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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

数の出題傾向が変化し始めている

第692号 2019年10月4日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月29日(日)は、流山おおたかの森に開校する「森のこぐま」(才能育英会)  で、入会希望者の皆さまに、KUNOメソッドの内容と方法についてお話しさせていただきました。つくばエクスプレスで「流山おおたかの森」まで行きましたが、今回のお話がなければ、きっとこんな素敵な街を知らないまま過ぎていったのではないかと思います。町並みは整備され、都会のビルの中で生活している私にとって、ほっとする感じの町並みでした。若い子育て世代の皆さまが大勢生活され、行政としても子育てしやすい街づくりを目指していると伺いました。こぐま会の教育が、受験対策としてだけでなく、幼児期の基礎教育として意味を持つかどうか、こうした街での実践に期待し、応援していきたいと思っています。

さて、9月第2週から始まっている総まとめ「入試直前予想問題」の第3回目は、数の領域の総復習です。数の領域は、入試問題の中心と言っても過言ではありませんが、出題される問題のペーパーだけの枚数でいうと昔より減少しています。決して問題数が減っているわけではありませんが、使用するペーパーの枚数が減っているのです。それには理由があります。私たちが「数の総合問題」と呼んでいるとおり、生活の一場面の絵を使い、さまざまな数の領域の質問を、その1枚で済ませているからです。従来は、1単元1枚のペーパーを使っていましたが、最近では、一つの生活場面の中で、「分類計数」「数の多少」「一対多対応」「等分」「数の増減」といったさまざまな問題が出されています。取り組む子どもたちにとって難しいのは、質問に対して、一場面のどこの数を調べて答えを導き出したらよいかを考えなければならない点です。質問の意図をしっかり把握し、一場面の中からそれに関係する数を拾っていく作業は、間違いが起こりやすい作業です。観察力、集中力が問われる出題方法です。そこで問われる内容は、私たちがセブンステップスカリキュラムで学習しているすべての領域から出されます。これまでステップ学習では、次のような内容を学習してきました。

ステップ1:計数、同数発見、5の構成
ステップ2:一対一対応
ステップ3:等分
ステップ4:一対多対応
ステップ5:10の構成、交換
ステップ6:数の増減、数のやりとり

これらのステップ学習は、将来の四則演算の基礎を身につけるための学習だと考えていただければよいと思います。その上で、入試問題はいろいろな数の操作が複合されて問題がつくられています。

  1. たし算の基礎:数の合成/数の増減
  2. ひき算の基礎:数の構成/一対一対応/数の増減
  3. かけ算の基礎:一対多対応/交換
  4. わり算の基礎:等分除/包含除/交換

これまで行ってきたこうした学習を踏まえ、以下の内容で総まとめを行いました。

  1. 数の構成
  2. 数の等分
  3. 数の総合問題-1
  4. 数の総合問題-2
  5. 数の多少とその応用
  6. 一対多対応とその応用
  7. 数の増減とその応用
  8. 数のやり取り
  9. 交換・置き換え
  10. 消去の考え方

この中のいくつかを紹介しましょう。
「数の構成」の最近の問題は、1種類のものの合成ではなく、2種類、3種類を同時に行うもので、解き方の論理性が求められます。

1. 数の構成
  • 左のカゴの中には、カキが2個、キノコが3本、クリが5個入っています。右の上のお部屋と下のお部屋の数をあわせると、このカゴと同じ数になるように青で線結びしてください。

1種類でないだけに、解き方に工夫が必要です。一つのものに注目し、そこから解法の糸口を探すしかありません。
ところで、「一場面を使った数の総合問題」というのは例えば次のような問題です。

3. 数の総合問題
太郎君と花子さん、メガネをかけた次郎君が、山へハイキングに来ました。秋なのでキノコやクリの実や木の実がたくさんあります。
  • 右側に落ちているクリよりも、2個多いクリが木の中に隠れています。木の中には何個のクリが隠れていますか。その数だけクリのお部屋に青いをかいてください。
  • 3人はここにあるキノコを2個ずつ採りました。キノコはいくつ残っていますか。その数だけキノコのお部屋に青いをかいてください。
  • 3人はここにあるリンゴを全部もいで持って帰りました。帰ってから、ハイキングに来れなかった京子さんも入れて、4人にケンカしないように分けることにしました。リンゴは1人いくつもらえますか。その数だけリンゴのお部屋に青いをかいてください。

答えるために、どこの数を見ればよいのか「観察力」が問われます。

また、最近では応用問題として「数のやりとり」「交換」といった問題や、小学校高学年で学ぶ文章題の内容を、思考の質を変えずに幼児版にして出されることも多くなりました。植木算・旅人算・消去算といった内容ですが、かなりの論理性(考える力)が求められます。交換の問題の典型は次のような問題です。

9. 交換・置き換え
上のお部屋を見てください。動物村の果物屋さんでは、バナナ1本は、ミカン2個と換えてもらえます。リンゴ1個は、バナナ2本と換えてもらえます。ブドウ1房は、バナナ1本とミカン1個と換えてもらえます。
  • バナナ4本は、リンゴいくつと換えてもらえますか。その数だけ上のお部屋に青いをかいてください。
  • リンゴ2個は、ミカンいくつと換えてもらえますか。その数だけ真ん中のお部屋に青いをかいてください。
  • ブドウ4房は、リンゴいくつと換えてもらえますか。その数だけ下のお部屋に青いをかいてください。

最後の問題が解けるかどうか・・・これができれば、交換の問題は理解できたと考えてよいと思います。
今回予想問題として行った、消去算の考え方につながる問題は次のような問題です。

10. 消去の考え方
上のお部屋を見てください。
動物村の果物屋さんに、ウサギとクマが買物に来ました。ウサギはリンゴ2個とミカン1個を買って、ドングリ5個を払いました。クマはリンゴ2個とミカン2個を買って、ドングリ6個を払いました。クマの方がドングリを1個多く払っていますね。
  • ミカン1個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけミカンのお部屋に青いをかいてください。
  • リンゴ1個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけリンゴのお部屋に青いをかいてください。
  • リンゴ3個とみかん2個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけ1番下のお部屋に青いをかいてください。

ウサギとクマが買ったもの、渡したドングリの数の違いから、まずミカンの値段(ドングリの数)を出し、それをきっかけにリンゴの値段を出し、それを最後のものに当てはめるという問題です。消去算の基礎として小学生と同じ操作を数式を使わないで行うものですが、半分以上の子どもが正解しているところを見ると、こうした問題は出し方によって幼児でも解決可能な問題だと言えるし、今後出題されていく可能性は十分あるように思います。

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