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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

図形:立体構成(暁星小学校)

第42号 2006/05/18(Thu)
齋藤 洋
図形:立体構成(暁星小学校)
左のお部屋に、粘土の玉と同じ長さの爪楊枝でできた立体的な形がある。この形に使ってあるものはどれか、右の4つの組み合わせの中から選んでをつける。

 図形の問題にはいろいろなものがありますが、最近の傾向として「基本図形の理解」を重視した問題が多くなっているようです。例えば、円・三角形・正方形・長方形・菱形等から始まる、いわゆる図形認識についての問題です。パズルでも、絵パズルよりも基本図形を使った図形構成や図形分割の問題が多く、異なる図形の持っている「辺と頂点」の特徴について、意識できているかどうかを求めていると考えられます。

 その中でも上記の問題は、まさに「辺と頂点」を考える問題になっています。一般的な面の意識から「辺と頂点」をクローズアップしているのです。見たことのない幼児にとっては、妙な印象を持ったことだと思います。またちょっと興味をそそられる部分もあったでしょう。しかし問題自体は難しいものです。

 例えば、粘土の玉と同じ長さの爪楊枝で作った正方形ならば、粘土の玉はそれぞれの頂点に4個使います。爪楊枝は4本使うことになります。次に立方体をイメージしてみて下さい。粘土の玉は、それぞれの頂点に全部で8個使います。爪楊枝は12本使うことになります。このように平面図形だけでなく立体図形についても考えられますし、上記でもたぶんどちらも出題されていたと思われます。ですから空間認識の問題としてとらえなければならないでしょう。

 ここで気がつくことがあります。一般的に立方体を描いて表す場合は、それを表すために斜め方向からの描写になっているはず。その際に奥行きを表す爪楊枝の長さは、実際よりも短く描きます。お分かりのように、お手本に見えている爪楊枝の長さは、選択肢の中に描いてある爪楊枝の長さとは違って見えているかもしれないのです。選択肢にある爪楊枝は、そのまま実際の長さで描かれているはずです。この場合、お手本の爪楊枝の長さと、選択肢の爪楊枝の長さの同一性を、子どもはどこで判断できるのでしょうか? それはかなり難しいことです。ペーパートレーニングだけで理解させることは、不可能に近いでしょう。

 ここで暁星小学校が求めているのは、同じ長さの棒を使って様々な立体を作ることができるという認識です。つまり基本的な図形に関しては、平面も立体も、その「辺と頂点」における特徴を、しっかり分かっていていて欲しいということです。暁星小学校ではパーパーで出題していますが、その認識を持たせるために必要なのは、具体物による経験でしかありません。

 日常生活の中には、上記のようなものは無いと思われるかもしれませんが、そのとりかかりは、どの幼児もきっと遊んだことのある積木でよいのです。積木それぞれの中にある特徴を、積木遊びの中で自然に利用しているはずです。それをただ感覚的に理解しているだけではなく、論理的にとらえることができるようにしていくことが大切です。それにはただ遊ばせておけばよいのではなく、様々な取り組ませ方の工夫が必要になります。例えば、お母様が予め作った積木をお手本にして、それと同じものを作る積木構成は、一つ一つの積木の特徴を印象的に理解するのに効果があります。もし該当する積木が無い状況を作っておけば、別の積木を組み合わせて何とか作り上げなければなりません。このとき積木の持っている辺の長さをかなり強く意識することになるはずです。
 また入試問題自体を利用して学習することもできます。入試問題は基本的に、幼児の生活の中にあるものを利用して作っています。それがあまりにもアレンジされすぎて、とても難しくなってしまう場合もありますが、参考になるものが多いのも事実です。上記の問題は、辺と頂点を意識させるには、とても面白い教材だと思います。ご家庭でも粘土玉と爪楊枝で、いろいろな形作りに挑戦して見て下さい。

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