ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「代表のコラム」

入試速報(6)
「法則性の理解」で思考力を問う

第916号 2024年12月20日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 入試問題における法則性の理解として私たちが括っている問題には、3つの柱があります。それは、「図形系列」「魔法の箱」「回転推理」です。それ以外にも工夫された推理問題が出されています。2025年度入試の23校分の問題を分析すると、これに関する問題が次のように合計10校で出されています。
  1. 図形系列   5校
  2. 魔法の箱   3校
  3. その他推理  2校

今年は、回転図形のように回転の要素を取り入れた問題はいくつか見られますが、観覧車や回転テーブルに象徴されるいわゆる回転推理の問題の出題は、23校のうちには見当たりません。やはり以前からある図形系列の問題と魔法の箱の問題が、「法則性の理解」の中では多いように思います。ではどんな問題が出されたか見てみましょう。

図形系列(1)
  • 並んでいる順番のお約束を考えて、★と◆に入る形を下のそれぞれのお部屋から選んでをつけてください。
図形系列(2)
サクランボのお部屋で練習してみましょう。上のお部屋の絵の順番に、模様が並んでいるところを下のテープから探します。ここには2つあるので、右のお部屋にが2個かかれています。
  • 同じように、それぞれ上のお部屋の順番に模様が並んでいるところを探して、その数だけ右のお部屋にをかいてください。

問いかけの仕方は違いますが、並び方の法則性を発見する問題です。空欄を埋める(1)の形式が基本ですが、(2)は同じ並び方をしているところを探し、それが何か所あるかを聞く形式のような問題になっています。一般的に図形系列の解き方は、口ずさんでみる方法と指送りで探す方法の2つがありますが、(1)のような場合は口ずさむことは難しいので、指送りで解くしかありません。しかし、この問題は横一列のまっすぐではありませんので、やや間違いやすいと思います。どちらに向かって進んでいるかをしっかり見ないといけません。

魔法の箱(1)
お日様のお部屋を見てください。が赤い箱を通ると数が1つ増えます。が黄色い箱を通ると数が1つ減ります。が青い箱を通ると、入れた数と同じ数だけ増えます。
  • では、月のお部屋を見てください。はじめの数がそれぞれ箱を通ると、最後にいくつになりますか。その数だけ下のお部屋に青い○をかいてください。
魔法の箱(2)
  • 上を見てください。ウサギとネコの箱を通ると、左のものが右のように変わります。下を見てください。左のものがウサギやネコの箱を通るとどう変わりますか。右から選んでをかきましょう。

魔法の箱の問題は、主に数の変化が問われます。(1)が典型的な問題ですが、(2)のように変化する内容が数の変化ではなく、色が変わったり、位置が変わったりする場合もあります。いずれにしても、箱を連続して通過する場合の解き方に工夫が必要です。また、主に数の変化において、出てくる数を見て最初に入れた数を問いかける「逆思考」の問題が出される場合もありますので要注意です。
この法則性の理解を広げて考えてみると、「推理」と括っている問題もあり、今回はいくつか見られます。今回出された問題が、子どもたちが経験する「オセロ」や「だるま落とし」を使っているところに注目してください。遊びとして経験している課題を素材とし、考える力を問う問題として出題されているところは、今後の問題作りに必ず影響すると思います。

法則性の理解(オセロ)
黒と白のコマがあります。それぞれコマを置いたとき、自分の色で相手の色を挟んでいると、間にある相手のコマを取ることができます。 縦、横、斜めで挟むことができます。
(1) お日様のお部屋を見てください。黄色い枠の中に黒いコマを置くと、白のコマを何個取ることができますか。その数だけ下のお部屋に青いをかいてください。
(2) お月様のお部屋を見てください。白をなるべくたくさんひっくり返すには、どこに黒いコマを置けばよいですか。その場所に赤いをかいてください。

オセロはこぐま会で推奨してきたゲームの一つですが、それが初めてペーパー問題として出されました。幼児期の思考力を問うゲームとして、オセロはいろいろな要素を含んでいます。より多くのコマを自分のものにするために、どこにコマを置いたらよいかを考えること。その際、上下左右だけでなく斜めに挟めるかどうかも大事な観点ですが、実際にやってみると、この斜めの挟み方を忘れてしまう場合が多いのです。上下左右だけでなく、斜めの視点も持てるかどうかがオセロのポイントです。どこに置けば自分がもらえるかという問題だけでなく、どこに置いたら一番多くひっくり返すことができるかどうかという(2)のほうが難しかったと思います。

だるま落とし
見本
(1) 青いお部屋を見てください。左の矢印のところを叩いて抜くと、ダルマ落としはどうなりますか。右から選んでをつけてください。
(2) 赤いお部屋を見てください。左の矢印のところを叩いて抜きました。そのあと下から3番目も抜くと、ダルマ落としはどうなりますか。右から選んでをつけてください。
(3) 黄色のお部屋を見てください。左の矢印のところを叩いて抜きました。そのあと下から3番目を抜いて、そのあと下から3番目を抜くとダルマ落としはどうなりますか。右から選んでをつけてください。


だるま落としを経験していない子に理解してもらうために、初めに例題があり、だるま落としの原理を伝えた後、この3つの問題が出されています。 3つの問題を見ると、質問の順序が工夫されています。
(1)は基本問題です。下から3番目を抜けばそれがなくなり、上のものが落ちてきますので、積み方の順序はすぐにわかります。
(2)は、一度抜いた後、残ったうちの下から3番目を抜くわけですから、映像としてもわかりやすいはずです。抜いたものが下から4番目ですから、2回目に抜く下から3番目は影響を受けません。
(3)では、下から2番目を抜いた後に残ったつみ木の下から3番目は、下から2番目がなくなった後の下から3番目ですから、それを抜いた後のつみ木で考えなくてはなりません。そのうえ、残ったものの中からまた下から3番目を抜くわけですからどれがなくなりどれが残っているかを確認してから、下から3番目を抜かなくてはなりません。なくなるものと残ったものをしっかり区別できるかどうか。この問題は相当考えさせる問題です。このように同じだるま落としでも、だんだん質問が難しくなっていく・・・これが学校側の工夫だと思います。

以上、法則性の理解と推理に関する問題を紹介しましたが、遊びやゲームを通して考える力を問う問題は、今後も増えていくと思います。入試はペーパーで出されることがほとんどですが、考える力は実際に経験することで身につきます。これまでの入試では、このほかにトランプを使った問題も良く出されていますので、ぜひゲームをご家族で楽しむ経験を持ってください。

読み・書き・計算はまだ早い!

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

 KUNOメソッド こどもがかしこくなる絵カード(幻冬舎)

幼児の日常生活の中にある学びをカード化!
おうちで体験できるKUNOメソッド
子どもたちの生活の中でできる学習経験を、ご家庭でより実践しやすいようにカード化いたしました。
お求めは、SHOPこぐまこぐま会ネットショップ 全国の書店・各書籍ECサイトにて

PAGE TOP