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世界の子どもたちに「KUNOメソッド」の学びを
国内・海外からの実践報告

第2回 「幼児教育と子どもたちの未来」―ジンバブエ特別編―

2025年4月23日(水)
学習塾KOMABAシンガポール・ジャカルタ塾長 石川晋太郎
1980年の独立以来、ジンバブエでは幼児教育にあまり注目が集まっていなかったそうですが、現在は状況が大きく変わっています。 Early Childhood Development(以下、ECD) という教育制度が導入され、それまでごく一部の子どもしか受けられなかった幼児教育が、すべての子どもたちに義務付けられるようになりました。
2003年当時、幼稚園で音楽の指導をする石川
2003年当時、小学校で音楽の指導をする石川

なるほど、確かに私が協力隊として滞在していた頃は、幼稚園に通っている子どもはごくわずかで、多くの幼児たちは家の周りで畑仕事を眺めたり、道端をキャッキャとウロウロしていたりしました。そして、見慣れないアジア人である私を見つけると、まるで時が止まったかのように目を丸くしてじっと見つめてきたものです(笑)。
それが今では、各小学校に幼稚園部門を併設したり、地域に受け入れ施設を設けたりするなど、幼児たちがECDプログラムを受けられる体制が整ってきています。
「多くの子どもが幼児教育を受けるようになったおかげで、小学校1年生からの学習がとてもやりやすくなった」と、ECDの現場で働く先生が話してくれました。
小学校に上がるための基礎的な学び――たとえばアルファベットの読み書き、1から10まで数えること、歌を歌ったり色を塗ったりすること、さらには1人でトイレに行けるようになること――これらはすべて、ECDで身につける大切な内容です。

一方で現場には課題も依然として残っています。 たとえば、学費を払えない(貧困層に対する補助制度は一応ある)、通学に時間がかかりすぎて通えない(家から学校まで1~2時間かけて通う子も珍しくない)といった理由から、教育を受ける機会を失っている子どもたちが一定数います。
2003年当時、幼稚園にはいかず道端で遊んでいる子どもたち
日本でも通学に1時間かかる子はいますが、ジンバブエの子どもたちは直射日光の照りつけるサバンナを徒歩で登下校しているのですから、大変さは想像以上です。(ちなみに、ジンバブエの黒人女性たちも日焼けを気にします!)

さて、今回の滞在では、実際のECDの現場を複数見学することができました。
率直に言うと、日本の幼稚園と雰囲気がとてもよく似ています。いえ、もしかしたら幼児教育は、世界中どこでも似たようなものなのかもしれません。教室には、AからZまでのアルファベット、1から10までの数字、動物の写真や絵、生活の中で使う道具の紹介、子どもたちが色を塗った作品などが掲示されています。先生方は、たまたまかもしれませんが、比較的若い女性が多い印象でした。そんな中、子どもたちは無邪気に楽しそうに、目をキラキラさせながら授業を受けていました。(誤解を恐れずに言えば、黒人の子どもたちはその肌とのコントラストから目の輝きがより一層際立って見えます!)

ただし、先生方と話を深めていく中で、いくつかの課題も見えてきました。
まず一つ目は前述の通り、ECDが義務化されているにもかかわらず、家庭の事情によって教育を受けられない子どもが一部にいるということ。
二つ目は、カリキュラムが多すぎるために、教室外での活動や体験型学習の時間が減ってしまっているということ。
三つ目としては、これは社会的な背景もあるのかもしれませんが、先生の発言力が強すぎて、子どもたちの創造性を育む教育というよりは、先生の指示に忠実に従う子どもが「良い子」とされ、そうした価値観が根付きやすい環境になっているという点です。
実際、私が以前教えていた子どもたちも、現地語で「分かりましたか?」と尋ねると、まるで軍隊のように一斉に「はい!」と答えていたのを思い出します。

第1回目の投稿で「教育と社会の関わり」について触れましたが、その構造はどうやら幼児教育の段階から始まっているように感じます。 少し大げさに聞こえるかもしれませんが、もしジンバブエの子どもたちがこぐま会のKUNOメソッドのような教育に触れていたら――。
彼らは、ずっと苦しいままの社会に対して「なぜ?」と疑問を持ち、もっと主体的に改善しようと行動できるのではないか。
そんな想像を抱かずにはいられません。
この点については、第3回の投稿で改めて触れていきたいと思います。

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