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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

数の学習をどう積み上げるか(2) 数の内面化

第284号 2011/3/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可


 幼児期における数の学習は、大きく分けて「分類課題」と「数の操作」に関する課題の2つであることを前回のコラムで述べました。幼児期の基礎学習は、決して小学校で学ぶ内容を易しくしておろすという発想ではなく、子どもの生活や遊びにテーマを求め、新しい発想で学習内容が構成されるべきです。では、どんな内容をどのような順序で学習すべきでしょうか。こぐま会では次のような単元を設け、学習内容を工夫してきました。

1. 分類
2. 分類計数
3. 数の構成
4. 一対一対応
5. 等分
6. 一対多対応
7. 包含除
8. 数の増減
9. 数のやりとり
10. 数の複合問題

一つ一つの単元は、子どもの生活に身近なテーマを取り上げ、体を使った「ごっこ遊び」的経験・物事への働きかけを重視した個別作業・理解度をチェックしながら応用学力を身につけるペーパーワークの3段階の学習を、年齢にふさわしい教具や教材を使って行っています。同じ内容を難易度を上げながら繰り返すスパイラル方式で積み上げていきます。その最終目標は「数の内面化」です。具体物を使い、おはじきや碁石を使い、また最後にはペーパーを使って行う数の教育は、最終的には「数の内面化」を目指します。そのことを通して暗算能力を高め、小学校で学ぶ四則演算の基礎をつくり上げていきます。

なぜ、暗算能力(関連コラム:第249号)を高めておく必要があるのか。それは、数の操作を指や具体物から離れて頭で操作できるようになることによって、話を聞いて数の変化をとらえることができ、また、入学後の計算スピードを高めることができるのです。数の内面化の必要性については、就学前の子どもたちを対象とした「ひまわりクラブ」(関連コラム:第204号)の授業を通して私自身が強く感じていることです。同じ問題を課しても、それを仕上げる時間がどうしてこんなに違うのかを考えてみると、どれだけ数の内面化ができているかどうかによって「計算力」は決まるということを実感しています。もし、幼児期の学習課題に「具体から抽象への橋渡し」があるとすれば、数教育の場合、それは「数の内面化」に他なりません。

受験対策においても、同じことが言えます。答えが出ればその過程は問わないというのではなく、きちんとした方法で答えを導きだせなくてはなりません。指でも何でも使って解かせる今の受験教育では、将来の蓄積にはなりません。「話の内容理解」の中に数の操作に関する問題が出始めている今の入試問題は、明らかに将来の算数の基礎となる「数の内面化」を求めていることだけは確かです。

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