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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

架け橋期の教育を考える(7)
言語教育について

第955号 2026年10月06日(火)
こぐま会代表  久野 泰可
 以前から学力の基礎として「読み・書き・計算」が大事だとされてきました。そのため、幼児期のお子さまを持つ保護者の皆さまにとっては、いつから「言葉を発し、文字を読み、書けるようになるのか」といったことが大きな関心事としてあるように思います。また、小学校以降の国語科では、「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」の4つの柱で学習内容が構成されていますが、身についた力として評価のしやすい「読む力」と「書く力」に関心が集まり、「聞く力」と「話す力」が忘れられがちになってしまっているように思います。しかし、幼児にとってまず大事なのは「読み」「書き」の前に「聞く」「話す」力をしっかり身につけておかなくてはなりません。こぐま会では、国語科につながる基礎として「言語」領域の学習を設定していますが、その中身は聞く力の代表として「話の内容理解」、話す力の代表として「お話づくり」、それに日本語の基礎として「言葉の学習」の3つを考えています。もちろん、日本語の理解はすべての領域にわたっていて、実際の中身を伴って「概念としての言語」を学ぶわけです。例えば「未測量」領域では、量の系列化を表す「大きいほうから何番目」「小さいほうから何番目」といった言語化が必要になりますし、「位置表象」領域では、「前から何番目」「後ろから何番目」といった位置を表す言語も学びます。また「数」領域においても、「どちらがいくつ多い」と答えたり、「違いはいくつ」を表現したり・・・と必ず言語化の問題が絡んできます。言語と論理は切り離せませんから、「考える力」の基礎には、論理を媒介とした言語化は必要になってきます。そこで「言語」領域の学習では、次のような内容を設定しています。
ステップ1同頭音・同尾音、しりとり
ステップ2短文づくり
ステップ3話の内容理解、お話づくり
ステップ4話の内容理解、昔話
ステップ5言葉あそび、短文づくり
ステップ6話の内容理解、お話づくり
母国語である日本語は、単に言語領域の学習だけで身につくものではありませんが、「聞く」「話す」に特化した内容として、「話の内容理解」と「お話づくり」に力を入れています。このほかに、「言葉の学習」も行っています。幼児ですからまだ文字を読んだり書いたりすることはできませんので、「聞く」「話す」を中心に、将来の読解力・作文力につなげる形で実践しています。
ところで、「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」が提唱する幼児期の学びは、幼稚園教育要領の内容に沿って作られていますが、「言葉」の領域でどんなことが述べられているか、大事なところを抜粋してここに掲載してみます。
【言葉】
 1 ねらい

経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し,相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て,言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。

  • (1) 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
  • (2) 人の言葉や話などをよく聞き,自分の経験したことや考えたことを話し,伝え合う喜びを味わう。
  • (3) 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに,絵本や物語などに親しみ,先生や友達と心を通わせる。
 2 内容
  • (1) 先生や友達の言葉や話に興味や関心をもち,親しみをもって聞いたり,話したりする。
  • (2) したり,見たり,聞いたり,感じたり,考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。
  • (3) したいこと,してほしいことを言葉で表現したり,分からないことを尋ねたりする。
  • (4) 人の話を注意して聞き,相手に分かるように話す。
  • (5) 生活の中で必要な言葉が分かり,使う。
  • (6) 親しみをもって日常のあいさつをする。
  • (7) 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
  • (8) いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
  • (9) 絵本や物語などに親しみ,興味をもって聞き,想像をする楽しさを味わう。
  • (10) 日常生活の中で,文字などで伝える楽しさを味わう。
ここでは文字の読み書きについては触れられていませんが、最後の「内容の取扱い」の留意すべき事項として「文字に対する興味関心をもつようにすること」と述べています。しかし、幼児の段階で読み書きの練習をすべきだとはどこにも書いてありません。ですから、幼児期の課題は「読む」「書く」前に「聞く」「話す」ことが大事であると明確にうたってあるわけです。しかし、入学後の文字指導へのつながりがどうしても明確になっていないため、保護者の皆さまは園に頼らず、ご家庭で文字の指導にあたっているのではないかと思います。もちろん、私も読み書きは入学後の課題でいいと思いますが、実際に子どもたちは必要に応じて読み書きをしているわけですから、指導の道筋はしっかりとつけておくことが必要でしょう。こぐま会では以下のような学習をしています。
step1-5 言語「同頭音・同尾音、しりとり」(部分)
(1) 一音一文字
  1. ものの名称がいくつの音でできているかを判断する。
  2. どこに何の音がつくかを考える。
  3. 例:最初に「あ」のつく言葉を探す。(同頭音)
  4. 例:最後に「ん」のつく言葉を探す。(同尾音)
  5. 例:上から2番目の音を探す。
(2) しりとり遊び
  1. しりとり遊びのルールを確認し、全員でしりとり遊びをする。
  2. 黒板に貼られた10枚のカードをしりとりでつながるように、全員で考える。
     ・最初のカードを指定したとき
     ・最初のカードを指定しないとき
母国語ですから、意図的な指導はしなくても文字の読み書きはできるようになりますが、日本語の基本理解である「一音一文字」の学びから始まって「同頭音」「同尾音」「しりとり」の学習はしっかり行っておくべきだと思います。それこそが架け橋期の教育のあるべき姿といえるでしょう。体験や活動から得たものを教科書やノートを使った座学につなげていくための架け橋が何もないのが、今の日本の幼児教育に欠けている点だと感じます。

小学校に入ってからの読解に関する問題点は、新井紀子氏「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社, 2018)や、今井むつみ氏「算数文章題が解けない子どもたち」岩波書店, 2022)の本の中で述べられているように、文章を読んでその内容を理解できていない子どもが相当数いるという現実を見るにつけ、「言語」について幼児期に取り組むべき教育課題を明確にしていかないと、日本の子どもたちの「読む」力の低下がこれから大きな問題になってくるのではないかと危惧します。その意味で、読解力につながる「聞く」「話す」の課題を明確にし、「読む」「書く」につなげていくカリキュラムが必要だと思います。
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