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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

タブレット教育では思考力は育たない

第945号 2026年4月7日(火)
こぐま会代表  久野 泰可
 3月21日のYahoo!ニュースで、次のような記事が掲載されていました。
 ビジネスの現場で生成AIの活用が急速に進む中、あえて「新人には使わせない」という決断を下す企業が現れ話題となっている。ある調査によれば、AIは情報収集や分析、会議の議事録作成、問い合わせ対応など、多岐にわたる分野で効率化に貢献している。エンジニアの一人は「AIがなかった時に1時間、場合によっては2時間とか数時間かかっていたものが、5分とか10分ぐらいでできるようになった。AIなしは今では考えられない」と、その劇的な恩恵を語る。一方で「新人はAI使用禁止!」というルールを打ち出す動きも出ている。
新人に「AI使用禁止令」は是か非か?「仕事の8割はAIに」という活用派 言語脳科学の権威は警鐘「ものを考える人間に一番大事なものを手放している」, ABEMA TIMES, 2026/03/21,
(参照2026/04/03)
決してAIを排除するという意味ではなく、知識の習得や経験を積み、AIの出力を評価・検証する力が備わってから使用することになると述べています。
AIをどう活用するかは、教育界にあってもいろいろ議論されています。身近なところでいえば、幼児にタブレットやスマートフォンを操作させることがいいことかどうか、子育て中のご両親の皆さまの悩みの種になっています。
また、「GIGAスクール構想」の一環として小学生以降の生徒一人ひとりにタブレットが渡され、その中味をどうするか、どう活用するかといった議論が盛んにおこなわれています。家庭学習にしても、タブレットを使った通信教育が盛んにおこなわれ、紙の問題集は隅に追いやられています。一方、デジタル教育先進国であったスウェーデンやフィンランドでは、タブレット中心の教育で学力低下を招いたとして紙の教科書に戻る決断をしたというニュースも目にしています。
私は、教育現場でのAI利用について意義は認めつつ、人間がAIより優れているはずの「自分で考える力」を育成する教育を放棄してタブレットに頼るというのは、本末転倒だと考えています。
だいぶ以前になりますが、『AI vs. 教科書を読めない子どもたち』の著者である新井紀子氏が述べていたように、例えば効率を求めて板書をさせない授業が進行している現実は、どう考えても異常です。
板書をさせると個人差が出てしまい、授業が円滑に進まないというのが理由のようですが、自分で板書することで多くのことを覚えてきた自身の経験からしても、あまりにも効率化を求める結果、大事なことを捨て去っているのが今の教育の現状のようです。
以前あるセミナーで、今後の英語教育の在り方について議論がなされている場で、「AIを使ったトレーニングシステムが今後もたくさん開発されていくだろう」と予想した若手開発者に対し、経験を積んだ大学教授は「これからはまた紙に戻っていくだろう」と予測し、私を含めた参加者の多くが驚きました。
AIが教育に与える影響は、期待できるメリットと教育上問題となるリスクがあります。特に教育現場にいる私たちにとっては、学力や思考への影響を考えざるを得ません。自分で考える前にすぐにAIに答えを求めたり、誤った情報をそのまま信じてしまったりする危険があります。ひとりひとりの学力に合わせた学びができる、外国語の練習に適している、家庭の経済状況や地域による「学習機会の差」を埋められるといったメリットを認めつつも、AIに頼る教育に傾倒していく今の流れはどこかで止めなくてはなりません。
幼児教育の現場にいて、この問題に関して強く想うのは、タブレットを使用した学習では、考える力を育てるために必要な、物事に触れ、働きかけ、「試行錯誤」する時間が保証されていないことです。私たちは、紙ではなく事物を使った教育を実践してきました。具体物・紙・タブレットの順に考えていくとすれば、学びの最初は具体物を使った教育であるべきです。ものごとを試行錯誤して操作し、その過程で物事の関係性をつかむことが、考える力、特に論理数学的思考を育てるためには必要不可欠なことです。便利さを排除し、不便な状況に置くことによって、自ら考え、答えを見つけ出す主体性が身についていくはずです。タイパ・コスパといわれる時代ですが、幼児期の基礎教育にはなじみません。デジタル教育を全く否定するつもりはありませんが、時代の流れに逆らって原則を貫くことも必要なことだと思います。AI時代の教育改革が議論されればされるほど、私たちが実践してきた「事物教育」と「対話教育」の大切さがクローズアップされていくはずです。
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