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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

その他:観察と実験(立教小学校)

第38号 2006/04/13(Thu)
齋藤 洋
その他:観察と実験(立教小学校)
※ サイコロ状の積木4個と球1個が机の上にある。これを先生の指示通りに、木製のクレーン車ですくい、トラックの荷台に乗せる。

  • まず、四角い積木を2個すくって下さい。
  • 四角い積木だけを、4個全部すくって下さい。
  • 球も一緒に、5個全部をすくって下さい。
  • 5個全部をすくって、ダンプカーに乗せて下さい。全部乗せたら、ダンプカーのスライドレバーを動かして、積木を落として下さい。

※ 木製のクレーン車とダンプカーのおもちゃがある。立方体積木4個、木製の球1個が机の上に転がっている。クレーン車のクレーンの先には皿がついていて、すくうことができる。クレーンは、ハンドルを回すと上下に昇降する。クレーン車は、手で押して動かせばよい。

 立教小学校小学校の、とても珍しい入試課題です。観察と実験は、2日間入試の両日に分けて行われました。上記の課題はその2日目の部分で、実際に子ども達が挑戦するところです。
 1日目の試験の最後に、先生が行う実験を見せてもらいます。それを子ども達はじっくり観察します。そこで行われたことが、翌日の課題に必要な大切な情報を含んでいるのです。それは次のようなものでした。

水の入った水槽に、サイコロ状の積木4個と球1個が乗った円形の発砲スチロールが浮かんでいる。積木だけを四角い網を使って全部すくうには、どうしたらよいか考えて発表する。いろいろな意見が出た後、先生がどうするか教えてくれる。

※水槽の角に発砲スチロールの台を寄せて、台の手前を網で下に押しつけ、台を傾けて、球だけを転がし水中に落とす。それから積木4個をゆっくり滑らせて網で受け止める。

 この課題中しっかり集中して見ているかどうかも、行動観察のポイントになっていると考えられます。この時に、お友達とお話していたり、じゃれていたり、静かにはしているが先生のほうを見ていなかったりということが、減点の対象となるはずです。
 そして、しっかり集中していたかどうか、先生のアドバイスをしっかり心に留めたかどうかが、翌日の「実験」でどんな活動できるかにつながっているのです。
 心に留めなければならない大切な情報は次の点です。

  • 動いてしまうものをすくう場合、端に寄せてかからすくうようにする。
  • いくつかのものを同時にすくう場合、それらを一箇所に寄せておくと良い。
  • 球は転がり、扱いにくいので工夫が特に必要になる。

 翌日は同じ「すくう」という活動ですが、水槽は使わず、机の上での活動になりました。どちらも楽しそうですが、実際はかなり難しいものです。そして状況としては、若干違いがあり、全く同じようにやろうとしても無理があります。その違いは、自分で工夫する部分になります。

 3回の取り組みは、それぞれ違う指示でした。まず初めに2個の積木だけをすくう練習をします。
 2回目からが本番です。まとめ易い、四角い積木だけ4個をすくいます。クレーン車を移動し、積木に近づけます。クレーンを机の表面の高さに降ろし、ばらばらに置いてある4個を、クレーンをうまく操作して一箇所に集めます。このまますくおうとしても、積木はクレーンの端に押されて動いてしまうので、そのまま動かして行き、スペースを囲んでいる壁まで寄せます。そこでクレーンにすくい取るのです。
 3回目は、球も一緒にすくわなければなりません。やはりクレーン車を移動し、積木と球に近づけ、クレーンでばらばらに置いてある4個の積木と球を、一箇所に集めます。そして壁に寄せたら球を4個の積木で囲むように工夫します。これをしっかりやらないと、クレーンについているお皿は平面なので、すくった途端に球はすぐに転がり落ちてしまいます。落ちたらやり直しです。すくう前に積木で球を囲むのが、一番難しいところです。うまくすくえたら、クレーンを静かに上げ、ダンプカーの荷台まで、すくったものが落ちないように運びます。ここも細心の注意が必要なところです。ダンプカーの荷台の上まで運んだら、後は簡単です。

 この入試問題とは思えない課題の中に、今どの学校でも求めている子ども像を感じます。
 日頃から、遊びの中でいろいろな工夫を試し、結果を得ることを経験していること。自分の得た結果から、その原因をたどることができるようになっていかなければなりません。人の活動についてもしっかり観察し、その中にあるいろいろなポイントをつかみ取る力を養っているかどうかも重要です。子どもは周囲の人から学習するのです。
 難しいことはすぐに投げ出す子が多い中、この課題に取り組む様子で、子どもの日ごろの様子がはっきり分かるように思えます。

 このような思考と活動ができるようになるためには、どうしたらよいのでしょうか? ただたくさん遊ばせておくことで、すばらしい成長をしてくれる子もいないわけではありません。しかしそのためには、その環境が必要です。いずれにしても、ご両親が子どもに与える、「環境」、「道具=具体物」、「言葉」そして「関わり」に、かなりの配慮が必要だろうことは確かです。このことは論理的な思考力を求められるペーパーテストにおいても、最近は特に重要になってきている点だと思います。こぐま会の方針そのものです。

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