週刊こぐま通信
「代表のコラム」年長から小1へ、橋渡しの授業
第942号 2026年1月13日(火)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可
先週から入試を終えた子どもたちの「就学準備クラス」が始まりました。これまでの学習を踏まえ、小学1年から始まる教科学習への繋ぎを行います。文科省も提案している年長から小1の繋ぎの学習は、『幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会』のような理念先行の議論ではなく、具体的な学習を通して何を学べばいいのか、どう学べばいいのかを議論する必要があります。私たちが行う就学準備クラスは、1月から3月まで10回の授業を予定していますが、次のような考え方でカリキュラムを考えています。
| 算数 | 国語 | |
|---|---|---|
| 1 | たし算・ひき算って何? | 自己紹介 音読「よみかた絵本」を使って |
| 2 | たし算・ひき算の計算法 | 文章読解「物語文」1 音読 |
| 3 | 隠れた数を探せ | 文章読解「物語文」2 音読 |
| 4 | かけ算って何? | 文章読解「説明文」 |
| 5 | わり算って何? | 音読「よみかた絵本」を使って |
| 6 | かけ算の答えはどう出すの? | 読解「物語文」1 |
| 7 | 文章題に強くなる 1 立式練習 | 読解「物語文」2 |
| 8 | かけ算九九の練習と時計 | 読解「物語文」3 |
| 9 | 文章題に強くなる 2 数式を見てお話を作る(作問) | 読解「物語文」4 |
| 10 | 総まとめ | 言葉の学習 「文を書く」 |
1 算数
セブンステップスカリキュラムで行ってきたこれまでの学習を踏まえ、
- (A)
- 数の構成・数の多少・数の増減などの発展として、たし算・ひき算の考え方を身につける
- (B)
- 一対多対応の発展として、かけ算の考え方につなげる
- (C)
- 等分・包含除の学習を踏まえ、わり算の考え方を学ぶ
- (D)
- たし算・ひき算・かけ算については、数字を使った計算トレーニングをする わり算の計算は、かけ算が身についてから行うため、今回の就学準備では扱わない。ちなみに、シンガポール算数の教科書を見ると、小学校1年生の段階で、四則演算すべてを行っている。なぜ日本だけ、1年でたし算・ひき算2年でかけ算、3年でわり算というように3年間をかけて行うのか。ここに計算主義の考え方が色濃く表れている。かけ算はたし算の繰り返しだから2年になってからというように、一つの計算がわかってから次の計算に・・・ということであるが、シンガポールの算数は、計算ありきではなく、例えば「買い物」「銀行」といった生活場面に合わせて計算指導があるため、どの計算が済んでから次は・・・ではなく、生活場面の問題を解決するために必要な計算の考え方をそこで学ぶ。こぐま会の年長で行うセブンステップスカリキュラムでは、数字や計算式は使わないが、数体験として四則演算すべての問題を、お話を聞いて暗算で解く練習をしてきたので、それぞれの計算の考え方はしっかり身についているはずだ
- (E)
- 今回の算数で一番大事にしているのは、文章題を解く力を身に付けること。計算ができればいいのではなく、自分で立式できるようにするために
1. 話を聞いて式を立てる
2. 絵を見て式を立てる
3. 文章を読んで式を立てる
4. 式を見てお話をつくる
以上のような学習を組み合わせて、生活に即した文章題をたくさん解いていくことを目標にしている
もちろん計算についても力を入れますが、これまでの経験で、20問の問題を解く場合、スピードが速い子で1分、遅い子で5分かかるという具合に、歴然とした差が出てきます。そして時間がかかる原因の多くは、指を使って答えを出そうとすることです。こぐま会では、ばらクラスの時から、指を使わないで数の問題を解く暗算練習に力を入れてきましたが、ここで差がつくのです。どんな方法でも答えが出ればいいと指導されてきた子は、入試に合格してもこうしたところで差が出てしまい、その差は埋まるどころか、これから難しい計算に進めば進むほど差が広がります。幼児期にどんな数の学び方をしてきたか、それはとても大事なことです。 - (F)
- 式を見てお話をつくるというのは、例えば次のようなものです。
「次の式を見てイチゴのお話をつくってください」
1. 4+2
2. 4-2
3. 4×2
4. 4÷2
答えがわからなくても、お話ができるかどうか。例年行ってきていることですが、この中で4×2のお話づくりが一番難しいようです。文章を読んで式を立てるだけでなく、その反対の式を見てお話をつくる・・・こうした学習が必要なのです。
2 国語
小学校以降の国語科では、「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」の4技能が求められます。特に幼児期は、「聞く」「話す」を中心に学習を進めてきましたが、これからはそれに加え「読む力」と「書く力」にも力を入れていかなければなりません。特に小学生を指導していて気付くのは、「音読」がどれだけ上手にできるかどうかが、国語力の目安のなるということです。特に問題なのは年長から小学1年生になる段階で、拾い読みをしてしまう子が多くみられるということです。なぜ拾い読みになってしまうのか。それは、私たちがセブンステップスカリキュラムで重視してきた「一音一文字」の考え方がしっかり身についているかどうかと関係がありそうです。たとえば「りんご」の場合「り」「ん」「ご」と一文字一文字読むのではなく「リンゴ」とまとめて読むためには、日本語の成り立ち、つまりいくつかの音が組み合わさって一つの言葉ができているということの理解が必要だということです。昨年の就学準備の授業の際、8名中4名が拾い読みをしていたのを見て、これを克服するには、言葉がどのように形成されているか、いくつかの音の集まりで一つの言葉ができているということを理解させ、短い文章を読ませる練習に意味があるのではないかと考えました。今年は、長い文章を読む前に短い文章を読む、場合によってはその短い文章を暗唱させ、そのうえで文章を読ませるのがいいのではないかと考え、「よみかた絵本」(戸田デザイン研究室) を使って実践してみました。
すると、長い文章だと拾い読みになる子が、みんなで声を出して読み合わせをした後に一人ひとり読ませると、文章のリズムを覚えたせいか、すらすら読んでいました。暗唱した文章を、文字を見て読んでみることには、拾い読みをする子にとっては意味のある練習法だと思います。
今回使用した「よみかた絵本」は、出版元に許可を取って、ひとり1冊ずつ本を持たせ、それを使って音読練習をしましたが、内容的には3~4歳頃から使っている絵本だと思います。なぜそんな易しい絵本を使うのか疑問に思われる方も多いと思いますが、声を出してすらすら読めたという経験は、これから1年生になる子にとってはとても意味のあることですし、こうした易しい絵本をまず使って読ませるのは効果があると思います。左のページにかわいい絵があり、右のページには5行ほどの短い文章が書いてあり、楽しく学習できるだけでなく、暗唱用にも使えますし、文字練習のために暗唱した文章を原稿用紙に書いてみるということもできます。これから1年生になる子どもたちの国語の学習にはとてもいい教科書になるのではないかと思っています。
今後、少し長い生活文や物語文の音読練習もしていきますが、音読練習の後は内容について問いかけ、口頭で答えてもらいます。読解は、自分で読んで質問に対して書いて答えていく形式をとりますが、文字がまだ十分書けない段階の子どもたちですから、質問に口頭で答えることをまず練習し、そのうえで書いて答える練習をしていくつもりです。
国語につながる内容としては、文を読むだけでなく文字を正しく書く練習も必要ですし、最小限の文法も学ばなくてはなりませんが、限られた時間での授業ですので、今回は音読を中心に、読解につながる練習に時間をかけていきます。
また、国語科は「言語の力で論理を育てる」という大事な課題があります。これは単に国語科だけの問題ではなく、数理の課題とも関係がありますので、算数の授業の中で、答えの根拠を説明させるなどを通して、論理を育てる教育を実践していきたいと思います。
