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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

数:交換(一対多対応)(雙葉小学校)

第41号 2006/05/11(Thu)
齋藤 洋
数:交換(一対多対応)(雙葉小学校)

ポンタ君とポンコちゃんとポンキチ君は、葉っぱを持ってお買物に行きました。

大きい葉っぱ1枚は、木の実3個と換えることができます。

小さい葉っぱ1枚は、木の実1個と換えることができます。

問1.
ポンコちゃんは、大きい葉っぱ1枚と小さい葉っぱ2枚を持っています。木の実何個と取り換えることができますか。その数だけを描いて下さい。
問2.
ポンタ君は木の実を7個持っています。どの葉っぱの組合せで取り換えることができますか。お部屋にをつけて下さい。
問3.
ポンキチ君は、大きい葉っぱ2枚と小さい葉っぱ3枚を、木の実に取り換えたのですが、食いしん坊のリスさんに何個か食べられてしまい、5個しか残っていません。リスさんは何個食べましたか。その数だけを描いて下さい。

 雙葉らしい交換の問題です。交換の問題というと、新しい出題かなと思われるかもしれませんが、ここ数年いろいろな学校で出題されるようになった「シーソーのつりあい」の問題は、実際には重さの比較方法を問うものではなく、左右に乗っているものの重さを一対多対応の関係で考える、数の交換の考え方の理解を求めているものです。そして、そのシーソーのつりあいも、初めて出題したのは雙葉でした。

上記の問題は、葉っぱをお金の代わりにしています。大きい葉っぱと小さい葉っぱでは、大きい葉っぱの方がたくさんの木の実を買えるので、価値が高いということです。しかし幼児には、価値が高い―低いという言葉は分かりませんから、「大きい葉っぱの方がいいなあ。小さい葉っぱより2つも多く木の実がもらえるんだ。」というレベルで理解していればよいのです。
 毎年、数の問題は大きなテーマの中に3問~4問の小問があり、初めの問題は易しめにしてあります。ここで、問題のポイントをつかみ、次の問題に進んでいきます。

 問1は、一対多対応と数の合成の複合問題です。大きい葉っぱ1枚で木の実3個、小さい葉っぱ2枚で木の実2個ですから、3個と2個を合わせて5個買えるという答えになります。雙葉では易しいものですが、他校ではこのような交換の方法は採らず、「木の実3個と木の実2個を合わせるといくつになりますか?」と数の合成の問題として出題するのが普通です。

 問2は、逆に木の実7個を買うための、葉っぱの組み合わせの問題です。買える木の実の数から、葉っぱの組合せを考える、逆思考であることからして難しく、交換の学習を十分に積んでいないと、全く意味が分からない場合もあります。交換というのは、一方向だけではないことを、しっかり理解させてあげる必要があります。
 また、4つの選択肢の中で答えが2つあったと報告されています。これも雙葉らしいところです。
 答えの可能性としては、大きい葉っぱが多いところから順に考えます。7個の木の実を買うので、3つの可能性しかありません。選択肢には、この中の上2つがあったと思われます。

  • 大きい葉っぱ2枚と小さい葉っぱ1枚
  • 大きい葉っぱ1枚と小さい葉っぱ4枚
  • 小さい葉っぱ7枚

 問3は、一対多対応と数の合成、そして逆思考の複合問題です。かなり複雑ですから、答えを導く順番をしっかり考えなければなりません。
 まず初めに、大きい葉っぱ2枚で木の実は3個ずつ、6個買えます。小さい葉っぱ3枚で木の実は3個買えますから、6個と3個を合わせて9個買えることになります。頭の中で暗算でできれば大したものですが、もしできなくても、「3個と3個、そしてまた3個」というように考えることができれば、それを解答欄の外にちょっとでも描いておいて、そこから次に進んでもよいでしょう。解答欄に直接を描いてやってもかまいません。
 9個の内残っているのは5個です。逆思考になりますからかなり難しいのですが、残っている数は5個ですから、それ以外がリスに食べられた数だということになります。順番に6個目~9個目までが、リスのおなかの中に入っていると言うように考えてもよいでしょう。「6・7・8・9」と解答欄にを描けば正解です。
 解答欄の外や、解答欄にを9個描いたならば、残っている5個を指示された訂正方法で消せば、リスの食べた数4個になります。

 ここまでの経過を、式に表してみると次のようになります。

3個+3個=6個
1個+1個+1個=3個
6個+3個=9個
9個-5個=4個

 式に表したのは、この分析をお読みになる方が分かりやすいようにしているだけで、子どもが足し算や引き算をする必要があるわけではありません。しかし子ども達にも、このような順序だった思考方法を身につけて欲しいのです。ただ出てきた数をこねくり回すのではなく、確実にその経過を追っていける力を養わなければ、将来必ず困ることになります。雙葉小学校の入試問題だから仕方がなく、複合問題の練習をするのではなく、全ての幼児にしっかりとした数の認識を持ってもらいたいと思います。
 様々な数の場面をイメージする力を身につけていくために、生活の中にある数の必然性を常に意識させ、数の基本学習をしっかり積んでいくことが大切です。この雙葉の問題がすぐに解ける必要はありません。この問題の中にある一つ一つの操作をしっかり理解できるように、関わってあげてください。

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