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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

図形:逆対応(成城学園初等学校)

第44号 2006/06/02(Fri)
齋藤 洋
図形:逆対応(成城学園初等学校)
  • 太郎君が牛乳パックから牛乳を出し、3つのコップに上の絵のように分けて入れました。

3つのコップをどれもいっぱいにするには、下に並んでいる容器の中の牛乳を、どのコップに入れたらよいですか。線結びしてください。

 上記の課題では、3つのコップに量を違えて入れています。言葉で表せば、「多い」-「中位」-「少ない」です。
 コップは3つですから簡単なように思えますが、質問の意味がしっかり理解できないと、間違えてしまう場合もあるでしょう。対応づけることよりも、問いかけの意味が分かるかどうかに、この問題のポイントがあるように思えます。

 3つのコップを全ていっぱいにするということは、それぞれに入っている水量、「多い」-「中位」-「少ない」を、しっかりイメージしなければなりません。そして今入っている量が多ければ、それにどんな水量を加えたらよいのかと考えていくのです。

 次のように考えることもできます。
 今入っているコップの中の牛乳そのものではなく、牛乳の水面の上から、コップの最上部までの空間を意識するというものです。空間が多ければ、それだけ多くの牛乳を入れる必要がある訳です。つまり、「空間の量=加える牛乳の量」です。幼児にこのことを気づきかせるのは難しいのですが、この考え方も大切ですし、結局ここに行き着くはずです。

 さて実際にここで求められているのは、「3つのコップをどれもいっぱいにするには、…」という意味をとらえることです。つまりどれもいっぱいにすることができる方法があるということです。そのためには、すでに入っている牛乳そのものの、「多さ - 少なさ」を考えて答えを導き出さなければなりません。すでに多く入っているなら、いっぱいにするために加える量は、少なくてよいことになります。逆に少ない量しか入っていなければ、多く加えなければなりません。
 この考え方を逆対応の考え方と言います。逆対応の問題にはいろいろなものがありますが、今後様々な課題への発展を思うと、そこに着目して解答を考える方法を身につけなければならないでしょう。

 加える方のコップの形状は違ったようです。また絵に描かれているものです。その中に入っている水量そのものは、正確には分かりません。ただ「多い」-「中位」-「少ない」が判断できるだけです。ですから、なんとなくこの空間には、この水量で間に合うというような見方はしない方がよいでしょう。平面的な隙間に、水量を表している面積を対応させようとすると、時間もかかりますし、勘違いも起こりやすいと思います。何よりもこの問題では、そのような図形的な直感を求めているのではありません。

 成城や桐朋では、コップの水量についての問題を様々出題しています。その基本にあるのは、《量の保存》の考え方です。《量の保存》というのは、次のような考え方です。

  • ある形状のコップに入れた水全部を、別の形状のコップに入れ代えた時、水面が高くなっていたり、逆に低くなっていたりしても、量そのものは変わらない。つまり量が保存されている。

 「見た感じに惑わされずに、量そのものについてを考えなければならない。」という意味で、上記の問題も同じような観点で出題されているような気がします。量の保存の概念を身につけるのは、なかなか難しいのですが、過去問を参考にできる限り取り組んでみて下さい。その取り組みには、具体物を使った学習が絶対に必要です。また言葉での理由説明を、必ず求めるようにして下さい。

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