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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

こぐま会サマースクール in シンガポール(2)

第904号 2024年9月6日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 8月30日から9月1日まで、シンガポールにおいて「こぐま会 親子で楽しむサマースクール」を実施しました。毎年定期的に訪問し、セミナーや体験授業を行ってきましたが、今年はシンガポール日本人会を中心会場として、セミナーや学力診断テストのほかに、海外では初めてとなる「こぐまなつまつり」も行ってきました。

セミナーは3回実施しました。8月30日は「幼児期の教育の在り方」と題して、私が実践している幼児教育の内容と方法をお伝えしました。また夕方には、シンガポールの日本人向け幼稚園である「EIS International Pre-school」 の創立20周年記念特別講演会として「幼児期の教育の在り方」と題し、幼稚園の職員を対象にKUNOメソッドの内容と方法についての研修会を行いました。9月1日には、シンガポール日本人会クリニックに勤務する言語聴覚士・公認心理師の鈴木利佳子氏と「海外での子育てと言語の発達」と称した教育セミナーを行いました。シンガポール在住の子どもたちが、英語中心の言語環境の中で、日本語をどう身につけていくかという課題は、子育てをするご家庭にとってとても深刻な問題であり、日本語の獲得にどのような手立てが必要かを言語聴覚士の立場からお話していただき、その中でKUNOメソッドの教育法が果たす役割を、事例を挙げてお話していただきました。
鈴木氏のクリニックには、言葉の発達の遅れを心配した保護者が相談に見え、専門的な立場から言語発達を促す治療を行っているということですが、幼児期における言葉の発達は海外だけの問題ではなく、日本に住む子どもたちにとっても大変重要な課題です。私もメソッドを作り上げる過程で、言語の問題をどう扱うかいろいろな実践をしてきましたが、「幼児期における言語問題」は、いろいろな意味で大事なテーマです。また、日本でも低年齢化が懸念される幼児期の英語教育を何歳から始めるべきかという議論も盛んですが、母語の発達にとって阻害要因にならないためにどうするかも議論が必要です。
私は今回、幼児期における言語教育について「読み・書きよりも前に大事にすべきことは「聞く力」と「話す力」の育成である」ということを強調しました。その中で、聞く力については、
  1. 集団活動を通しての相談・話し合い
  2. 絵本の読み聞かせ
  3. 指示の聞き取り
  4. 話の内容理解
また、話す力については、
  1. 集団活動を通してのコミュニケーション
  2. 一日の出来事を話す
  3. 詩の暗唱・発表
  4. お話づくり
  5. 答えの言語化(思考のプロセスを言語化する)
といったことの重要性をお話しさせていただきました。
そしてもう一つ、子どもたちのタブレットやスマホ依存が言語の発達に与える悪影響について私なりの考えをお伝えしました。7月に日本で実施された「全国学力テスト」の際にとられたアンケートを見ると、家庭で学習する時間に比べ、スマホやタブレットを見る時間が数倍多いという深刻な状況が報告されています。
その日の午後には、日本人会のボールルームにて、「こぐま なつまつり」を行いました。年少から年長までの子どもたちにお母さんお父さんと一緒に楽しみながら学んでいただく教材を年齢別に用意し、ゲーム感覚で楽しみながら、こぐま会で学ぶ内容を体験してもらうというものです。日本でも蔦屋書店を中心にこれまでも「こぐま なつまつり」「こぐま ふゆまつり」「こぐま はるまつり」を行ってきました。学習内容に即してオリジナル教具を使ってゲーム感覚で学ぶというものです。たとえば独自に作ったものは次のようなものです。

2歳~5歳の幼児が学ぶ内容を、ゲーム感覚で学べる素材として作成し、それを親子で楽しむという内容です。最初に出会う教材が楽しいものであれば、子どもたちもきっと主体的に取り組んでくれるはずです。楽しい学びにつながる内容で、子どもたちも楽しんで取り組んでいました。
今回のシンガポールでのサマースクールは、こぐま会のKUNOメソッドを知っていただくために、親子向けにセミナーやテスト、体験会などさまざまなイベントを用意して行ってきました。現地人向けにカリキュラムを提供しているKUNO method Singaporeの代表や、ベトナムのハノイで現地人向けにKUNOメソッドを展開している幼稚園の園長先生、カンボジアで教育活動を始めた知人も参加し、懇親会は大いに盛り上がり、幼児教育をめぐる議論に花が咲きました。シンガポールを東南アジアの起点にKUNOメソッドが広がっていくことを願っています。

【進路相談室室長 齋藤佐知子】
 シンガポールでは2学年のクラスを見学しました。子どもたちは積極的に挙手・発言をしていましたが、反面聞き取ることが難しい様子も見受けられました。言葉を聞き取り、自分で考える時間を確保することの大切さを感じました。
日本人クラスでは、模擬授業・体験会・テストを実施しました。クラスでは、今の時期に大切なことについて、保護者の方とお話ししながら進めました。日本でも言えることですが、すぐに答えを求めず、急かせず、物事に働きかけ自ら考える時間を保障してあげることが、上の学年に進んだ時の差に繋がるということを改めて感じました。シンガポールでは「ライオン母さん」と、教育ママをネーミングされているそうです。我が子を想う母の気持ちはどの国も同じです。将来のために、いま何を大切にすべきかを考えてもらえるよう、どの国においても伝えていきたいと、今まで以上に感じたサマースクールでした。

【恵比寿本校教務部長 島津香里奈】
 シンガポールでは、主に年長児の授業やテストに関わらせていただきました。学習塾KOMABA様 の授業では、塾生の子どもたちを相手に、代表の久野がばらクラスの授業を行いました。はじめて見る先生に、最初は緊張を感じている様子の子もいましたが、久野の巧みなコントロールと子どもたち自身が関わり考えるカリキュラムの構成により、授業が進むにつれ「わかった!」「はい!はい!」と普段の調子に近づいて、前のめりに参加してくれた子が多かったように感じます。カリキュラムより少し難易度が高い問題にも挑戦してもらいましたが、よく見て真剣に考えている子も多く、年長児としての試行錯誤の力が見られました。また、できたり誉められたりした時の子どもたちの誇らしく嬉しそうな顔に、達成感や自信が見られ、微笑ましく感じました。
その翌日に行ったテストでは、ペーパーと個別テストで課題理解を確認しましたが、指示の聞き取りには差があったと感じます。それは設問に出てくるちょっとした言葉の意味だけでなく、一度で正しく聞き取れるかという点においてもです。この年齢の子どもは等しくそうですが、言葉として普段使いなれていないとなかなかすぐには反応しにくいものです。言葉に慣れるには時間を要します。授業で行う以外にも、普段の生活の中でそのような言葉を取り入れたり、多様な言語刺激を与えることの意識だけでも変わってくると思います。一度で聞き取ったり、複数の指示を聞くことに対しても、普段からの経験が大きく影響します。生活指示、例えば片付けやお手伝いのような場面においても、細かく何度も言うよりは流れに沿って一度で聞けると指示を聞く意識としては良いと思います。
午後の「こぐま なつまつり」にもたくさんのご家族にいらしていただきました。教材が何種類も用意されていて、取り組む順番もかける時間も自由でしたが、長い時間集中し、すべてやり終えて帰っていくお子さんが多かったです。学習として触れたことがある内容が基本ですが、題材の工夫でゲームとしてやったり、相手と楽しめる内容が多かったことで、遊びとしてより自然に楽しめていたのではないかと思います。新しい刺激に対して引き込まれていく姿は、子ども本来の知的好奇心の現れだと嬉しく思うと同時に、興味関心を持って入り込んでいく子どもたちの集中力にも感心させられました。やり方や働きかけ方による伸びしろの大きさと、子どもたちの知的な欲の深さを改めて実感できた、私にとっても大変興味深く有意義な体験となりました。

読み・書き・計算はまだ早い!

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

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