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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

位置表象:前後関係の聞き取り(雙葉小学校)

第55号 2006/09/08(Fri)
齋藤 洋
位置表象:前後関係の聞き取り(雙葉小学校)
6つの窓があるバスの絵がある。そのバスの絵とは別に、6匹の動物(ウサギ・ウマ・サル・ヒツジ・ネズミ・リス)の絵もある。
 それらの絵を見ながら、バスに乗っている動物の、座っている場所の前後関係について聞く。


「6匹の動物がバスに乗りました。ウマの前にはウサギが座りました。ウサギはリスの後ろに座っています。リスの前にはヒツジがいて、ネズミがヒツジの2つ前に座っています。」


これから言うそれぞれの場所に、誰が座っているかをつけてください。
  • ウマの前に座ったのは誰ですか?
  • 前から2番目に座っているのは誰ですか?

 2002年度に出題された、「位置の聞き取り」の問題です。バスの絵を見ながら聞いていますし、動物の顔も見えています。一見簡単そうに思えるかもしれませんが、6匹の動物と6つの場所についてですから簡単ではありません。小学校入試に出題される記憶の問題では、4者関係までが一般的です。それが6者関係ですから、かなりの難問と言えるでしょう。
 しかしそれだけではありません。位置の表現方法に極めて難しい部分があることに気づかれたでしょうか。もう一度問題の文章を見てください。「前から(後ろ)から~番目」という表現が全くありません。ですからこのお話を聞く時に、子どもたちが1番聞きたい部分、待ちわびている基準が、集中して聞いていても登場しないのです。その部分を分析してみましょう。

  • ウマの前には、ウサギ・・・
  • ウサギは、リスの後ろ・・・
  • リスの前には、ヒツジ・・・
  • ネズミが、ヒツジの2つ前・・・

 このようにそれぞれの位置表現は、2匹の動物の位置関係だけです。この表現を総合して、全体の位置関係を推理しなければならないわけです。単純な位置の聞き取りではなく、三者から五者のシーソーの重さ比べにも似た、関係推理の問題と考えた方がよいでしょう。しかしこれはかなり難しいものです。試しに初めの2つの文章で、その位置関係を考えてみましょう。

 ウマの前には、ウサギがいます。ウサギは、リスの後ろにいます。
ということは・・・
 「ウサギ - ウマ」「リス - ウサギ」

 つまり、前から「リス - ウサギ - ウマ」の順番ということを聞き取らなければなりません。ほんの三者関係の部分ですが、文章を聞きながら、順序の入れ替えが必要です。

 さらにこの問題を難しくしている部分が、もう一つあります。それは、サルの場所についての記述が無いというところです。しかしサルもバスに乗っているはずです。他の動物の位置さえはっきりすれば、サルの位置は分かるはずです。しかし幼児は、不明な部分が一つでもあると、明らかな部分の全てを曖昧なものとしてとらえてしまう場合が多いのです。部分的な位置関係の記述から、明らかな点をつなげ、不明な部分を特定していく力が必要です。論理的思考能力が必要なのです。

 この問題は雙葉小学校らしい出題ですが、今後このような関係推理の問題は、多くの学校で増えてくると考えられます。これまでも雙葉小学校の出題が、他校の入試問題に広がっていったことは多々あります。それだけでなく、最近の傾向からすると、2者の関係から全体を推理する問題が、「シーソーの重さ比べ」を含め、様々な関係推理に使われており、重さ・速度・早さ・距離・物事の順序など、多くの学校でいろいろな問題が出題されています。今のところそのレベルは、三者関係がほとんどですが、四者関係まではしっかり推理できるようにしておく必要はあるでしょう。さらにこの問題のように、不明な部分がある問題にも挑戦しておくとよいでしょう。あまり過去問には登場していないので、ご家庭で工夫してみてくだい。

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