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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

最後のお母さまゼミで伝えたこと

第496号 2015/8/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 8月25日から「夏季集中授業」が始まりました。夏休みのさまざまな講座で学んだことが、本当に身についているかどうかを、基本クラスに戻って点検するものです。久しぶりに基本クラスの友だちと会い、慣れた雰囲気での学習に、みんな安心した表情で課題に取り組んでいました。これから入試までの2カ月余りの学習が、大変大きな意味をもってきます。基本的な事項の学習は、夏休み前までに終了しています。その上で、この夏休みの学習は、過去問・難問・新傾向の問題と入試レベルの課題に取り組んできました。これまで学習してきた、事物教育対話教育が効果を発揮する時期です。教え込まれた方法ではなく、自ら試行錯誤して獲得した「考える力」は、問題の形式がどんなに変わっても対応していけます。ペーパーだけを何十枚と取り組もうと、自分の力で解けなければ新傾向の問題には対応できません。ペーパーだけを使って解き方をパターン化して教え込む込む指導がすでに破たんしているということは、最近の工夫された問題を見れば明らかです。できるだけ時間をかけてひとつの課題に取り組ませ、自らの力で解いていく学習をこの夏休みに実践してきましたが、その成果を問う「4日間の集中授業」です。

この授業に平行して、「入試直前2カ月間の学習をどう組み立てるか」をテーマに、最後のお母さまゼミを行いました。また、「願書」「面接」対策についても、担当者から最後のアドバイスをいたしました。私が担当した学習部分に関しては、

1. 夏季講習会で見られた子どもの学力の問題点
2. 新傾向講座の子どもたちの取り組みからみた未解決の課題
3. 残り2カ月間の家庭学習の取り組み方
4. 最近特に出題が増えている「常識問題」の分析と160の課題

こうした内容で、具体的にお伝えしました。特に、夏休みの講座で多くの子どもたちが参加した、「新傾向の問題講座」で見られた子どもの弱点は、これから2カ月間の家庭学習の課題として何を取りあげたら良いのかを考えた場合、大変参考になるのではないかと思います。その内容をここに掲載しますので、活用してください。

「入試まで残り2か月間の学習点検」
新傾向の問題講座を担当して気づいたこと
何が必要で、どう学習したらよいか
【A. 交換】
  1. 一対多対応の考え方がしっかり身についているか
  2. AからBを聞いても、BからAを聞いても答えられるか
  3. A=B , B=Cの関係から、Bを仲立ちとしてAとCの関係を考えられる。この関係においても、AからCだけでなくCからAも答えられるか
  4. 2A=4Bの時、A=2Bであることがわかるかどうか
  5. 1種類のものと2種類のものとを交換する場合、置き換えの操作ができるか
  6. 置き換えを2回しなくてはならない場合の交換ができるか。その際、何に変わったのかをしっかり把握できるかどうか
【B. 言葉づくり】
  1. 一音一文字の考え方がしっかり身についているかどうか
  2. どの音同士で、言葉つなぎをするかをしっかり意識できるか
  3. 音の置き換えをしっかり理解し、その音の組み合わせで新しい言葉を作ることができるか
【C. 三角形を基本とした図形構成】
  1. 大きさの違う三角パズルの場合、どこに大きな三角を使うかどうか
  2. 自分で分割線を入れられるかどうか
【D. じゃんけんによる関係推理】
  1. じゃんけんを使った数のやりとりの場合、じゃんけん表を十分読み取れるかどうか
  2. じゃんけんを使った位置の移動の場合、勝ち方による動きの違いを理解できるか
【E. 飛び石移動】
  1. 移動の仕方の違いを理解する(一つずつ/一つ飛ばし/一つ飛び)
  2. 2者が移動する場合の作業法(追い越す場合/出会う場合)
  3. じゃんけんが絡む場合の移動・・・約束をしっかり覚えられるかどうか
【F. 単位の考え方】
  1. 何を基準にするか
  2. それを1単位とした場合の数え方
  3. 長さの場合は方眼を使うことが多い。広さの場合は図形的解決ができるか。また、多さの場合は、容器が単位となる場合が多い。重さの場合は、おもりが単位となることが考えられる
【G. 四方からの観察】
  1. 反対からの見え方をしっかり理解できているか
  2. つみ木を使った四方からの観察が出題されやすい状況になっている
【H. 言葉つなぎ】
  1. 一音一文字の考え方がしっかり身についているかどうか
  2. はじめもおわりも指定のない言葉つなぎで、戻ることができるか
  3. 真ん中の音を素早く探すことができるか
【I. つりあいの応用問題】
  1. 交換同様、仲立ちを置いたつりあい
  2. 置き換えの時、何に変わったのかをしっかり把握する
【J. 正方形を基本とした図形構成】
  1. 4枚使った構成だけでなく5枚使ってどんな形ができるか
  2. 真四角の中に模様のあるカードを使って、見本と同じ模様を作る際の分割線の入れ方
  3. 広さくらべへの発展、真四角を単位とする場合と半分の三角を単位とする場合
【K. 一場面を使った数の総合問題】
  1. 一場面で違った質問がされる場合の対応
  2. どの部分を見ればよいかの判断
  3. 話によって場面の数が変わる場合の取り組み
【L. 線対称】
  1. 折り紙を使った線対称で、自分で切ってみることができるかどうか
  2. 半分折りの線対称は、フリーハンドの場合、大きさや長さをどれだけ意識できるか

また、入試でよく出される常識問題総チェックは、160の課題を用意しました。
(1) 季節・行事40問
(2) 昔話40問
(3) 理科的常識40問
(4) 一般常識・道徳 40問
最近の常識問題は、知識としてだけ身につけていても、入試には十分対応できません。実際に自分の体を通して経験したものでないと答えられない問題が増えていますし、学校側も出題する意図は、知識を問うのではなく、「そうした経験を家庭で実行していますか」といった観点で問題を作成していることがうかがえます。「知っているか - 知っていないか」ではなく、「経験しているか - 経験していないか」が問われているのです。そうした観点で、160の項目をチェックするようにお願いしました。

これから2カ月間は、入試本番を一番良い状態で迎えられるよう、健康管理を含めたコンディションづくりに細心の注意を払わなければなりません。これまでの学習の成果を発揮させるためには、どれだけ自信を持たせて試験場に向かわせるか・・・ということです。そのためには、直前にあまり難しいことをやって自信をなくさないようにしなければなりません。ペーパー試験に象徴される実際の「学力検査」も、ペーパーは多くても10枚前後、平均的には6~8枚です。時間にすれば30分以内、その時間にどれだけ集中して取り組めるかが問題です。毎日何十枚とペーパーに取り組ませることが、いかに今の入試の実態に合っていないかということを知っておくべきです。そうではなく、1枚1枚のペーパーを大事にし、より深く理解させるためにどうするかを考えるべきです。1枚のペーパーを大事にしない学習では、理解もしないまま解き方だけを覚えこんでいくことになり、初めて接した問題にはお手上げの状態になるのは目に見えています。たくさんのペーパーを毎日積み上げるのでなく、1枚のペーパーをより深く理解し、どんな形で質問されても答えていけるだけの「考える力」を身につけるべきです。

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