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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

言語:話の内容理解(東京女学館小学校)

第27号 2006/01/19(Thu)
齋藤 洋
言語:話の内容理解(東京女学館小学校)
 加奈ちゃんは朝ごはんのサラダをつくるお手伝いをしました。胸にチュウリップの模様がついた白いエプロンをして手を洗いました。お母さんから頼まれて、棚からザルを出しました。サラダの材料はトマトとキュウリとレタスです。
 トマトは手に乗せられるくらいの大きさ4個に加奈ちゃんが切りました。キュウリはお母さんが切りました。レタスはお母さんと一緒に食べられるくらいの大きさに手でちぎりザルのなかに入れて、水で洗いました。
 サラダの他にはお母さんがフライパンで目玉焼きを作ってくれました。加奈ちゃんは朝ご飯にサラダと目玉焼きと牛乳とうず巻きパンを食べました。

問1.加奈ちゃんのエプロンはどれですか、を付けて下さい。

問2.加奈ちゃんがサラダと目玉焼きの他に食べたものにを付けて下さい。

問3.加奈ちゃんが使ったものにをつけてください

 入試問題の中で、どの学校でも必ずといってよく出題される問題に「話の内容理解」があります。特に近年は、そのお話がとても工夫して作られている印象です。

 「話の内容理解」は、小学校における国語の授業の前段階と考えても良いのですが、小学校入試の「話の内容理解」には、それ以上の要素も含まれている場合が少なくありません。それは日常生活の中での常識問題であったり様々です。

 上記の東京女学館の問題は、朝の食事を準備する場面についてです。子ども達から聞き取りをしたお話をまとめたものなので、実際はもう少し長かったと思いますが、一般的な「話の内容理解」の問題と比べて、どちらかと言うと短い文章です。その中にかなり細かい描写があります。情報が多いので、子どもが記憶できるレベルとしては、かなり難易度が高いものになっています。問題としては、3問ともそれほど難しいものではありませんでしたが、お話を聞いている段階では、不安になった子が多くいたはずです。
 最近のお話は、このようにお話の中に情報が多いのも一つの特徴です。受験をしたほとんどの子が、「長ーいお話だったよ!」と報告してくれます。この東京女学館の問題ですらです。
 この問題の中で難しいのは問3です。選択肢には、包丁・まな板・ザル・鍋・おたま・ガラスのボウルがありました。加奈ちゃんが使ったものは、文章中に具体的にはザルしか出てきません。しかしキュウリを切ったのですから、当然包丁とまな板は使っていたはずです。これが常識的な内容が含まれているという意味です。ただ文章を記憶しているだけでなく、場面をイメージすることができるかどうかが問われているのです。

 「話の内容理解」の問題は、このように「場面のイメージ」ができるかどうかが問われているものがとても多くなっています。そして「場面のイメージ」は、物語を聞くときには欠かせないものです。小学校の国語の教科書を読む際にも重要です。
 皆さんは、子どもに対して絵本の読み聞かせを毎日のようにしていらっしゃると思います。それはなぜですか?

 大人どうしで同じ話題で話をしていても、実は若干違うとらえ方や印象を持っていることがあり驚くことがあります。幼児ならばなおさらです。受験をする年齢の5~6歳児だと、もう十分に大人と会話ができますが、それは家族や幼稚園の先生との場合で、生活圏が違う人との会話では共通の認識を持つことはかなり難しいはずです。実は小学校の先生が作るお話は、内容的に今の平均的な幼児向きではないものになっている可能性があります。
 また入試の「話の内容理解」の問題では、子どもは絵を見ないで話を聞くので、その練習ばかりを積んでいる幼児教室があると聞くことがあります。しかし絵の無いお話を聞いているばかりで、子ども達はそれを語っている大人と同じイメージを積み上げていけるのでしょうか?

 毎日の絵本読み聞かせの効用は、ここにあるのだと思います。絵を見ながらお話を聞くことで、その文章が意味していることを、読んであげている者と同じイメージでとらえることができるのです。ですから絵本の選び方一つで、子ども達の中にある世界観が決まってしまうと言ってもよいでしょう。もちろん長い成長過程の中でその世界観は変化していきます。でも小学校入試までに、話の内容を理解できる力を高めるためにある時間はそれほど長い時間ではありません。ですから絵本の読み聞かせは重要です。
 さらに図鑑やテレビを見て話し合うこと、そして何よりも日常的な会話の豊富さがとても大切なのです。それを積み重ねていくことで、お話を聞きながら、できる限り正確なイメージを持てるようにしてあげることが望まれるのです。

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