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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

数:数の合成・多少・構成(的当て)(白百合学園小学校)

第39号 2006/04/20(Thu)
齋藤 洋
数:数の合成・多少・構成(的当て)(白百合学園小学校)
ウサギとキツネが的当てをしました。まず、ウサギは5個、キツネは4個的に当たりました。
2匹ともあと4個ずつボールが投げられます。

キツネさんは4個の内、3個を的に当てました。ウサギさんは、あと何個的に当てれば勝つことできますか。その数だけ下の部屋にをつけて下さい。

 単純ではない、「数の合成」と「数の多少」、そして「数の構成」の複合問題です。時間的な経過もあるために、幼児にとっては問題の内容を把握するが難しい問題だと思われます。つまり数の問題ではあっても、話の内容理解の力も必要としているのです。聞き取りの力と言っても良いでしょうが、場面のイメージをする力は易しいものではありません。

 子ども達がまず理解しなければならない点は、「ウサギは5個、キツネは4個当てている」というところです。単純にこの数だけをとらえるだけでよいのです。ある程度数についての認識ができている子どもが迷うのは、いったい2匹はいくつ投げたのだろうということなのですが、それは全く問題ではありません。
 次にとらえるのは、「キツネは3個的に当てた」というところです。やはり「投げた4個のうち・・・」という部分はどうでもよいことです。
 ここまでで、問題の中にいろいろなワナが仕掛けられていることがお分かりでしょう。問題の中の重要な部分を、本当に理解してとらえることができるかどうかが求められているのです。
 そのことがすっきり見えている場合、先に進むことができます。つまりキツネの当てた合計数が必要だということです。初めに当てている数と合わせると、キツネの合計数は「7個」になりました。
 子ども達の中で、ここまで来ることができた子がどれくらいいるでしょうか? 一見できそうに思えるのですが、かなり難しい聞き取りだったと思われます。

 そして最後に、ウサギが初めに当てていた数の「5個」に取り掛かることができます。キツネが「7個」当てているので、ウサギが勝つためには「7個」では引き分けになってしまいますからだめです。ここまできてホッとして、「7個」でいいと思ってしまった子も多かったでしょう。悔しいミスです。「8個」以上当てなければならないという点に気づくのは大したことではなさそうですが、幼児には結構大変なことなのです。
 そこから、ウサギが初めに当てている「5個」にあと何個で8個に到達するかを考えます。その方法は「数の構成」を解く方法になります。十分に練習が積まれているならば、暗算でできてしまいますが、基本をしっかり理解していれば「5個」に追い足していく方法で、「6・7・8」と考えていけばよいのです。つまりあと3個当てればよいのです。

 大人の感覚だと、どうということもない問題なのですが、子どものイメージの中ではとても難しく感じている問題がたくさんあります。特にこの白百合のような問題は、しっかりとしたイメージを持って問題を聞くことができなければ、全く対応できなくなってしまいます。
 しばらく以前から、小学1年生が取り組む「足し算」や「引き算」を、幼児期から指導することが流行になっています。しかし「1+1」「5-2」のようなものや、つい先日電車の中で見かけた年少児らしき子は、「13+1」「13+2」「13+3」・・・を唱えていましたが、このような数字とその操作方法だけを記号化した問題を、いくらできるようになったとしても、上記の白百合の問題は、絶対に解くことはできません。問題の中にはいろいろな数が登場していますが、その中のどれが必要な数なのかが分からなければならないのです。そして足すのか引くのかの判断も自分でしなければならないのです。
 つまり論理的な思考能力が必要なのです。計算練習だけではだめなのです。また論理的な思考能力が計算練習で身につくと思ってはいけません。そんな簡単なものではありません。

 幼児にも論理性は学べます。その基本は、日常生活の中にある様々な場面にある数の操作を、しっかり意識するところから始めなければなりません。その数の操作の必然性を感じることから、「数える、多い少ないを調べる、増減を判断する、分ける」などの、一つ一つの操作方法をしっかり学習していくことが大切です。その積み重ねによって身についた論理的な思考能力が、問題を聞いたときに瞬時にその意味を理解し、その操作方法をイメージできる力になります。その力は小学校受験、特に数の問題を解くのに必要なだけでなく、その後の全ての学習にも大きな効果をもたらすはずです。

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