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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

受験で傷つく子どもたち

第892号 2024年5月3日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の受験に向けた学習対策はすでに基礎を終え、応用段階の学習に進んでいると思います。内容も難しくなり、得意不得意が出やすい時期でもあります。また多くの場合、学習対策はペーパー対策と考え、その枚数も増えて難易度も高まってくるはずです。「毎日何枚ぐらいペーパートレーニングをすればいいでしょうか?」とよく質問されますが、私は「ペーパーの枚数ではなく、本当に理解して答えを導き出しているか、答えの根拠をしっかり聞いてください。それができていれば5枚でも十分です」とお答えしています。毎日50枚やらなければ合格できないと塾の先生から言われ、それを信じて毎日相当数のペーパーをこなすことに必死になっている皆さま。ちょっと立ち止まって考えてみてください。枚数をこなす訓練によって、同じ問題の解き方が身につくことは事実でしょう。しかし、枚数をこなしてできたつもりになっていても、答えの根拠を説明できなかったら本当にわかったことにはなりません。こうしたうわべだけの学力では、工夫された難問には対応できませんし、教え込まれた解き方はすぐに忘れてしまいます。はじめての学びがペーパーで・・・という学習はすぐにやめるべきです。物事の理解には時間がかかります。体を使い、手を使い、頭を使って問題を解いていくという「3段階学習法」が必要です。ペーパー学習はアウトプットです。力をつけるインプットの学びには、体を使い、手を使って行う事物学習が必要です。

先日近くのスーパーで買い物をしていた時にこんな光景を見かけました。大好きなお菓子を子どもが手に取り、これを買ってほしいとお母さんに訴えていました。このような場面でどう対処するかは、しつけの問題として各ご家庭で悩むところですが、そのお母さんは、お菓子を買ってあげるかわりに「帰ったらペーパー10枚ね」と約束させていました。学びの動機づけとして物を与えることがよいかどうかを聞かれたら私は反対しますが、皆さんはいかが思われますか。
以前、卒業生のお母さんから、「よくスーパーやデパートの食品売り場に連れていき、そこを勉強の場にしていました」という体験談を伺い、これは生活学習としてとてもよい手段だと思っていました。スーパーにはたくさんの野菜や果物、それに子どもが知らない珍しい食べ物が並んでいます。「帰ったらペーパーね・・・」ではなく、皆さまもぜひ目の前にあるものについての理解を深めることに注力してみてください。生活や遊びの中で多くのことを学んでいく子どもたちですから、目の前の野菜や果物を見て、少しでもお話ができれば最高の学びになると思います。幼児期の学びは机とペーパーで成り立つわけではありません。どんな生活場面にも学びのチャンスがたくさんあります。それに気づくか気づかないか、親の教育観が問われています。

最近多くの私立小学校で問題行動を起こす子どもが増えていると聞き、学校側も苦慮しているようです。小1プロブレムだけでなく、いじめや暴力行為も問題視されているようです。受験勉強で競争させられていつもトップを取ることを要求され、本人も自分が一番と考えている、そうした学力の高い子が問題行動を起こしているケースが多いようです。親の前で競争させ、それが学習の動機づけになっていると考える指導者がいたら、幼児教育の教師としては失格です。
今、加熱した受験競争の中で心が傷ついていく子どもたちがあまりにも多いことを、幼児教育に携わる一人として看過することはできません。商業主義の受験対策は必ずどこかで破綻しますが、今学校の現場で起こっている小さな出来事をそのままにしておいては、取り返しのつかないことになってしまいます。


読み・書き・計算はまだ早い!

 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ

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