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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

図形問題の出来具合が合否に大きく影響している

第693号 2019年10月11日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 最近の入試問題を分析していくと、図形問題に大きな変化が見られます。問題を作る学校側もいろいろ工夫して、ユニークな問題が出されています。数の問題が固定化していく中で、図形問題はより磨きのかかった良問が出されています。これまでは、図形構成 - 図形分割が図形課題の6~7割を占めていましたが、最近では、昔からあった問題ではありますが、難しくてあまり出されなかった線対称・重ね図形・回転図形といった問題が増えてきました。従来は「考える力」を数の領域で求めようとしていましたが、図形問題を通して求められ始めたということかもしれません。特に「回転」の要素が入った問題が増えていますが、それが難問化した図形問題の象徴的な問題かもしれません。こぐま会のセブンステップスカリキュラムでは、図形の知識を与えることではなく、図形感覚を育てるために、できる限り具体物を使った授業を徹底してきました。つみ木・パズル・粘土・折り紙といった素材が身近にたくさんあります。それらを使って、作っては壊し、壊しては作るという作業を繰り返し、物事に触れる体験を通して図形感覚を育てることに力を注いできました。セブンステップスカリキュラムでは、次のような学習をしてきました。

ステップ1:基本図形とその構成
ステップ2:立体構成
ステップ3:同図形発見、点図形
ステップ4:図形分割
ステップ5:展開図、線対称
ステップ6:重ね図形、回転図形

ステップ1ではパズル、ステップ2では秘密袋やつみ木を使います。また、ステップ3では同図形発見カード、ステップ4では折り紙を使います。ステップ5では、折り紙をたくさん使います。ステップ6では、透明なシートに描かれた形を実際に重ねあわせる作業を行ったり、絵や形が描かれたつみ木を使って回転させたりします。このように、どの学習においても身近にある素材を使って図形感覚を育てる授業を行ってきました。この中でも、特にステップ5と6の課題が難しく、最近の入試ではこの単元から難しい問題が出されています。

こうした現状を踏まえ、以下のような内容で最後のまとめの授業を行いました。
  1. つみ木の変化
  2. 回転図形
  3. 図形構成
  4. 図形分割
  5. 折り紙を使った対称図形
  6. 線対称
  7. 重ね図形
  8. 図形系列
  9. 展開図
  10. 回転図形
この中から、最近よく出される入試問題に即して少し解説をしてみます。

1. つみ木の変化 (1)
  • 上のお部屋にあるつみ木を見てください。この形から、つみ木を2個動かしてできる形を下から探して青いをつけてください。

基本のつみ木から何個動かせば指定の形ができるかを考えさせる問題で、今回は2個動かした形を探します。お手本となる形が下4個、上4個の分かりやすく整った形ですので、それほど難しくありませんが、お手本が右下のような形であったりすると、難易度は上がります。2つのつみ木を比べて、変化したところと変化しなかったところをしっかり観察できるかどうかが問われています。実際の入試問題では、次のようなものがありました。

1. つみ木の変化 (2)
  • 上のお部屋のつみ木から、2個動かしてできる形を下から探してをつけてください。

次に、回転に関して基本的な理解を点検しました。

2. 回転図形
  • 左の形が回転して黒いが右のような場所にくると、中の形はどうなりますか。右側にエンピツでかいてください。

黒丸がどのように移動したかをしっかり把握し、他の形との位置関係がどうなるかという問題です。その他に、今回は次のような回転図形を通して、回転のイメージが持てるかどうかも点検しました。

10. 回転図形
  • 左にある形をそれぞれ右回りに3回まわすと、右にある4つの形のうちのどれになりますか。1つずつ選んで青いをつけてください。

回転に関しては以上2つの問題が基本ですが、その他にも観覧車やルーレット、回転テーブルのような問題もあります。最近の小学校入試が難問化していくひとつの要素ですが、中学校入試における図形問題でも、こうした回転の要素を取り入れた難しい問題が多数出題されているようです。回転をイメージする能力は、物事に働きかける経験によって育つものですので、そうした経験をたくさん持たせることが大事です。

このほかに、最近の入試でよく出される対称図形と重ね図形もしっかりと対策をとっておかなければなりません。その基本がしっかり身についているかを、次のような問題で点検してみましたが、入試を控えた現時点でも間違いが見られます。こうした基本問題はしっかり身につけて試験に臨んでください。

5. 折り紙を使った対称図形
  • 下のように切り抜くためには、4つ折りのおり紙のどこを切ったらいいですか。エンピツで線結びしてください。

7. 重ね図形
  • 左の形は全部、透き通った紙にかいてあります。上の段は2枚の形を重ねます。真ん中の段と下の段は点線で矢印のように半分に折って重ねます。それぞれ、どんな形ができますか。右に並んでいるものの中から選んで青いをつけてください。

線対称の問題も重ね図形の問題も、今回練習したものは基本がしっかり理解できているかどうかをみる問題です。実際の入試では、こうしたことを基本にかなり難しい問題も出されます。折り紙を使って実際に切ったり、重ね方に2つの方法があることを実際に描き表すことを通して確認してください。最近の入試でよく出されるテーマですので、繰り返し練習してください。工夫された図形問題の出来不出来が、合否を左右する時代です。

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