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世界の子どもたちに「KUNOメソッド」の学びを
国内・海外からの実践報告

第1回 「社会と教育の負の連鎖」―ジンバブエ特別編―

2025年4月16日(水)
学習塾KOMABAシンガポール・ジャカルタ塾長 石川晋太郎
はじめまして。
学習塾KOMABAの石川と申します。シンガポールとジャカルタに住む日本人の子どもたちに、KUNOメソッドを届けるための教室を運営しています。
ふだんから海外での指導を続けていますが、2025年3月には、私個人が活動しているアフリカ・ジンバブエにて、現地のNGOの取り組みの一環として、ジンバブエの子どもたちや先生方と、KUNOメソッドを通じた交流を行いました。
日本人の子どもたちへの指導とは異なる、さまざまな気づきがあったため、今回、この場をお借りして、3回に分けてその取り組みをご紹介させていただきます。 よろしければ、ご一読ください。
次々に新紙幣が出ては消えをしてきた。ゼロの多い価値を失った紙幣が観光客用に価値以上で売られている
ジンバブエをインターネットで検索すると、「ハイパーインフレーション」というキーワードが画面を埋め尽くします。その通り、この国は経済が破綻してしまった国と言えるでしょう。私が2003年から2004年にかけて青年海外協力隊として現地で小学校教諭をしていたとき、その影響をまともに受けました。何しろ、毎日のように物価が上がるのです。今手元にある現金が、わずか1か月後には紙くず同然になってしまう可能性がある生活(後には100兆ジンバブエドル紙幣も登場しました)は、常に不安との戦いでした。

そんな中、子どもたちの教育現場にも負の連鎖が広がっていました。
特に深刻だったのが、HIVの感染率の高さに伴う平均寿命の短さです。当時、ジンバブエの平均寿命は世界最悪レベルの約40歳とされていました。私が勤めていた小学校でも、毎月のように子どもたちの親が亡くなったという知らせが入り、同僚の教員が亡くなることもありました。
私の滞在中にも大規模なデモがあり首都が厳戒態勢だった

そのため、子どもたちが幼くして孤児になるケースが相次ぎました。私が巡回指導していた小学校の一つでは、全校生徒350名のうち、すでに100名以上が片親を失い、さらに約70名が両親を亡くして孤児となっていました。信じがたい話ですが、現実でした。
しかし、そうした孤児たちを支援する社会制度は機能していませんでした。そのため、子どもたちは兄弟や親戚に引き取られるのが一般的です。けれども、引き取った家族もまた貧しく、子どもたちを学校に通わせる余裕がなく、家事や労働を手伝わせることが多いのです。
小学校すら卒業できずに働き始めると、社会生活に必要な協働力、計画と実行力、主体的な課題解決能力などが身につかず、結果として仕事もうまくいかなくなる。そんな負の連鎖が起きていました。
それから20年以上が経ちました。幸いなことに、HIV検査が普及し、薬も手に入るようになったことで、平均寿命は改善しました。孤児の数も、以前に比べると大きく減少したと言われています。

しかしながら、依然として国全体の経済活動は十分に機能していません。
当時私が教えていた生徒の一人で、現在30歳を超えた青年と再会し、話を聞くことができました。彼はこう話します。
「せっかく頑張って大学まで出たのに、就ける仕事が何もない。働きたいのに働けない。だから貧しい暮らしから、いつまでも抜け出せない。」
子どもたちは遠くから赤土の道を歩いて学校に来る

教育が機能するには、社会と一体となって支え合う必要があるのだと、しみじみ実感しました。ここジンバブエでは、あまりにも長い間、それが機能していないのです。
そして同時に、だからこそ学校教育がより良いものとなり、この国の社会の基盤を形づくる道を切り拓いていかなければならないのだと思います。学校教育は本当に大切なものだと、心の底から感じます。昨今急速に広まったオンライン教育も、その利便性を活かしていくべきだと考えています。ただし、それは「知識を得る」ための手段にすぎません。その知識を活かせる社会があって初めて、教育は意味を持つのです。
子どもたちが教育を受けるということは、本来、単に知識を得るためだけではありません。社会に出て、自分の人生を幸せにするための活動ができるよう、総合的な学びを経験する場なのです。
ジンバブエの子どもたちの成長を見ていると、つくづくそう感じます。
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