週刊こぐま通信
「室長のコラム」数の学習をどう積み上げるか
第283号 2011/3/4(Fri)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

こぐまひまわり会が主催している「合格カレンダー連続講座」は、今年度も昨年11月から開始し、これまでに8回の講座を終了しました。会員の皆さまを中心に毎回50名前後の方々にお集まりいただき、入試関連情報や家庭学習の進め方などを中心に、できる限り具体例を示してお伝えしてきました。2月24日に行った連続講座では、「数の学習をどう積み上げるか」というテーマで以下の内容についてお話ししました。入試問題の中心になる「数」に自信を持つことはとても大事です。間違った学習にならないよう、入試問題の分析と今後学習する内容について、学習の順序性を伝え、また入試ではどのような形で難問化されるのか・・・などについて報告しました。
第8回 合格カレンダー連続講座
「数の学習をどう積み上げるか」
なぜ、暗算能力が必要なのか
(1) 小学校入試における 数の問題
- どんな能力が求められているか
- 入試問題をどう整理し、学習計画を立てたら良いのか
- 学習の手順を間違えると、数嫌いな子をつくる結果になる
- 入試までどのような手順で学習したら良いのか
- なぜ暗算能力が必要なのか
- 暗算能力を高める方法
- 数領域における難問とは何か
- 難問化する方法には一定のルールがある
- 子どもがつまずく原因を分析すると、そこに練習課題が見えてくる
2011年度の入試は、なぜか数領域の問題が減ったように思います。一方で、常識問題が増えたのはなぜでしょう。偶然そうなったのか、何か変化する背景があったのか、きちんと調べなくてはいけませんが、全体として問題が易しくなった大きな原因は、この数の問題が減少したからです。ただ、1年だけの変化では何とも言えませんから、これから2~3年の動きを注視していきたいと思います。ところで、数領域の入試問題をどのように分析したら良いのか、その結果として何を学習課題にしたらよいのか・・・・これはとても大事なことです。入試問題を正しく分析できなければ、その対策もいい加減なものになってしまいます。過去問を何の脈絡もなく学習したのでは、効果は上がりません。また、子どもの数概念の発達に見合った学習を積み上げなければ、形を教え込む指導しかできません。そんなことでは、新出問題には対応できません。幸い、今の入試問題は、私たちが考えている「数の基礎教育」の内容に準拠して出され始めています。幼児期における数の基礎教育は、将来の算数科につながる内容として、次のように考えておく必要があります。
1. 集合数の基礎 分類
2. 順序数の基礎 系列化
3. たし算の基礎 分類計数・数の合成
4. ひき算の基礎 数の構成・一対一対応
5. かけ算の基礎 一対多対応 (*)
6. わり算の基礎 等分・包含除
7. 四則演算総合 数の増減・数のやり取り・数の複合問題
2. 順序数の基礎 系列化
3. たし算の基礎 分類計数・数の合成
4. ひき算の基礎 数の構成・一対一対応
5. かけ算の基礎 一対多対応 (*)
6. わり算の基礎 等分・包含除
7. 四則演算総合 数の増減・数のやり取り・数の複合問題
(*)一対多対応はかけ算の考え方の基礎ですが、この耳慣れない言葉は、ひとりでとっくん問題集を作る際に「一対一対応」に準じて、私(久野)が作った造語です。
これが、将来の算数学習を意識した「教科前基礎教育」における数の基礎学習です。こぐま会では、この方針に沿って数の指導をしてきました。しかも入試問題のほとんどは、この領域分けで分析できます。そうであるならば、この方法で学習を積み上げる事によって、系統だった受験指導も可能になるのです。入試で出された問題を手当たり次第に学習する今の「過去問トレーニング」が、誤りだということはすぐにお分かりいただけると思います。子どもの学力は、きちんとした方針を持って育てなくては、本当に身に付く力にはなりません。しかも、この受験対策としての数の学習が、入学後の算数学習の基礎になっていくという点も大事です。入試が終わったらすべて忘れてしまうのではなく、そこで学んだことが、入学後の学習に引き継がれていくことに意味があるのです。幼小一貫教育の大事な点は、幼児から小学生まで、同じ考え方で指導に当たるということです。一対多対応の学習が理解できれば、2年生で学ぶかけ算の考え方の土台をつくることになり、年長の3学期には、九九の暗唱を含めたかけ算の指導が簡単にできるのです。実際今、ひまわりクラブ(関連コラム:第188号・第189号)では、今年の4月に入学を迎える子どもたちには、ばらクラスでの授業経験につなげて、かけ算・わり算の指導を行っています。毎週覚えてきた九九を発表する子どもたちの意気込みを見ていると、幼児教育の大切さを改めて痛感します。(続く)