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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

家庭学習についてのご質問にお答えします

第770号 2021年6月4日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 5月8日のオンライン講演会では、チャット形式でご質問を受け付けました。その中のいくつかについては当日お答えしましたが、多くのご質問をいただいたためにすべてに対応することはできませんでした。前回と前々回のコラムで総括的にお答えさせていただきましたが、ご質問は個別具体的ですので、今回はそれにできるだけお答えしたいと思います。主に家庭学習の方法についてのご質問を集めました。

【質問1】
3歳児の母です。普段「どうしてそう思ったの?」など尋ねても「何となく」「わかんない」という答えしか返ってこず、本人の中で言語化できていないと感じています。どのような働きかけをすれば言語化が進むのでしょうか。

こぐま会で言語化させるという方法を重視しているのには、いくつかの理由があります。
  1. ペーパーでマルがもらえればいいのではなく、本当に理解しているかどうかを言語化によって確認する
  2. 子どもの解き方を大人が知ることによって、その解き方が将来にわたって有効かどうかを判断できる
  3. 言語化することによって、子ども本人が自分の考えの間違いに気づくことがある
  4. 自分が考えたことや感じたことを言葉で表すことのトレーニングになり、コミュニケーション能力を高めるきっかけになる

以上の理由により「どうしてそう思ったの?」と問いかけるのは、幼児期の教育方法としては大変大事なことです。しかし私たちの経験では、論理的に道筋を立てて説明できるのは年中児以降だと考えています。それまでは、自分の考えを道筋立てて説明するのは困難ですが、うまく言えなくても「どうしてそう思ったの?」と聞くことには意味がありますので続けてください。3歳児の場合、どのように説明したらよいかわからないという迷いがあり、「わからない」を連発するのだと思います。言葉にならないだけであって、考えている道筋は正しいかもしれません。そうした場合は、子どもの考え方を予想して「こう考えたの?」「違うんだったらこんな風に考えたのかな?」というように、大人が代わりに言語化してあげ、その判断を子どもにしてもらう・・・というところから入っていくとよいと思います。
私も、授業中に誰も手を挙げてくれなかったときは、考え方の典型を示し、その中から自分で選ばせる方法をよく取ります。そんなやり取りをしていると必ず手が挙がってきます。本当に理解していなくても、マルをもらえてしまうことがないように、可能な限り言語化はしてください。
ただ、今回のご質問のように「わからない」と答えるケースも多いと思いますが、話すきっかけづくり、対話教育のきっかけにぜひ実行してください。

【質問2】
問題に取り組むうえで、子どもが理解してないとき、どこまでヒントを出すのがよいでしょうか?答えに誘導するほど出してもいいのか、もっと漠然とよく見てごらん、というような言い方がいいのか、教えていただければと思います。

【質問3】
解答ややり方を教えようとすると嫌がる場合は、どうしたら良いでしょうか。

間違えたり、理解できないときにどのようにしたら良いかという質問はよく受けますが、10人いれば10人の子どもの状態を考えて解決法を見つけてあげなくてはいけませんので、一般論としてこうすればよいという方法はありません。ただ、原則を理解していただくと工夫の仕方もあると思いますので、それをここに挙げます。
  1. 間違いには必ず原因があるので、それがなんであるかを明らかにする
  2. 分からなくなったときは、一歩戻って基本を確認する
  3. その基本の繰り返しで、逆に一歩先の問題に挑戦する
  4. 問題を理解するまでには、いくつかのステップを踏む必要があるので、分からないからといって解き方を教えてもその場限りで身につかないことが多い。それよりも、できなくなってしまった原因を子どもに自覚させるように持っていく
  5. 間違えてしまった原因がつかめれば、それを取り除く努力が必要。いま取り組んでいる問題の一歩前は何か、一歩先は何かを常に考えてあげる。一歩先があまりにもかけ離れたものであると、子どもはついてこない
  6. 解き方を教えても応用がきかないので、一緒に考えてあげる姿勢を持つことが大事。その際どんなものの見方が身につけば解決するかの見通しは持っておく必要があるので、別の問題を用意して取り組ませることも必要
  7. 教室でも間違いを指摘し、解く道筋を伝えようとしても、嫌がる子は大勢いる。自分で解けたという喜びを感じさせてあげるためにも、本人の主体性を大事にしながら声掛けをしてください

【質問4】
本人の学びたい欲が強く、先取り学習をしていますが、学校に行くようになって面白くないという時がこないか心配しています。

【質問5】
小学校に入学してから原教科の学習をし、それから教科書を使った学習をするのでは遅いのでしょうか。

幼児期の学びは、早すぎても遅すぎてもいけません。その時期にしかできないことがありますし、最適な時期を逃しては教育として意味がありません。「最近接領域」という、今の力で少し背伸びしても解決できる課題を与え続けることが大事だという考え方があります。幼児期の学習内容において「早ければよいことだ」として、先取り教育をすることに意味を置く考え方がありますが、それは間違いです。小学校で学ぶことは小学校に入ってからやればいいことです。深く考えさせるという意味での先取り学習であれば大いに結構ですが、小学校で学ぶ内容を易しく降ろして学ばせることにあまり意味はありません。学習が楽しくなるのはより深い学びをどうするかということですので、早いことがよいことだという発想は捨ててください。一度やったこと、もう解決していることを再びやるというのは興味関心が半減してしまいますので、学校に行って面白くないとなってしまうことは当然予想できます。

また「原教科」の考え方は、教科前の基礎教育として意味があるものです。小学校に入学したら教科書を使った学習に専念してください。幼児期の学習はそんなに難しくないから、わざわざやらなくてもいいのではないか、小学校に行けばみんなわかることだから・・・と考える方も少なからずいらっしゃいます。しかし、だからといって学びのチャンスを逃してはなりません。「学びが学びを呼ぶ」と考えてください。ひとつの学びが次の学びにつながり、系統性を持った深い学びにつながっていくからです。

初めての学びや初めての経験には、最適な時期があるのです。それを逃さないようにするためには、子どもの成長を系統づけて見る眼が必要です。

こぐま会代表 久野泰可 オンライン講演会のご案内
「 幼児期の基礎教育と小学校受験 」
2021年6月27日(日) 10:00~11:00 LIVE配信!(無料)
【講演内容】
1. 最近の小学校受験の傾向
2. コロナ禍の入試で変化したこと・しなかったこと
3. なぜ、ペーパートレーニングだけではだめなのか
4. 受験のための学びが、将来の学習の基礎づくりになるように

※ご視聴にはお申し込みが必要です
※後日録画配信はありません

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