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週刊こぐま通信
「最新入試問題で求められているものは何か?」

数:一対多対応の複合問題(東京女学館小学校)

第13号 2005/09/22(Thu)
齋藤 洋
数:一対多対応の複合問題(東京女学館)
※椅子が8脚並んでいる絵が描いてある。

条件
ゾウは大きいので、1頭で2つの椅子を使います。
ネズミは小さいので、2匹で1つの椅子を使います。
ウサギは1匹で、1つの椅子を使います。

  • ぞうが1頭、ねずみが4匹、うさぎが2匹、椅子に座ります。
    椅子はいくつ余りますか? ピンクのを書いて下さい。

 数の問題の中では典型的な「一対多対応」の問題です。
 東京女学館にしては、難しい問題だなという印象でした。最近は多くの学校で、数の問題に工夫が見られます。
 この問題は、一対多対応を3つの形で複合しています。
 ゾウは一対二対応、ネズミは一対二分の一対応、ウサギは一対一対応です。
 「ネズミの座り方が子どもにとって難しいのだ」と思われるかもしれませんが、「2匹で一脚の椅子を使う」そのこと自体は大したことではないでしょう。でもゾウとネズミの座り方が、まったく逆なので、子どもを混乱させるのです。ですから重要なのは、思考の順序性なのです。

 複合問題を解くために大切なのは、考える手順。つまりどこから考えていくかという順番です。
 この問題ではもちろん、まず聞き取りの段階で、条件をしっかり記憶しなければなりません。そしてその条件と、今そこにいるそれぞれの動物の数を対応させることも必要です。
 しかし年中から年長にかけての子どもは、このような問題を聞いた時に、最初に与えられた3つの条件よりも、ゾウ・ネズミ・ウサギ、それぞれの数の方を印象的に聞き取ってしまいがちです。つまり最初の条件はさておき、「ぞう1頭、ねずみ4匹、うさぎ2匹」の方を意識するのです。ちょっと数が得意になるとすぐに、「合わせて、全部で7匹いる」としてしまう子も多いでしょう。この問題では、その合成をする必要はありません。
 そのことよりも、次のようにそれぞれの動物について、順番に考えていくことができなければなりません。

「ゾウは1頭しかいなくて、1頭で椅子2脚を使う。」
「ネズミは4匹いて、2匹で椅子1脚を使う。だから2匹と2匹で、2脚必要である。」
「ウサギは2匹いて、1匹で椅子一脚を使う。だから2脚必要である。」

 このようにして、必要な椅子の数を合わせて、2+2+2だから6脚としてもよいでしょう。それから8脚から6脚を取り去ればよいのです。

 でももっと単純な方法もあります。椅子は8脚描いてありますから、それぞれについて順番に消去していく方法が採れるのです。
 まずゾウ1頭で2脚を消します。ネズミ4匹が座る様子を思い浮かべて、2匹で一脚消し、また2匹で一脚消します。最後にウサギ2匹で2脚消します。これで残っているのは2脚になります。

 幼児が問題に取り組む姿勢として大切なのは、小学生が行うような「暗算」を、徹底して身につけることではありません。上記のように、問題で語られている意味をしっかり理解できる力と、最低限必要な数の操作の力です。そして何よりも、数字を玩ぶのではなく、慌てずに、できるところから順番に解決していく、がんばりだといってもよいでしょう。その繰り返しが、思考の順序性を養い、暗算の力を高めていくことにもつながります。
 このタイプは、今後いろいろな学校で出題される可能性があります。若干易しいものから挑戦させてあげて下さい。そして少しずつ難問化させてみて下さい。

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