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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた子どもの弱点とその対策 (4)
- 数の内面化が未完成 -

第495号 2015/8/14(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏の学習課題の一つの課題に、「暗算能力」を完成させるということがあります。毎年この夏を過ぎると、ほとんどの子どもたちが、指を使わないで頭の中で数の操作ができるようになります。5日間の夏季講習会では、これまでの練習の成果を確認するとともに、過去問練習を通して暗算能力により磨きをかけます。ところで、入試対策において「暗算能力」を高めておかなければならないと考えている理由は以下の通りです。

1. 「話の内容理解」の中に出てくる数の変化を、話を聞きながら判断する必要がある
2. 数の複合問題に象徴されるように、最初の数の操作で出された答えをもとに、また別な数の操作をしなければならず、時間を短縮するためには、最初の答えは暗算で導く必要がある
3. 小学校受験といえども、そこでの学習が将来の学習の基礎になっていくような勉強の仕方が必要であり、暗算能力を高めておくことは、将来のたし算・ひき算をスムーズに行う基礎になっていく

こうした考え方を踏まえ、夏季講習会ではペーパー学習が終わった後、約10分ほどかけて、毎日暗算のトレーニングを積みました。

(1) 7の構成
(2) 1回だけの数の変化(増加・減少)
(3) 10の構成
(4) 数が2回変化する数の増減
(5) 数が2回変化する数の増減で出された答えをもとに、一対多対応等の別な数の操作をする

例えば、4日目に行った数の増減に関する暗算練習では、以下のような発問をし、子どもたちは暗算練習機で答えるという具合です。

「暗算トレーニング」 2段階の数の増減
1. 公園で子どもが2人遊んでいます。そこに別の子どもが2人きて、また別の子どもが3人きました。子どもは全部で何人になりましたか。
2. ジュースが冷蔵庫に7本入っています。太郎君が3本、花子さんが2本飲みました。ジュースは何本残っていますか。
3. バスにお客さんが5人乗っていました。次の停留所で4人降りましたが、2人乗ってきました。お客さんは何人になりましたか。
4. ミカンが5個ありました。お母さんが2個買ってきましたが、花子さんが3個食べました。ミカンは何個になりましたか。
5. リンゴが何個かありました。お父さんが2個、お母さんが3個買ってきたので、リンゴは10個になりました。はじめにリンゴは何個あったのですか。
6. ブドウが何房かありました。お母さんが3房、お父さんが2房食べたので、2房残りました。はじめにブドウは何房ありましたか。
7. バナナがはじめに5本ありました。太郎君が2本食べましたが、お母さんが何本か買ってきたので、バナナは6本になりました。お母さんは何本買ってきましたか。
8. お客さんが2人きています。そこに別の客さんが2人きましたが、何人か帰ったので、お客さんは1人になりました。お客さんは何人帰ったのですか。

以上のような順序で練習しました。こうした5日間の練習の中で見られた子どもの様子は、

(1) 暗算能力には個人差が大きく、まだ指に頼る傾向にある
(2) 7や10の数の構成の場合、大きい数を聞いて小さい数は答えられても、小さい数を聞いて、大きい数を答えることができない子が目立つ。例えば、10の場合、「8を聞いて2」は答えられても、「2を聞いて8」を答える問題には、答えのスピードに相当の差が目立つ
(3) 数が2回変化する数の増減の場合、いまだに指を使うケースが見られる
(4) 数の増減が基本となる「複合問題」は、一対多対応が絡むケースが多く、最後の答えは、紙に書きながら答えが導ければそれでよいが、答えが12を超えない場合は、暗算できることが好ましい。例えば、「駐車場に車が4台止まっています。少し経つと2台入ってきましたが、また3台出ていきました。今止まっている車のタイヤの数はいくつですか」という問題の場合、止まっている車の数までは暗算し、その後の一対四対応は、を書きながら「1台分」「2台分」・・・とやればよいが、その手続きが難しい

答えが導き出されれば、どんな方法でも良い・・・のではなく、きちんと暗算で答えが出せるような練習が必要です。数の問題になると反射的に「指」を使いがちな面が目立ちますが、それは練習の仕方が問題であり、最初から指を離れて頭で考えられるようにすべきです。おはじきなどの具体物操作を十分させることによって、数をイメージするとっかかりを作ってあげることが必要です。具体物操作と頭でのイメージ化が繰り返されていくうちに、数の内面化が進み、暗算能力が鍛えられるはずです。この夏に、どうしても克服しておかなければならない課題です。

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