問題の中に回転の要素を含んだ次のような問題も出されています。

2022年度入試 「同図形発見(東京都立立川国際中等教育学校附属小学校)」
  • 白く空いているところに、白いところが見えなくなるようにぴったりはまる形を探しています。隙間なくぴったりはまる形が、隣の4個の形の中に1個だけあります。その形を大きくで囲んでください。

回転の要素を取り入れた問題は、いろいろな形になって出題されています。つみ木を使った回転が基本ですが、実物を動かす経験があるかないかで、イメージ化する能力に差が出てきますので、できるだけ実物を回転させて考える経験を積んでください。

今年の女子校の問題を見る限り、図形問題が減った印象を受けますが、その原因は何でしょうか。入試問題全体がやさしくなった結果なのか、言語領域の問題が増えた結果なのか・・・いろいろ考えられますが、コロナ禍前までは図形の問題が増え、なおかつ難問化してきた経緯がありますので、今後の動きを注意深く見守っていかなければなりません。学校側の立場に立てば、図形問題はオリジナルな問題を作りやすいはずですから、このまま減少し、やさしくなっていくことは考えられません。基本となる問題をしっかり学習する姿勢は持ち続けてください。


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