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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

入試速報(4)
日本語の理解に関する問題が増えている

第914号 2024年11月29日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2025年度私立小学校の入試もほとんど終了し、これから国立附属小学校の入試がはじまります。これまで3回にわたり、すでに終えた私立小学校のペーパー問題を分析してきましたが、今回は「言語」領域でどんな問題が出されたかを分析しお伝えします。手元にある、女子校・共学校合わせて16校の問題の中から言語領域の問題を単元別にピックアップすると次のようになります。
     
  1. 話の内の容理解     16校
  2. 一音一文字      5校
  3. 同頭音・同尾音    4校
  4. しりとり       5校
  5. 言葉づくり      2校
  6. 言葉つなぎ      1校
  7. 動詞の理解      1校
  8. お話づくり      3校

以上のようになりますが、これをまとめてみましょう。
(A)言語領域の問題は、将来の国語科につながる基礎になります。国語の4技能には、「聞く・話す・読む・書く」がありますが、小学校入試では、「読む・書く」は基本的には出題されず、「聞く・話す」が中心になります。聞く力の代表として「話の内容理解」、話す力の代表として「お話づくり」がありますが、テスト形式から考えて、ペーパー問題の中心は「話の内容理解」になります。どの学校でも1問は話の内容理解に関する問題が出されると考えておいてください。

(B) 残り一つは、「言葉の理解」に関する問題です。読み・書き・計算といわれるように、学力の基礎として必要な「読む力」「書く力」に必要な日本語の理解に関する問題が増えています。その大前提が「一音一文字」の考え方です。日本語は一つの音が一つの文字であらわされ、それがいくつか集まって言葉を構成しているという考え方です。ですから、いくつの音でできているか、最初は何の音か、最後は何の音か、上から2番目は何の音かなどを問う問題が基本です。そのうえで、最初の音が同じ言葉を探す「同頭音」、最後の音が同じ言葉を探す「同尾音」、そして前の言葉の最後の音を次の言葉の最初に持ってくる言葉遊びとしての「しりとり」というように、すべて関連した問題なのです。そのうえ最近では、指定の場所の音を使って新しい言葉を作る「言葉づくり」(真ん中の音を使って新しい言葉を作りましょう)、また下から2番目の音が次の言葉の最初になるようつないでいく「言葉つなぎ」のような課題も出始めています。このように「一音一文字」の考え方が応用された問題が、数多く出されています。この一音一文字はどちらかというと「名詞」に関する問題が多いですが、もうひとつ大事な観点として動きをあらわす言葉、「動詞の理解」も大事です。動きを表す言葉をたくさん習得していると表現が豊かになります。将来の作文教育のことを考えると、動きを表す「動詞」の理解は大事です。入試ではよく「同音異義語」として出題されています。
以上みてきたように、小学校入試における言語領域の問題は「話の内容理解」「お話づくり」「言葉の理解」の3点に絞られますが、その中でも一音一文字に関する出題が増えているのが最近の傾向です。
ではどんな問題が出されたか、具体的に見てみましょう。

話の内容理解
・次のお話を聞いて後の問題に答えてください。
 花子さんとお父さん、お母さん、弟のまさし君は、花子さんのお友だちのお家のクリスマスパーティーに招待されました。花子さんは、リボンが3つ、ポケットが2つついたお気に入りのお洋服を着ました。お友だちのお家には電車に乗って行きます。電車の窓から、屋根に雪が積もった家がたくさん見えました。駅に着いて電車を降りると、駅の近くに薬屋さんとケーキ屋さんの間にお花屋さんがありました。花子さんたちは、そこでお友だちのお家に飾るクリスマスリースを作ってもらいました。お友だちのお家に向かって歩いている途中、道に小さな足跡がたくさんついていて、その先には小さい雪だるまがありました。花子さんは「かわいいね。クリスマスパーティーから帰ったら、小さい雪だるまを作りたいな」と言いました。それを聞いたまさし君は、手の平をひろげて「僕はこのくらい大きい雪だるまを作りたい」と言いました。お父さんは「そうだね。お家に帰ったら作ろう」と言いました。しばらくしてお友だちのお家に着きました。花子さんとお母さんはソファーに座って、お父さんとまさし君は向かいのイスに座りました。ハンバーグとケーキをご馳走になって、夢のような時間を過ごしました。大きなお部屋にはピアノがあったので、花子さんはお家で練習した曲を弾くことにしました。1曲目は「森のくまさん」、2曲目は「ヤギのゆうびんやさん」、3曲目に「ウサギのダンス」という曲を弾きました。弾き終わると、家族やお友だちが大きな拍手をしてくれました。花子さんは嬉しくなりました。 帰り道、花子さんはお父さんから「パーティーはどうだった?」と聞かれたので「楽しかった!来年もクリスマスパーティーに行きたいな」と答えました。そのあと、花子さんたちはお気に入りのお店に寄りました。花子さんはホットケーキとジュース、まさし君はドーナツとジュースを注文しました。お母さんはショートケーキと紅茶、お父さんはフルーツの盛り合わせとプリンと紅茶を注文して、みんなで食べました。 帰ってから花子さんとまさし君とお父さんは、大きな雪だるまを1個作りました。
       
問1.イチゴのお部屋を見てください。お話の季節と同じ季節の絵にをつけてください。
問2.リンゴのお部屋を見てください。お花屋さんがあった場所で正しいものにをつけてください。
問3.バナナのお部屋を見てください。花子さんは何人家族ですか。その数だけをかいてください。
問4.ブドウのお部屋を見てください。花子さんがピアノで2番目に弾いた曲に出てくる動物にをつけてください。
問5.ミカンのお部屋を見てください。花子さんが着て行ったお洋服にをつけてください。
問6.パイナップルのお部屋を見てください。花子さんがお店で食べたものに、お父さんが食べたものに×をつけてください。


花子さんがクリスマスパーティーに招待された時の話です。経験のある子は、それをイメージして聞けたと思います。そのうえで、季節・寄ったお店の位置・何人家族か・ピアノで弾いた曲・身につけた洋服の特徴・家族がお店で食べたものなどについて質問されています。質問の内容は難しくありませんが、どれだけ思い出せるか記憶の要素も絡んでいて、満点を取るのは難しいかもしれません。どの学校でも出される話の内容理解は、大体がこれくらいの長さの話を聞いて答えなければなりません。

一音一文字
  • この中で「ポスト」のように、名前に「ぱぴぷぺぽ」の音がつくものはどれですか。の中にをかいてください。
  • この中で、名前が5個の音でできているものはどれですか。の中に×をかいてください。

基本的には清音・濁音・半濁音・拗音・促音などが問われます。今回は半濁音について聞かれていますが、「ポストのように」と例があるので、難しくはなかったと思います。2問めは「何個の音でできているか」を問いかけています。この際気をつけたいのは、促音(根っこのような小さな「つ」)はこれで一音、拗音(きゃ、きゅ、きょ)はそれで一つであることの理解が必要です。

同頭音・同尾音
左のお部屋を見てください。「いるか」と「いか」は、「い」で始まって「か」で終わるのが同じですね。なので線で結んでいます。
  • 同じように上の絵と下の絵で、最初の音と終わりの音が同じもの同士を線結びしてください。

言葉の最初の音が同じものを同頭音、終わりの音が同じものを同尾音として括っています。そのうえで、最初の音と終わりの音が同じものを探す問題です。

しりとり
  • チューリップのところです。上から順番にしりとりで繋がるためには、☆のところに何が入ればいいでしょうか。右を見るとラッコに☆がかいてあります。☆のところにラッコが入るとしりとりで繋がりますね。
  • チョウチョのところです。上から順番にしりとりで繋がるためには 空いているところに何が入ればいいでしょうか。右から選んで、それぞれのお部屋の印をかいてください。

しりとりでつなぐ時、空欄にどんな言葉が入ればよいかを問う問題です。
前の言葉の最後の音を次の言葉の初めに持ってくる言葉遊びです。しりとりのルールがしっかりと分かっていないと解けない問題です。

言葉づくり
カスタネットが鳴ったら、鳴った数だけ★から右にいきます。とまったところにある絵の名前のはじめの音を使ってできる言葉を、右のお部屋から選んで○をつけてください。カスタネットが2回鳴ると「かさ」のところにとまります。1回鳴ると「バケツ」にとまります。2つの絵の名前のはじめの音を合わせると「カバ」になるので、右のお部屋のカバに○がついています。
  • (カスタネットが5回鳴る→4回鳴る)できる言葉はどれですか。右から選んでをつけてください。
  • (カスタネットが3回鳴る→6回鳴る)できる言葉はどれですか。右から選んでをつけてください。

カスタネットが鳴った数だけ動いて止まった絵の最初の音を組み合わせると、どんな言葉ができるかという問題です。最初の音を組み合わせる問題ですからわかりやすいですが、以前出された問題の中には「上から2番目の音を組み合わせるとどんな言葉ができるか」、「真ん中の音を組み合わせるとどんな言葉ができるか」というものもありました。指定された音が何の音かを探して、それを組み合わせて言葉をつくる問題です。

以上、一音一文字に関するいろいろな問題を紹介しました。以前は小学校入試ではほとんど出されなかった問題ですが、将来の言葉の学習の基礎として、この一音一文字に関する問題は今後もいろいろ工夫されて出題されていくと思います。

お話づくり
裏返しに置いてある青と赤のカードを1枚ずつめくって、出てきた2つの絵を使ってお話をつくってください。 (解答例:「傘」と「女の子が困っている絵」を選んで)    
「雨の日に、花子さんは電車の中に傘を置いてきてしまいました。気づいたときには、電車が発車してしまったので、花子さんは困ってしまいました」など

めくって出てきた2枚の絵を使って、お話を作る問題です。2枚の絵の関係性を考えてお話を作らなくてはなりませんが、自分の経験を踏まえ、場面をイメージしてお話しできるかどうかという問題です。 お話づくりは絵カードを使う場合がほとんどですが、絵の枚数は4枚が基本です。それが最近では、3枚になり、2枚になり・・・場合によっては1枚の絵を見てお話を作る場合もあります。まとまったお話を作るには4枚ぐらいあったほうが作りやすいと思いますが、最近は絵の枚数が少なくなる傾向にあります。

以上、今年出された「言語領域」の問題を紹介しましたが、中心となる「話の内容理解」と「一音一文字」に関する問題が出題の中心になりますので、そこを意識して絵本の読み聞かせや言葉遊びを行ってください。

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