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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

記憶:位置の記憶(成城学園初等学校)

第29号 2006/02/02(Thu)
齋藤 洋
記憶:位置の記憶(成城)
  • ハートとダイヤ9枚のトランプが3×3方眼状に並んでいる。それをよく見て覚え、後で裏返しにしてから、指示された場所は何だったかを答える。

 3×3方眼の中に、具体物が配置されている記憶の問題でも、十分に難しいのですが、この問題はトランプを使用しているので、それをはるかに超えた難易度です。しかしトランプの神経衰弱をやった経験がある子ならば、それとイメージが重なるため、記憶する必然性を感じることができるため、結構正答できてしまったのかもしれません。

 3×3方眼上の具体物の記憶は、学習院で出題されたことがありました。9個の果物の位置を記憶し、その中で隠れている3箇所には何があるかを口頭で答えるという問題でした。見えている部分があるため、完全に記憶できていなくても、見えているもの以外で、そのあたりにあった果物を答えることができるというものです。しかし報告に来てくれたこの中で、この問題には触れたがらない子が何人もいるほど、十分に難しかったのです。

 記憶していく方法は、上記の成城の問題でも学習院の問題でも同じです。しっかり一つずつ、場所とものを確認していくしかありません。その際にどこから記憶していったらよいかはいろいろです。しかし次の2つの方法が基本です。

  • 上の列、真ん中の列、下の列の順に、いずれも左から順番に記憶していく。
  • (3×3の場合)中心をまず覚え、それを基準にして上下左右、そして斜めを順番に憶えていく。

 順番に記憶していっても、左からや右からを混ぜたり、回るように憶える子がいますが、再現する時に違う方法を採ってしまう場合が多く、当てになりません。
 中心から憶える方法は、中心のある3×3や5×5方眼等や、同心円を使った位置の記憶でしか使えませんので、一般的には応用の効く上から順番がよいでしょう。

 さて、上記のトランプの記憶をさらに分析していきましょう。
 トランプのマークは、ハートとダイヤの2種類だけでした。その数字と絵カードがあったのかどうかは判明していませんが、いずれにしても対応させて記憶する要素が多いのは確かです。学校側も神経衰弱をイメージして作った問題だと思われますので、同じ数字(絵カード)で、マークが違うものもいくつかあったと思われます。ということは? 上から順番に憶えるより、同じ数字(絵カード)をセットにして憶える方法が有効なのです。ただしその際にマークの違いをしっかり確認する必要はあります。全くセット化できないカードもあるかもしれません。それは後回しでよいのです。

 このように、同じような「位置の記憶」の問題であっても、その記憶方法は様々です。このことを考えると、パターン化された記憶方法も必要です。しかしそれだけを練習するのではなく、その並び方や、記憶するものによってよりよい方法を判断できるようになったら、それが本当の高い記憶力だと言えるのではないでしょうか。

 この成城の問題は、明らかに難しい問題なのですが、その中に面白さも含まれています。成城は記憶の問題を位置の記憶以外にも様々出題する学校です。しかしいつも驚かさせられるのは、子どもが憶える意欲を掻き立てられるような、工夫された出題が多いことです。
 確かに他校では機械的な記憶の問題が多いのは事実です。しかし記憶力を養う練習の過程で同じことをやる必要はありません。練習の際には子どもが興味を持てる素材、方法を工夫してあげること。それが本当の記憶力を育て、いずれ憶えることそのものの魅力を知ることにつながるでしょう。そしてつまらない記憶の問題にも、意欲的に取り組めるようになっていくはずです。

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