週刊こぐま通信
「代表のコラム」2026年度私立小入試総括(1)
第940号 2025年12月3日(水)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可
今年は新型コロナ5類移行後の3回目の入試となり、今後の入試の行方を予想する意味でもとても大事な年でした。今年の入試がどのように行われたか、さまざまな角度から分析し、今後の対策に生かしていかなければなりません。その意味で、試験前から以下の点に注目していました。
- コロナ禍明け2年間の問題は、基本問題がほとんどだった。さて、3年目となる今年の入試は、コロナ禍以前のような難しい問題がどの程度出されるのか、今後の入試問題を予想するうえで、しっかりと分析しておかなければならない
- 入試問題が多様化する中で、学力以外にどんな能力が求められているか
- 合否判定はどのように行われたか。実力主義と言われて久しいが、実力主義の中味は何なのか
- ペーパー問題でよく出される単元を、入試前に27単元あげて問題集も作ったが、実際の入試はその予想が的中したのかどうか
2については、学力問題が易しくなっていく中で、行動観察に象徴される非認知能力を見る問題がいろいろ工夫され、この点については、コロナ禍では見られなかった問題の豊富さが感じられる
同様に面接試験もいろいろ工夫され、単に質問に答えるだけでなく、共同作業を通して家庭での親子関係の在り方を見ようとする課題が増えている
3の合否判定については、基本的には実力主義で行われたと信じているが、グレーな部分も垣間見られる。実力主義と言ってもペーパーの得点に象徴される学力主義ではないことは明白であり、ペーパー試験で高得点してもそれが即合格につながらないのが、小学校入試の現実である
4については、入試前の9月に、今年の入試に向けてよく出題される27単元を示し、問題集も発行した。そこで取り上げた27単元が本当に入試に出されたのか、それを今集計しているが、多くの問題がこの27単元の中から出題され、予想が的中したことが明らかになった。たとえば10枚のペーパーを出題したある学校の内容は、次のとおりである
- 話の内容理解
- 重ね図形(1)
- 重ね図形(2)
- 折り紙の線対称
- 一対多対応
- 回転図形
- 数の増減
- 理科的常識・・・卵から生まれるもの
- 理科的常識・・・土の中で生きているもの
- 仲間はずれ
| 1 | 単位の考え方 | |
|---|---|---|
| 2 | シーソー | 雙葉小学校/光塩女子学院初等科 |
| 3 | つりあい | 聖心女子学院初等科/日本女子大学附属豊明小学校 |
| 4 | 左右関係の理解 | 東洋英和女学院小学部/田園調布雙葉小学校 |
| 5 | 四方からの観察 | 田園調布雙葉小学校/立教女学院小学校/光塩女子学院初等科 |
| 6 | 飛び石移動 | |
| 7 | 地図上の移動 | |
| 8 | 一場面を使った数の総合 | 聖心女子学院初等科/東洋英和女学院小学部/立教女学院小学校/横浜雙葉小学校/光塩女子学院初等科 |
| 9 | 数の増減 | 東洋英和女学院小学部 |
| 10 | 一対多対応 | 白百合学園小学校 |
| 11 | 数のやりとり | |
| 12 | 交換 | |
| 13 | 点図形・模写 | 日本女子大学附属豊明小学校/東洋英和女学院小学部/田園調布雙葉小学校/横浜雙葉小学校/慶應義塾横浜初等部/光塩女子学院初等科/東京農業大学稲花小学校 |
| 14 | 図形構成―分割 | 聖心女子学院初等科 |
| 15 | 線対称 | 聖心女子学院初等科/白百合学園小学校/東京女学館小学校/田園調布雙葉小学校/早稲田実業学校初等部/洗足学園小学校 |
| 16 | 重ね図形 | 白百合学園小学校/日本女子大学附属豊明小学校/横浜雙葉小学校/学習院初等科/慶應義塾横浜初等部 |
| 17 | 回転図形 | 聖心女子学院初等科/白百合学園小学校 |
| 18 | 一音一文字 | 雙葉小学校/東洋英和女学院小学部 |
| 19 | しりとり | 東洋英和女学院小学部/横浜雙葉小学校/光塩女子学院初等科 |
| 20 | 言葉つなぎ | |
| 21 | 言葉づくり | 東京農業大学稲花小学校 |
| 22 | 話の内容理解 | 雙葉小学校/聖心女子学院初等科/東京女学館小学校/白百合学園小学校/日本女子大学附属豊明小学校/東洋英和女学院小学部/立教女学院小学校/光塩女子学院初等科/田園調布雙葉小学校/横浜雙葉小学校/学習院初等科/早稲田実業学校初等部/洗足学園小学校/東京農業大学稲花小学校/慶應義塾横浜初等部校 |
| 23 | 理科的常識 | 雙葉小学校/白百合学園小学校/洗足学園小学校/立教女学院小学校/東京農業大学稲花小学校 |
| 24 | 社会的常識他 | 聖心女子学院初等科/東京女学館小学校/立教女学院小学校/洗足学園小学校/慶應義塾横浜初等部 |
| 25 | 魔法の箱 | 雙葉小学校/立教女学院小学校 |
| 26 | 回転推理 | |
| 27 | 図形系列 | 聖心女子学院初等科/立教女学院小学校 |
単位の考え方/飛び石移動/地図上の移動/数のやりとり/交換/言葉つなぎ/回転推理
などであることがわかります。こうした課題は、相当難しい問題に発展していきますが、その出題が見当たらないことを考えると、やはり2026年度入試の問題は基本問題中心であったことがわかります。こうした今年の傾向を踏まえて対策をとる必要があります。
本コラムでは、領域ごとにどんな問題が出題されていたかを分析していきますので、今後の更新をぜひお待ちください。
